誓いの言葉②
身支度を終えたアデラは、いつものように朝の剣術訓練へ向かった。向かう先は、フォルモーネ公爵家の庭に設けられた訓練場。だが、その歩みはこれまでと違っていた。シャツにズボンと動きやすい格好しながらも、女性としての優美さを纏っていた。
訓練場では、数人の若い騎士たちがすでに待機していた。彼らは、アンドレとしての彼女に忠誠を誓ってきたフォルモーネ家直属の騎士たちだ。
その姿を見た瞬間、空気が少し張り詰めた。誰もが戸惑っていた。自分たちの主人が、実は女性だったという事実を改めて完全に受け入れるには、時間が必要だったのだ。
だがその中で、一人の若者が一歩を踏み出した。浅黒い肌に鋭い目を持つ青年──ゴンだった。アデラが自ら剣術を教えてきた、一番年若く、だが誰よりも忠義に厚い騎士の一人だ。
「アン……いえ、アデラ様。」
彼は声を震わせながら、まっすぐに彼女を見た。
「俺たち、正直、まだ戸惑ってます。信じていた姿と違っていたって、思わないわけじゃない。でも……でも、ひとつだけ、はっきりしていることがあります。」
「何かしら?」
アデラが優しく尋ねると、ゴンは大きく息を吸い込んだ。
「あなたが俺たちの主人であり、仲間であり、誇りであるということは、何一つ変わらないってことです!」
彼の叫びに、周囲の騎士たちも次々と頷いた。頬を紅潮させ、涙をこらえながら。
「俺たちはアデラ様に、これからもついていきます!どんな姿でも!」
アデラはゆっくりと微笑み、剣の柄に手を置いた。
「ありがとう、ゴン。みんな……。ならば、私の腕が鈍っていないか、確かめてくれないかしら。公爵家直伝の訓練、受ける覚悟はある?」
その瞬間、騎士たちの表情が引き締まった。
「「うおおおおおおっ!!地獄の訓練だあああっ!!」」
騎士団の訓練場には、数時間にわたるアデラの「スパルタ指導」が響き渡った。
容赦なく振るわれる木剣、何度も叫ばれる「もう一回!」の声。だがその中にあったのは、確かな信頼と愛情だった。
やがて日が高くなり、アデラは満足げに木剣を収めた。
「これなら、どんな敵が来ても怖くないわね。」
「は……はい……!」




