05.雪
終末の世界。
各国がそれぞれ敵国に打った核による死の灰で世界は覆われている。
そして、今もその上に灰は積もり続ける。
誰も外には出られない。
しかし、幸い、電気を筆頭とした文明の利器、インフラはその機能を失っていない。
誰もが外に出られなくとも、コミュニケーションを取る手段は存在している。
私は文字を打ち始める。私の思いを世界に伝えるのだ。
外は真っ白。
雪世界。
何も見えない、何もいない。
私はただ進む。前へ進む。
自身の足跡しか見当たらない。それも、降り積もる雪で消える。
それでも私は進む。
誰もいない。何も見当たらない。
でも、私は進む。
諦められない。
寂しい、会いたい。
遭いたい。
誰でもいい、なんだっていい。
私は歩く。
歩みは止めない、決して止めない。
ふと、私は立ち止まる。
なにかある。進む。
あれは一体……
近づく、しかしまだ遠い。
人や動物ではない。動いていない。
あれは一体……
目の前まで来た。
これは、ユキノハナ。
真っ白な花。
ありえないもの、この世界ではあらゆる生き物は生存できない。
例外は存在しないはず。
その花を見つめる。
鳥の羽ばたきが聞こえてくる。
しかし、何も見当たらない。
その花以外は。
人々の歌声が聞こえてくる。
しかし、誰も見当たらない。
自分以外。
しかし、少しばかりの希望が抱けた。
途切れていた、望みのレールが繋がった気がした。
できあがった。それを送信する。
誰かが見てくれますように、返事をくれますように。
立ち上がる。
自身の体に付いた雪を振り払う。
彼女の右手の甲、刻印。
008-NCRHR
NuClear Resist Human Robot(核耐性人間型ロボット)
彼女は目覚めてからずっと、気持ちを綴って発信している。
閲覧カウントゼロ。
今日も誰からも返事は来ない。




