エリオの発見
同じ頃、宇宙空間でエリオは計器を見ていた。
七日分のデータが積み重なっていた。水晶空間の表面測定、反発エネルギーの強度、時間帯による変化。全部記録していた。
昨夜から、一つの数値が気になっていた。
反発エネルギーの強度が、均一ではなかった。
大型艦が触れると強く弾かれる。小型機が触れると、弾かれ方が弱い。出力が小さいほど、反発も小さい。
比例していた。
エリオは計算した。もう一度計算した。もう一度計算した。
閾値がある。
一定以下の出力なら、表面を通り抜けられる可能性がある。飛行艇サイズの小型機であれば——理論上は、通れる。
エリオはシオンの執務室に向かった。
扉をノックした。
「入れ」
シオンは地図を見ていた。ハーブの茶が横にあった。まだ温かそうだった。
「提督、報告があります」
「聞こう」
エリオは計算結果を差し出した。シオンが受け取った。数行読んだ。また数行読んだ。
部屋が静かだった。
シオンが顔を上げた。
「飛行艇なら通れる」
「理論上は」
「やってみたら、できた、というやつだな」
エリオは少し間を置いた。
「試してみなければ分かりません」
「試そう」
シオンは立ち上がった。地図を折った。
「エリオ」
「はい」
「よくやった」
エリオは一拍置いた。
「ありがとうございます」
今日は「はい」ではなかった。シオンはそれに気づいたが、何も言わなかった。
試したのは、その日の午後だった。
飛行艇一機。エリオが操縦した。シオンは艦橋で計器を見ていた。
水晶空間の表面に、飛行艇がゆっくりと近づいた。
触れた。
弾かれなかった。
表面が、波紋のように揺れた。飛行艇がその波紋の中に入っていった。
「通れた」とエリオが通信で言った。声が少し上ずっていた。
シオンは計器を見た。飛行艇の反応が、水晶の内側から来ている。
「内側の状態は」
「見えます。王都が——普通に、あります」
「リラとカイは」
「今探しています。城壁の近くに——います。二人とも」
シオンは椅子に深く座り直した。
「伝えてくれ。迎えに行けると」




