秘密の対話②
「結婚なんて、ただの義務に過ぎない。ならば、どうせするなら……。」
その考えが、二人の間に同時に浮かんだ。
「……例えば、の話ですが。」
アンドレはワルツのリズムに合わせながら、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「もし、婚約相手を選べるとしたら……あなたのような方なら、悪くないかもしれませんね。」
「……!?」
エリアスはアンドレを見上げた。その瞳には、冗談とも本気ともつかない光が宿っていた。
「つまり、どういう意味ですの?」
「あなたも婚約を望んでいない。そして、私も同じ。ならば、お互いに都合のいい相手として、利用し合うのはどうかと。」
(父はオーケン伯爵家との縁を結びたいと考えている。縁を結べるのならば次男ではなく、利害の一致する長女でも構わないだろう)
アンドレの言葉に、エリアスは思わず息を呑んだ。
それは、まさに『契約結婚』の提案だった。
ワルツの最後の音が響き渡る。二人は舞踏の余韻の中、じっと互いの瞳を見つめ合っていた。
「……面白い発想ですわね。」
エリアスは静かに微笑んだ。瞳の中からは、どこか挑戦的で興味がありげな様子が伺える。
「それで、その契約、具体的にはどういうものなのかしら?」
アンドレは驚いた顔をしたが、一瞬で満足そうに微笑んだ。
「それは、これから話し合っていきましょう。けれど、お互いの秘密を知らないままにね。」
果たして、契約は二人に何をもたらす──。




