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剣士とビッチと美少女七人(エトセトラ)  作者: 恵/.
3の章 ~星乙女と虚無の鉱山都市~
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またこいつかよ

「正直なところ、私はカルバ様のほうを警戒するべきだとは思いますが」

 貶されて不機嫌になるエーテルに、ハイドラはそんなことを言った。

「あ、ハイドラも気づいてたのね」

「はい。確証はありませんが……今日のこともありますから、余計に」

 二人が言っているのは、カルバの態度だった。……彼女は出会った当初、グラの腕を抱き抱えるなど、彼との距離感が近かった。それに、彼女はグラに助けられ、しかも暗い密室空間で二人っきりだったのだ。恋愛関係に発展してもおかしくないだろう。というか実際、カルバのほうはグラのことを意識しているし。

「そうよね……でも、その場合、問題になるのはハイドラよ」

「私ですか?」

 浮上した問題に対して、エーテルはそんなこと言った。

「そもそもね、カルバがどうのって話以前に、ハイドラの態度は問題がありすぎなのよ。そうやって、グラたんの気持ちを尊重しすぎて、ハイドラ自身の気持ちが蔑ろじゃない」

「そ、それは……」

「そうやって待ってばかりだと、男はすぐにどっか行っちゃうのよ。もっと自分をアピールしないと」

 ハイドラの消極的な態度を、エーテルはそう指摘する。確かに、ハイドラはエーテルのように自分からグラに迫ることがない。清楚と言えば聞こえはいいが、恋愛において消極的なのは敗北宣言に等しい。エーテルほどではないにしろ、適度な積極さがないと、競争に負けてしまうのだ。

「で、ではどうすれば……?」

「そうねぇ……やっぱ、積極的にいかないと。私よりいいもん持ってるんだから」

「ひゃっ……! エ、エーテル様、何を……!?」

「う~ん、この大きさといい感触といい、ほんとに羨ましすぎるわね。何食べたらこんなに育つのかしら?」

 エーテルはふらりとハイドラに近づいて、徐に手を伸ばすと、彼女の胸を揉み始めた。……ハイドラはエーテルより年下なのに彼女より発育がいいため、暫しこういう風に遊ばれてしまうのだ。

「エ、エーテル様、さては酔ってらっしゃいますね……!」

「あらぁ~? もしかして感じてるぅ~? ええんかぁ~? ここがええんかぁ~?」

「実は素面ですわね……!」

 エーテルはハイドラの後ろに回り込み、彼女の胸を丹念に揉みしだく。それは最早、愛撫と呼べるものであった。

「ただいま……って、ど、どういう状況?」

「あ、スルホンじゃない。丁度良かったわぁ~♪」

「ひっ……!」

 そうして、戻って来たスルホンも巻き込まれて、部屋の中に黄色い悲鳴が響き渡るのだった。



 ……その頃、別の場所では。


「くっ……乙女の確保に失敗したか」

 部下からの報告を受け、男は唇を噛んだ。……ここは東アシッドを統括するナフタリ伯爵家、その屋敷だ。執務室で苦虫を噛み潰したような表情になるのは、現当主のアントラセン・ナフタリ・アシッド伯爵。部下を下がらせてから、ぶつぶつと呟き始める。

「このままでは儀式の進行に支障が……となれば、多少の危険を承知で拉致を検討するべきだろうか?」

「いや、その必要はない」

 その呟きを、新たな男が遮った。音もなく部屋に入り、彼の前に立つのは、短髪でスーツを着用した眼鏡の男。彼の名前は―――

「キレート様……! で、ですが……!」

「案ずる必要はない。そもそも乙女の確保は必須ではないのだから。今回も、別に乙女の確保は期待していない」

 キレートは、ナフタリ伯爵にそう言った。……彼はここでも、よからぬことを企んでいるのだろうか。

「乙女に必要なのは、花嫁との接触だ。それが確認できれば問題ない。それよりも、確保すべきなのは巫女のほうだ」

「で、ですが、巫女はアシッドを離れているはずでは……?」

「それが最近、花嫁を連れて戻って来たみたいだ。しかも、彼女たちは接触した形跡がある。……星乙女に関しては、放置していいだろう。それか、前々から準備していたほうを動かすかだな。そちらを確保すれば、巫女の生活圏を押さえられる」

 ナフタリ伯爵に指示を出し、キレートは部屋を出ていく。そして、残されたナフタリ伯爵は、ゆっくりと立ち上がった。

「……彼の言う通りであれば、儀式の準備は順調。これで、ナフタリ家の悲願達成に一歩近づける」

 例え、ナフタリ家が途絶えようとも。彼の妄執は、それほどまでに肥大化していたのだった。……そうして、それぞれの夜は更けていく。



  ◇



 ……翌朝。


「うっ……頭が痛い」

 夜が明けて。グラはベッドから這い上がった。しかし、二日酔いのためか、体調が優れない様子。

「……さて、どうしたもんか」

 頭痛と倦怠感を堪えながら立ち上がり、グラは思案した。

「そういえば、カルバはどうなったんだ?」

 そして、最初に思い立ったのはカルバのことだった。……昨日、救出された後は鉱員たちに連れ回されていたため、カルバとは顔を合わせていない。エーテルからは特に何も聞かなかったし、少々気になった。

「ついでに、二日酔いの薬でもないか聞くか」

 そうして、グラはカルバの元へと向かった。



「……邪魔するぞ」

「あ、まだ開店前なんだけど―――え?」

 営業前の食堂に入ると、カルバが開店前の準備をしていた。彼女は振り返ると、グラを見て固まった。

「元気そうだな」

「グ、グラ君……!?」

「そんなに驚くことはないだろ」

「う、うん、そうだよね、ごめん……」

 グラに話しかけられて、カルバは狼狽した。……グラは知る由もないが、彼女は昨夜の情事(と呼べるか微妙なところだが)を目撃している。気まずいのも無理ない。

「? まあ、元気ならそれでいいんだが」

 カルバは明らかに不審だったが、別に体調が悪いわけでもないようなので、グラは気に留めず適当な席に座った。

「それより、二日酔いなんだが、何かないか?」

「ふ、二日酔い……? あ、そっか、昨日はお酒飲んでたんだよねー」

 昨日―――エーテルとのことは思い出さないようにしながら、カルバはグラの言葉に応えた。

「だったら―――待ってて、今用意するからー」

 カルバは厨房に入ると、何か作り始めた。……二日酔いに効く料理でも作っているのだろうか。

「お待たせー」

 やがて、カルバは料理を持って戻って来る。

「特製の薬膳スープだよー。二日酔いに効果的だよー」

「いい匂いだな」

 運ばれてきたのは、温かいスープ。カルバが作ってくれたスープに、グラは早速手を付けた。

「……うん、うまい」

「でしょー? 調子に乗って飲み過ぎた鉱員さんたちに好評なのー」

 料理を褒められて、カルバはこの上ないくらいに幸せな気持ちになった。……故に、余計に胸が締め付けられるような気持ちになるのだが、それには目を瞑ることにした。

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