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奉光  作者: 鯣 肴


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01.死の灰

 語る語る。吟遊詩人は語る。

それははるか昔の物語。それは悲しき物語。



死の灰。この地の王国の最後の王の名前。

無数の異神(いしん)に選ばれし者、最後の王権者。


粋狂(すいきょう)。容易く禁忌(きんき)に手を伸ばす。

砡心(ぎょくしん)。濁った瞳で、

虚無(きょむ)。見つめる先は虚空。

破滅(はめつ)。導かれるは、―――


よって、死の灰。

無差別に見初め、(もてあそ)び、無感傷。最後には滅びを(もたら)す。

通り過ぎた後には何も残らない。

生きとして生きる者全てに等しく降り注ぐ、灰。

(ほこり)(ちり)(ちり)は灰。

灰色の、灰。





 詩人は、聞き入る人々に語りかける。

深く深く、彼らの心の深遠へと。

瞳の奥底へと。

彼の者の言葉は(にじ)み、()み込む。



王を祝福せし最後の異神。

破滅を齎す者よ。汝は何を信じる。

この酔狂と、玩具こそ我の王国。我こそ王。

滅びは全てに平等に降り注ぐ。





 聴衆は、誰一人言葉を発しない。

彼らの瞳に映るのは、目の前の詩人の姿。

彼の者の姿。



王を祝福せし最初の異神。

ただ君を導いてきた。

そんな私としては君に銀の輝きが降り注げばいいけれど。

死の灰。その意味は?

君は何?その生の意味は?

生きているうちにその答えにたどり着けるかな。

君は最後に笑えるかな?





 詩人は(わら)う。

狂気がその場に(あふ)れ出す。



唯答える。

行く()てがないのなら尋ねよう。

ここが天界であろうとも我が薔薇(ばら)の指輪を示し、尋ねよう。

行く先は定まった。



終わり。

再起の終わり。


私の最後


いくら夢見ようが、この枯れた地へと戻されるのみ。

死の灰はなにか?我だけが救いを手に入れることを望む。

死の灰はなにか?終わりまでに心の救いがあることを渇望する虚ろなもの。


孤独


理解した、(わか)ってしまった。

最後が来た。

笑うのは―――





 聴衆はその話に聞き入っていた。その狂気に呑まれ、誘われる。

かの地へ、かつての王国へ向かわなくては。

その瞳は狂気で満たされていた。



 人々は一人残らず立ち去った。

吟遊詩人は、歩き出す。

外套(マント)頭巾(フード)が外れる。

髪のない、濁った白色の肌。

砡心の瞳。



 詩人を見たものは誰もいない。

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