*1
『あー、暑い!』
ジリジリと焼けるような道を文句を言いながら歩いている少年。
都内の高校に通う高校1年生。神山蓮也。
幼い頃から父に無理矢理やらされている日本拳法の稽古の帰り道である。
『せっかくの夏休みってのになんで稽古なんてしなきゃいけないんだよ!』
蓮也は父に無理矢理やらされているのでもちろんやる気0、たまに開催される大会にすら出場しない。世間での蓮也の実力は未知数。
しかし、蓮也の実力を知る同じ道場の師匠と弟子達は蓮也のことをこう呼ぶ。
『神童蓮也』と。
蓮也は毎日の生活に嫌気がさしていた。
来る日も来る日も練習、高校初の夏休みなのにもかかわらず練習する日々。毎日同じことの繰り返しである。
そんな蓮也にも唯一の楽しみがあった、それは家の裏山の山頂で見慣れた街の景色をボーッと見つめる事。ほぼ毎日の日課である。
『さて今日も練習終わったし、街でも見に行くか!』
と、裏山の入り口に着いた時、蓮也はこの世の物ではない漆黒の黒い火の玉と出会う。
蓮也は何度も何度も目をこすり確認するが、その黒い火の玉は浮遊し続けている。
すると、その黒い火の玉は蓮也を誘うかのようにゆらゆらと裏山へと登っていく。
蓮也はその黒い火の玉に翻弄されるかのようにその道をたどった。
しばらく歩くとその黒い火の玉は先に進むのをとめる。そこには蓮也が良く見慣れている山道途中の給水所があった。
しかしそこには蓮也の見慣れないものもあった、それは巨大な穴であった。
その穴は子供が遊びで作った落とし穴とは比較にならないほどの範囲、そして底は見えず闇のように暗い。
『誰がこんな穴掘ったんだよ…』
と蓮也が考えている矢先だった。
『先にゆくぞ…』
とちょっと低めだが綺麗な女性の声が聞こえた。
蓮也は少しびっくりしたが、その声の主が黒い火の玉だと気づく。
そうすると黒い火の玉は深い穴の中へと入って行った。
蓮也はそこにたたずみ考える。
『この穴の中になんかあるのか、落ちたら死ぬんじゃないか、あの黒い火の玉なんなんだよ、先に行くって?』
謎と不安の中で蓮也の鼓動は高鳴っていた。
なぜなら今までにないこの非日常的な事に蓮也は心躍らせている時、またあの声が聞こえた。
『死にはせん。わしを信じて飛び込むのじゃ』
蓮也はその一言で吹っ切れた。
目をつぶり、息を止め、思いっきり穴へと飛び込んだ。
ずっと落ちる、まだ落ちる。
落ちている途中にまた声が聞こえた。
『ワシを信じてくれてありがとう。感謝するぞ』
その声を聞き蓮也は目を開けると、暗闇だったはずなのに白銀の空間を落下していたのだった…




