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契約結婚と仮面舞踏会  作者: 槙月まき
真実の石

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告白と赦し

第22話:告白と赦し

第22話:告白と赦し


  馬車の揺れが、やけに心地よく感じた。


 王宮をあとにしてから、アデラは窓の外に広がる景色をぼんやりと眺めていた。街の喧騒はすでに遠く、石畳を進む馬車の音と、わずかにきしむ木の音だけが耳に残る。


 彼女の隣にはエリアスが座っていた。彼もまた黙っていたが、その沈黙は重苦しいものではなかった。沈黙の中にも、確かに寄り添う温もりがあった。


 ようやく──家に帰れる。


 そう思った瞬間、胸の奥がじんわりと熱くなった。


 ずっと張り詰めていたものが緩み、気がつけば、彼女の目尻には熱い雫が浮かんでいた。何年ぶりだろうか。涙を流すなんて。


「……泣いているのですか?」


 エリアスの声が、そっと響いた。優しく、どこまでも静かに。


 アデラは慌てて目元を拭い、首を横に振る。


「……違うわ。これは……。」


「安堵の涙ですね。」


 彼の言葉に、アデラは思わず顔を向けた。


 エリアスは窓の外を見たまま、微笑んでいた。その横顔にはどこか懐かしいものがあった。彼もまた、彼女の偽りの姿を知りながら、ずっと傍にいてくれた数少ない理解者だった。


「長かったですね、アデラ。ようやく、本当のあなたが帰ってきたように感じます。」


 アデラは返す言葉を見つけられず、ただ静かに頷いた。


 馬車はフォルモーネ家の屋敷に近づいていた。屋敷の門の前には、予想を上回る数の人々が集まっていた。騎士団の面々、古参の使用人たち、そして──


「……サン?」


 見間違いではなかった。かつての乳母であり、アデラの少女時代を知る存在。彼女は涙をこらえながら、アデラに駆け寄ってきた。


「お嬢様!本当に……ご無事で……!」


 アデラは思わず、彼女を抱きしめた。懐かしい香り、懐かしい温もり。かつて捨てたはずの記憶が、波のように押し寄せてきた。


「ただいま、サン。」


「……おかえりなさいませ。」


 まるで時間が巻き戻ったかのようだった。


 騎士団の者たちもまた、迷いながらも彼女を囲むように集まり始めた。


「女だったなんて、驚いたけど……。」


「でも団長は団長だ。アンドレじゃなくても、あんたは俺たちの誇りだ!」


 彼らの言葉に、アデラの胸が熱くなった。剣の道を歩むため、捨てざるを得なかったすべてが、今、少しずつ戻ってきている。

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