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契約結婚と仮面舞踏会  作者: 槙月まき
本当の結婚へ

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88/91

バラの香りとともにエリアスのもとへ②

 ──その夜。


 アデラは、自室に戻って一通の手紙をしたためた。インク瓶の蓋を開け、真っ白な便箋に丁寧に文字を綴る。


 宛名はなかった。けれど、その文面は確かに、王の心に届くことを願って書かれていた。


 


『王よ、あなたが「力」を望むのなら、その代償もまた、知るべきです。


 かつてあなたの血を引いた者たちは、誓いによってこの国を守ろうとしました。


 私は今、彼らの意志に触れました。


 この国を導くとはどういうことか──願わくば、あなたが思い出す日が来ることを、私は祈っています』



 

 封をし、アデラはそれを机の上にそっと置いた。


 そのとき、ノックの音がした。


「……入っていいか、アデラ。」


 聞き慣れた、けれどどこか震えるような声。


 彼女は驚きながらも、扉を開けた。


 そこにいたのは、フォルモーネ公爵──彼女の父だった。


 以前より老け込んだその顔は、けれどどこか柔らかく、優しさを湛えていた。


「……帰ってきたのだな。無事で、本当によかった。」


 アデラは数秒、言葉を失い、やがてそっと抱きついた。


 この日が来ることを、どこかで信じていた。


「お父様……心配をかけて、ごめんなさい。」


「お前が無事であれば、それでいい。……いや、強く、美しくなったな。」


 その言葉に、アデラの頬が紅に染まる。


「でも、私はまだ……守るべきものがたくさんあるの。」


 公爵は頷いた。


「だからこそ、お前が『戻ってきた』意味があるのだ。」


 二人はしばらく黙っていた。けれどその沈黙は、かつてあった確執ではなく、ようやく通じ合えた父と娘の静けさだった。


 



 

 その夜の窓からは、満天の星と、咲き誇るバラの香りが優しく流れ込んでいた──。

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