○無表情の裏
「それにしても、エースってなんでそんなに無表情なの?」
ピクリとも笑わないし動じない。何年間も修行でも積んできたのかと思うくらいのその精神力が気になる。
「僕はあんまり感情を高ぶらせると周りに迷惑がかかるから」
「……いつも抑えている分、怒らせると怖いタイプ?」
激昂すると周りが見えなくなって、破壊神にでもなるのかと怖くなる。今までさんざんな事を心の中で思っていたが、全部口にしたら返り討ちにされるのかと思うと鳥肌が止まらない。
「そういうわけではないけれど……。なんて言えばいいのか分からないし」
本当に困っている様だったのでそれ以上何も聞こうとは思わなかった。ただ、せっかく整った顔をしているのだからちょっと笑えばモテそうなのに。
無表情の彼がそれはそれで魅力的に感じる人も少なくはないと思うけれど、あんまりに無表情なのもどうかと思う。それに、感情をあまり表に出さないとなると、コミュニケーションが取りにくい。どうやって生きて来たのか。
「17歳、だっけ? 私も同じ年だけど、やっぱり表情無いとコミュニケーションし辛いというか……。17年も大変じゃない?」
「僕がこうなったのは5年くらい前からだから。それほどでもないかな」
それなら大丈夫か。……と思ったが、5年も無表情なのもどうかと思うのだけど。エースはいったい何者なのか分からない。
「エースこそ、どうしてあの街にいたの?」
「僕は……あの街にいる必要があるから」
「それって、どういう事?」
エースは表情が無いだけでなく、言葉の情報量が少ない。私に話しても意味などないと考えているのか、人には言えない何かがあるのか。言葉の裏に何か、その表情の裏に何かとんでもないものを隠し持っているような気がするのは私だけなのだろうか。




