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お風呂があれば生きていける  作者:


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18/18

オコジョ(仮)

「……」

「……」

 見つめ合う私とオコジョ(仮)。


 曲が終わった。

「あっ」

 音が止むと同時にオコジョは身を翻し、森へ消えた。慌ててマップを開くが、現在地周辺にマークは表示されなかった。


 現在マップに表示される生物は次のとおり。

・人間…こけし形、通常は青、危険人物は赤

・危険生物…三角形、赤

・狩りの獲物…コイン形、黄色


 人間以外の無害な生物は表示されない。離れと同様に、ここにも危険生物は近付けないんじゃないかと思う。


 喫茶室が入っている建物は、離れの玄関からは木々が邪魔で見えなかったが、日本だと本館が建っていたであろう位置にある。

 マップには喫茶室に足を踏み入れてから現れた。現在は喫茶室以外の場所に立ち入ることはできない。

 そのうち、大浴場が開放されてほしい。私、大浴場に入る前にチャラ男神に異世界送りにされたし。


「あっ、鑑定使えば良かった!」


 私の鑑定スキルは対象の名前と大まかな説明が出る程度で、強さや弱点など詳細はわからない。

 狩りの時はマップに表示されるマークで私でも倒せる魔物かどうか判断できるし、最近は初見の物が減り、冬になって森での採取を休んでいることもあって、あまり鑑定を使っていなかった。


 真っ白な体、丸い耳と黒いつぶらな瞳。元の世界のオコジョとは別種だろうが、動物図鑑で調べてみた。

 オコジョはイタチ科で気性が荒く、肉食でネズミなどを食べるらしい。冬毛は白く、夏毛は茶色(腹は白)。


 ドングリとかを食べててほしい見た目だけどなぁ。

 もし次に姿を見せてくれたら、即鑑定を使おう。



 ◇◇◇


 10時をだいぶ過ぎた頃、サントロ町の冒険者ギルドにミラがやって来た。


「モモ、久しぶりー」

「ミラ、久しぶり。良かった、会えて」


 町の人は鐘の音で時刻を知る。鐘が鳴るのは朝6時から夕方6時まで3時間毎。時計を持つ人は少ないようだ。

 元々定刻に来ると期待していないから遅刻にイライラすることもないけれど、スマホ無しでの待ち合わせは不安だ。


 今日のミラは髪を下ろしスカート姿で、冒険者には見えない。私はワンピースの上に外套を着て、ボブの髪を隠すためにフードを被っている。


 もう少し髪が伸びれば後ろで一つに括れるようになって、短い髪が目立たなくなるだろう。

 髪色については、温泉宿の売店にヘアカラーが無かったためニドゥ町で売られていた染め粉を試してみたが、私の黒髪は染まらなかった。

 プールの水で髪が脱色したりするし、温泉魔法で成分やpHを調整したお湯に浸せば脱色できるのではと思って、弱酸性のシャンプーが髪に優しいイメージだから逆のアルカリ性のお湯で試したところ、少し色が抜けて明るくなった。

 でも髪は傷んだ。頭皮のダメージは宿のお風呂で回復しても髪は元に戻らないようなので、しっかり茶髪になるまでやったらバサバサだろう。

 どうせ平たい顔は変えられないし、もう髪色はこれでいい。

 

「町の案内は私に任せて。行きたい所とか買いたい物とかある?」

「ありがとう。町庁舎と教会は昨日見たから、いろんなお店を教えてほしいな。毛糸を売っているお店と、あと美味しいパン屋さんとか」


 喫茶室に編み物の本があったから編んでみたくなった。欲しいのはマフラーと帽子、上達したらセーターやカーディガン、手袋も。


 手芸用品店では編み針(棒針、かぎ針)と、一番手触りが良かったベージュの毛糸を買った。結構高かったが、領都で買うより安いと店員さんに言われてまとめ買いしてしまった。


 昔マフラーは編んだことあるから全くの初心者ってわけじゃないし、大丈夫。きつく編みすぎてすごく固いマフラーだったけど。……挫折したら毛糸は領都で売ろう。


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