名前はルイス
あの日から1年経った。
どうやら俺は、ルイス・グレースとして転生したらしい。前世では兄弟や姉妹はいなかったが今世では2人の姉がいる。名前はエルザとフィオナといい、エルザが上でフィオナがその妹だ。彼女らは双子でありとても良く容姿が似ているが性格はエルザが活発的でフィオナは大人しめである。
「ルイス!魔法教えてあげるから一緒にやろ!!」
そうである。この世界には魔法というものがあるらしい。以前、エルザとフィオナが魔法の練習をしていた時にたまたま覗いていたら教えてくれるようになった。どうやら、うちの爵位は公爵であり全属性の魔法が扱える王国唯一の家系らしい。その甲斐あって屋敷にある図書館は魔法書が沢山あるらしい。俺はまだ字が読めないのであるということだけ教えてもらった。
「ルイス?」
ぼーっと考えていたらエルザがこちらに顔を覗き込んできた。我が姉でありながらよく顔が整っていると思う。ちなみに姉たちと俺では5つ歳が違いあの日屋敷総出で喜んでいたのはやっと跡継ぎとなれる男の俺が生まれたからだそうだ。
「まほう、やる!」
そう口にした時、エルザの後ろにいたフィオナが、両手に頬あて顔を綻ばせた。
「エルザ、見て!…ルイスが一歳なのに「魔法」ってそう言ったわよね!何て賢いの、天才よ!うちのルイスは!」
「フィオナ落ち着いて今日はルイスに魔法教えるって言ったでしょ。まずは、「魔力操作」からね」
ー普段ハイテンションなエルザがやけにおとなしい。
普通ならまだこの時期の一歳なんて魔力操作は愚か、言葉すら理解できてるか怪しいとこだが何故かルイスは天才であるとして周りから何も転生者であることを疑われていなかった。
「まずね心の中に熱いものをぎゅって入れてボーンってするの!」
―いや、さっぱりわからん。何を言ってるんだうちの姉は。
エルザはお姉ちゃんぶって弟にすこしでもいいとこをみせたかったらしいが、あいにく教えるのが下手であった。
「はぁ、エルザそれだとルイスに伝わってるわけないでしょ。いい?ルイス、目を閉じて体にながれているものを意識できる?」
「うん!なんか暖かい」
「それが『魔力』だよ。そしたらその魔力を体の一部に集められる?」
「うん、できた!」
もう一回言うが普通の一歳はまだ魔力操作どころか自由に喋れないのである。それをいくら公爵家とはいえ成し遂げてしまうのは前代未聞である。この世界では、魔力操作は通常5歳からであり、貴族であっても早くて3歳になってようやくできるようになるのである。そのことを当の本人たちは知らないのであった。
エルザもフィオナも、1歳児が平然と魔力操作を成功させたことに対して、驚くどころか「うちの弟なんだから当然」とばかりにニコニコしている。
前世の記憶はあるものの、この世界の一般的な常識を全く知らない俺は、姉たちの平然とした態度を見て「これがこの家の基準か」と完全に納得していた。
一年の時を経てルイス自身の人間不信は、家族に対して無くなっていた。
―今世こそは何も失いたくない。誰かと一緒に笑っていたい。
この感情は普通の一歳にとっておおよそ持ち合わせてわいないだろう。
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