漆黒の弾丸
どうすれば……勝て…
「よう、セラミス」
地面から、ゴルさんが現れた。
いや、なんで!?
…………あっ、地面掘ればよかったのか。
「とりあえず脱出はできるだろうが…このままじゃジリ貧だ!!どうする?!」
逃げようという言葉が、まず思いついた。
そうだ…チャンスは一回じゃないんだし……また来て倒せれば…
…………ダメ。それじゃ、あの時と何にも変わらない。
いざという時に勝てなきゃ、私は誇ってセンパイの隣に立てない!
考えろ…考えろ……
私のスキル、魔法……使えるもの…!
再生……そうだ、黒疾弾をグロブロックに撃った時、何かを思いつきそうだった!
確か……重力による制限…
それを無くすには…威力を、上げる、に、は………
思いついた!
「ゴルさん……ちょっと、耳貸して」
ーーーーー
再びゴルさんの魔法で、私たちは地上に出る。
もちろん、骸の魔術師もそれに気づいて、魔法を解除して、こっちを向いてきた。
『vrl(☆=×〒rv』
それで、また同じ魔法を撃ってくる…
でも、今思いついた作戦がある!
「お願いね!」
「任せるぞ!」
ゴルさんが無詠唱で、岩の壁を前に出す。
視界内にいない以上、私たちの背後からだったりからは弾は来ないはず…
なら、やることも決まってる!
私は後ろを向き、黒門を構成する粒子を集めていく。
そして、中を空洞にした、球を作り出す。
「おおおお!!!」
後ろからゴルさんが耐える声と、岩と岩がぶつかり合う音が聞こえる……時間もあんまり長くはない…
「あと3秒で横に飛んで!!」
「3秒な……分かった!」
3…2…1…!
「今!」
後ろを振り返ると、ちゃんとゴルさんが横に飛んでいた。
そして、壁が壊れて、大量の弾丸が私を襲う……
お願い!成功して…!
私は、貯めた黒い球を、前に押し出す。
球はどんどんと弾を飲み込みながら、骸の魔術師に近づいていく。
「いっけえええええええええ!!!!」
そして、見事に黒球は骸の魔術師を飲み込んで、静止した。
……そう、なんてことはない。ただ、黒門を動かすだけ…
重力に縛られず、どんな物体も飲み込む…言うなれば黒喰かな…
「でも、これじゃダメ…」
このままだと、結界なんかで体積を無理矢理大きくされられた時点で解放されて、負けるだろう。
だからこそ、消す。
「ゴルさん……ごめんね」
「いいよ…ありがとな」
私は、球を、少しずつ小さくしていく。少し程度なら体積の規約には引っかからない。
でも多分、中は酷いことになってる。なぜなら、あの球に入れられた物体は、空洞の内部にワープして、そのまま内部からは抜け出せないから…
ワープした自分の手足に、あの岩の弾丸と一緒に、段々と押しつぶされていく…きっと苦しいだろう。
少しずつでないと制限に引っかかるだろうから、一気にはすることができない…
それでも、終われば少しは楽になれるかな…
「これくらいしかできなくて、ごめんなさい…」
球は、遂に飴玉程度の大きさに収まって、そこからは動かせなくなった。
解除すると、地面に黒色の球がポトンと落ちた。
ここまでしてしまえば、もう再生することもないかな…
触れようとすると、球は砂になって宙に舞っていく。
「あっ…」
確かに戦いは終わったのに、なぜか少し虚しくなって俯く。
すると、ゴルさんが頭をくしゃくしゃと撫でてきた。
「何気にエグいよなあ、お前のアレ」
「えぇ!?…いや、そこは慰めたり…!」
やっぱりデリカシーがない!
せっかく苦しんでた母親が、こんな形でも解放されたのに……
上を見ると、唇を噛み締めるゴルさんがいた。
「ありがとうな……」
「いいってことよ!!」
「なんだよそれ……フッ……ハハ」
慰めるために気丈に振る舞ってみたのに、ゴルさんは笑ってきた。
「なんで笑うの!?………………フフ……アハハハ!」
なんでか私も笑えてきて、静かな森に、二人の笑い声だけが響いた。
笑い疲れた後に、私は視界の端に見覚えのあるものが落ちているのに気づいた。
あれは…
「魔導書?」
確か、骸の魔術師が持ってた…飲み込まれる前に落としたもの?
拾って、ゴルさんに差し出す。
「これ!お母さんの遺品!」
そう、母親の唯一の遺品だろうに、ゴルさんは突き返してきた。
「俺はもう実家にあったの持ってるからな!!それはお前が持ってやがれ!!」
「でも…」
口ごもると、ゴルさんは自分のものと、私が持っているのを無理矢理交換した。
「これでいいだろうが!!帰るぞ!!」
ゴルさんは、私を置いて、町の方に足を運んでいく。
ゴルさんと過ごしてきて、色々と分かったことがある。
テンションが上がるのは、まず戦闘時。
もう一つは、怒った時。
あと一つは……
照れ隠しをする時。
「素直じゃないよね!!」
「なんか言ったかあ!!??」
ゴルさんが遠くで答えて、私も魔導書を持って、ゴルさんを追いかけていった。
ーーーーー
そのあとは、イェルに戻って修行を続けて、強くなっていった。
たまにいらないのに剣買ったりで、カサインさんやゴルさんに無駄金だって怒られたけど……まあその話はいいとして。
とりあえず2年が経ちまして…センパイが明日、戻ってくる。




