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5.同じものだったら、運命なのに
どうでも良い話だが、俺の通学手段は原動付自転車である。
かれこれ高校入学から2年と2ヶ月程乗っていて、愛車と言っても過言では無い。
晴雨関係なしにカバーはきちんと掛け、休みの日は綺麗に磨く。
それが高校男児には珍しいのか、よく友人達からは「お前、すげーわ」と言われる。
時速30キロ以内で走る帰り道は、ほんのり夕食の香りが漂う。
何処かの家庭が、肉じゃが。
此処の家庭は多分、カレー。
俺の家の夕食は、何だろう。
ぼんやりと夕食の献立に想いを馳せていた俺の視界に、長く黄色い髪の子が見えた。
友達と三人で歩く姿の彼女を、時速30km走行で横を通過する俺。
楽しそうに笑う彼女の両サイドに居るのが、スカートを靡かせて居る子達で良かったと場違いな安堵を感じながら。
彼女の家の夕食は、何だろう。
「同じものだったら、運命なのに」
我ながらとても気持ち悪い思考だ。
頭を左右に振ってその思考を紛らわす。
そんな確率、きっと0に等しいだろう。
サイドミラーに、彼女の姿が遠く映った。
遠いのは、姿も距離もだった。
彼女はきっと、俺なんか知らないんだろう。
理解した刹那、サイドミラー越しの彼女は、いつもより遠くに見えた。




