仮面の騎士
この度は作品をご覧頂きありがとうございます。
自分の妄想を形にしたくこの作品を書きました。
登場人物の表現しにくい悩みや葛藤を、第3者の目線で楽しんで頂けたらと思います。
夜は静かだった。
血の匂いさえなければ。
「ーー終わったか」
低く落ちた声に、周囲の兵は一瞬息を止める。
黒い外套。無駄のない立ち姿。
そして、顔を覆う無機質な仮面。
その人物は影でこう呼ばれている
ーー仮面の騎士
だが本来の名は。
︎︎゛エリオ・ベネガス”
足元には倒れ伏した賊が数人。
まだ息のある者もいるが、動ける状態ではない。
「生きている者は拘束しろ」
淡々とした命令。
そこには感情はない。怒りも、達成感も。
ただ任務を終えたという事実だけがある。
「は、はい……!」
部活が慌てて動き出す。
だがその視線は、無意識に仮面へと向いてしまう。
ーーあの下は、どんな顔をしているのか。
誰も知らない。
知ろうとした者も、いないわけではなかった。
だが。
「……見るな!」
不意に向けられた一言に、兵士はびくりと肩を震わせた。
視線を逸らすのが遅かったのか、あるいは偶然か。
仮面の奥から向けられる気配は、冷たく鋭い。
「……失礼、いたしました!」
「問題ない」
短く返される。
本当に、気にしていないのか。
それとも、それ以上踏み込むなという警告なのか。
誰にも分からない。
分かっているのは1つだけ。
ーーこの騎士には、近づき過ぎてはならない
それだけだった。
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拠点へもどる道すがら。
エリオはひとりで歩いていた。
護衛は不要だと言い切り、誰も寄せ付けない。
その足取りは一定で迷いがない。
だが、ふと。
「……っ」
わずかに、足が止まる。
仮面の下。誰も見えない場所で、歯を食いしばる。
頬から首にかけて走る、鈍い痛み。
ーー火傷の跡。
古いものだが、消える事はない。
触れなくとも、存在を主張するように疼く。
「……問題ない」
誰に言うでもなく、呟く。
これは弱さではない。
支障もない。
戦う上で、何一つ。
そう、分かってる。
それでも。
一瞬だけ、思考がよぎる。
ーーもし、この顔でなければ。
「……無意味だな」
すぐに切り捨てる。
考える必要はない。
見せる相手などいないのだから。
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拠点の門が見えてくる。
その向こうに、次の任務が待っている。
気を引き締め再び、表情を凍らせた。
ーーその時。
「エリオ・ベネガス様!」
背後から、名を呼ばれた。
振り返る。
そこには伝令兵がひとり、息を切らして立っていた。
「至急、王城へ、勅命です」
「……内容は」
「他国への派遣任務とのこと」
一瞬の沈黙。
夜風が外套を揺らす。
「……他国」
その言葉だけ、わずかに重く落ちた。
異なる文化、異なる価値観。
ほんの僅かに、思考の奥がざわつく。
仮面の意味が通じない場所。
この顔を︎︎゛隠す理由”すら問われる場所。
「詳細は城にて」
「了解した」
どこであろうと、やる事は変わらない。
任務を遂行するだけだ。
それなのに。
拭えない違和感が、胸の奥に残る。
ーー何が引っかかっている?
考える必要はない。
そう判断してもなお。
その感覚だけが、消えなかった。
いかがだったでしょうか?
エリオに起こるこれからの恋の試練、そしてエリオ自身の成長をどうぞ今後も見守って下さり。
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