判決と企み②
「静まれ。」
その低く、それでいて威厳に満ちた声に、人々は我に返ったように口を閉ざす。
王は、じっとアデラを見下ろしたまま問う。
「なぜ、真実を隠していた?」
アデラは顔を上げ、まっすぐに王の瞳を見つめ返した。そこに虚飾はなかった。
「女である私には、公爵家の当主となる資格も、騎士団長として国を守る権限も与えられませんでした。しかし、私は幼いころから、父のように騎士団長として民を守りたいと願ってきました。──そのためには、男として立つ以外に道はなかったのです。」
アデラの声は揺るがなかった。ただ、抑えきれない悔しさと、積み重ねてきた日々の重みが滲んでいた。
「それは、法を欺く行為ではないか?」
王の声が重く響いた。
アデラは、ゆっくりと頷いた。
「はい。ゆえに本日、すべてを明かしました。」
そう告げると、アデラは静かに立ち上がり、王の玉座へと進み出た。
「ただ一つ、お願いがございます。フォルモーネ公爵家の騎士たち、そして父──アントン・フォルモーネのスヴェーリエ王国への忠義と功績は紛れもない事実です。彼らが王国を守るために尽くした功を、どうか正当に評価していただきたい。」
その瞬間、大聖堂にいた兵士たちが一斉に反応した。
「アデラ様……!」
「俺たちは、あんたに命を預けた! それが偽りだったなんて思わない!」
騎士たちは剣を抜き、その刃を床に突き立てた。
それは、変わらぬ忠誠の証。沈黙の中に込められた、揺るぎなき信頼だった。
しばらくの沈黙のあと、王はようやく口を開く。
「欺かれたことに対する怒りは、確かにある。だが、それ以上に、貴殿が成した功績を我は見てきた。」
そして、玉座にもたれかかるようにして言葉を続ける。
「この件については、我一人の判断では下せぬ。王族会に持ち込み、処分を決する。それで良いな、アンドレ──いや、アデラ。」
アデラは、静かに頭を下げた。
「承知いたしました。」




