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Gateau de fantasie~ガトー・ド・ファンタジー~【港町ポルトと甘い約束の物語】  作者: kou pâtissier


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第Ⅰ話 後編【祝願祭とサンドイッチ】其の一

第一話後編其の一です。

※この回は空腹時に読むと危険です。


 ♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 俺はミーナに背を押されながら、広場を抜け目的のケーキ屋へと向かっている。店が開くまでは、まだかかりそうな時間だ。


 教会のある広場を抜けようとすると匂いが変わり、焼き立てのパンと獣肉の香りが混ざり合っている。

 

「……今年もすごいな」

『やけにパンの匂いが強いな。市場よりも屋台の方が今年は多そうだ』

 

 南北に伸びる大通り、その東側。通称:東通りは【農産市】だ。収穫したての新鮮な野菜や果物、小麦などの穀物。またそれらの加工品のジャムやパンなど、いろんな屋台が並んでいる。

 

「おっと――なにやって……」

 押されていた背を離され変な声が出た。慌てて振り向いたがミーナがいない。

 

『まただよ!』俺は何回上を見なくちゃいけないんだ。


 いつものことだが、なんで振り向いた時にはいないんだよ。キョロキョロとあたりを見回していると近くの屋台に並んでいるミーナを見つけた。


「何やってるんだよ?」

「あー見つかっちゃったかー、ごめんねっ♪」

 

『絶対に悪いとか思ってないだろ!』


「おじさん!おススメの〝アレ〟二つくーださい」

「オッ、ミーナちゃん!早速来てくれたのかい!――〝アレ〟だな?」

 

「そうそう〝アレ〟だよ♪」

 

 二人して悪い顔してるな……でも〝アレ〟ってなんだ?おじさんとも知り合いみたいだし。疑問が浮かんだが、隣で静かに待った。


しばらくして「お待ちどーさん、銅貨二枚だよ」

「ありがとー!じゃあこれね」

 

「まだ初日だから今からだよ!どんどんオススメしとくから頑張ってね!」

 

「おう、こんないい場所手配してもらったんだ、料理人冥利に尽きるってもんさ!やってやるぜー!」

 ……色々と熱い店だ。初めての出店なのかな?


 

「なーさっきの〝アレ〟ってなんだよ?」

「フフフッ、今年のおすすめだよ。食べるの楽しみにしててね♪」

 

「あと足りないのは――あっちとあそこで買えば完璧かなー」

「すいませーーん」


 「おいっ……」

 また屋台に向かって、ミーナは走って行った。

 

 やっぱり置いて行かれるのが多いな今日は――そんな思いを胸にミーナの後に続いた。


  ♦︎♢♦︎♢♦︎♢


「さーこれで完成!あそこで食べよ♪」

 ミーナの後について回った屋台は四つ。【農産市】の真ん中ぐらいまでやってきていた。

 街路樹の陰にある長椅子へと手を引かれ二人で腰掛ける。


「なーいい加減教えろよ。〝アレ〟ってなんだよ?」

 懐中時計を開くともう三十分以上歩かされていた。

 隣に座るミーナは屋台で買ったものを開いて何かしている。

 

「これをこーしてこっちをのせて……完成!」

「はい!エル君の分だよ♪」


 渡されたのはサンドイッチだった。だが俺が知っているサンドイッチと何か違う。

 細長いパンに挟まれていたのは四つ、見るからに新鮮なレタス。スライスされたトマトと玉ねぎ。そして大量の肉、肉、肉。

 

「いただきまーす」

「ん--♪やっぱり!これだよこれ、正解だったよ♪」

 かぶりついたミーナはご満悦な様子だ。だが、こんな大きなサンドイッチにかぶいついてよく顎が外れないもんだ。

 

 ボリュームのあるサンドイッチ。俺は控え気味に食らいついた。


 口にほうばった瞬間、感じたこともないほどの煙の香りが広がった。

『なんだこれ!』

 咽そうになりながら食べ進める。

 

 噛むと、シャキシャキとしたレタスの触感が楽しい。時季外れのトマトは硬くて酸味が強いがそれがまたちょうどいい。

 

 そして煙食べているのかとも思ったのは大量に挟まれた肉だ。

 

 肉から発せられる煙の向こう、中心にいけばいくほどしっとりと柔らかい肉。咀嚼を楽しめば、ゆっくりと溶け出してきたのは肉の甘い脂だ。

 辛みの効いた玉ねぎが鼻を抜け、目の奥に刺激が走る。ほのかに香るニンニク、じっくりと炊かれた甘い玉ねぎのソースが全体をまとめ上げている。

 アツアツのパンは外がカリッ、中はもっちりフワッとしたその対比が具材をまとめている。


「うっま!なんだこのサンドイッチ!」

 

「でしょ♪」

「〝アレ〟の正体はね、スライスされたローストビーフなんだけど――」

 

「いや、普通じゃないだろこのローストビーフ……」

『ローストビーフはよく食べるが、これは同じなんて物じゃないぞ?』


 「だって煙っぽいっていうか、煙そのものっていうか」

 食べたこともない味の表現ができない。モヤっとしたまま続ける。

「違いすぎるっていうか……」


「そう!それなのだよエル少年!」

『誰が少年だ。俺より一つ下だろミーナ』


「今までのローストビーフは赤身の部分を使っていたのがほとんどだったのね」

「でもね、お肉にはいろいろな部位があるでしょ?赤身だけじゃなくて、脂のある部分もを使ってるの」

 

 部位まではわからないが、食に関しては勝てそうにないな。

 部位の違い?そうは思ったが納得できなかった。

「あの煙はなんだよ?焼いた匂いじゃないだろ?」


「あれはねスモーク、燻製だよ♪」

「ふつうは日持ちさせるたまに使う技術で、この街でも珍しくないでしょ?」

「これはね、本当は秘密なんだけど、エル君には教えても問題ないから」


 小声になったミーナが顔を近づけた。

「煙を冷やしながら燻製するんだって、すると熱が入らないからお肉が硬くならずに香りだけつけれるんだって」


「わかったかね、エル少年」耳打ちしていたそばから離れミーナは自慢げな顔だった。

「誰がエル少年だ。でもよくわかったよ、知らない味っていっぱいあるんだな」


「そうだよ!だから食べることはやめられないんだな~♪」

「世界中のいろんな料理やお菓子をいっぱい食べたいね♪」

 

 嬉しそうなミーナにほのぼのする。

 

「そうと決まればオススメに行くよ」

「いや、今食べたばっかりだけど……」

「何言ってるの?まだまだ食べなきゃ!お祭りは始まったばかりなんだから♪」

「ほらエル君立って立って!」

 

 まだ食べるつもりかよ。手を引かれ立ち上がった。


「ケーキ屋さんが開くまで時間があるからね。それまでは食べて食べて食べまくろー」

「せーの、おーー!――ってエル君も!」


「おーー!」

「おっ、おーー……」


 なんの気合を入れさせられたんだ?ミーナといると本当に飽きないな。

 ミーナに手を引かれ次の屋台へと連れ出された。


 

「エル君!次の屋台はね――――」

 ミーナに手を引かれ、次の屋台へと引きずられていく。

 『退屈する暇がないな』

 


 

 

読んでいただきありがとうございます。

ミーナの食への執着(愛?)はこれからも加速していきます。

エルがどこまで振り回されるのかも含めて、楽しんでいただければ嬉しいです。

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