ぽっぽさん
ぽかぽか。
うんぱは、目をあけた。
あったかい。
となりにも、うんぱ。
そのとなりにも、うんぱ。
くっついている。
「……いい」
「ねてた」
「おきた」
もぞもぞと動いて、外を見る。
光が強い。
「……そと」
「ぽかぽか」
「いく」
なんとなく決まる。
てちてちてち。
三匹は外へ出た。
⸻
公園は、あたたかかった。
風は少しあるけど、日なたはぽかぽかしている。
「いい」
「すき」
てちてち歩く。
砂をさわる。
葉っぱをひろう。
きょろきょろする。
気になるものが、いっぱいある。
「これ、いい」
「たからもの」
「もってかえる」
小さな石を拾う。
ぎゅっと持つ。
そのときだった。
「……ぽっぽ」
ぴたりと止まる。
三匹とも、同じ方向を見る。
いた。
ぽっぽさん。
地面をつついている。
「……ぽっぽさん」
「いる」
「……」
少しだけ、うしろに下がる。
なんとなく覚えている。
こわい。
つつかれる。
「……つよい」
「いたい」
しばらく、じっと見る。
ぽっぽさんは、気にせず歩いている。
その姿を見ているうちに、
少しずつ、気持ちが変わっていく。
「……でも」
「こんどは、いける」
「うんぱ達、さいきょう」
言葉にすると、だんだんそんな気がしてくる。
「……いける?」
「いける」
「いける」
三匹はうなずいた。
⸻
作戦を考える。
ちょっと離れたところで、こそこそする。
「……こうする」
うんぱは、地面に線をひく。
なんとなくの形。
「ここから、いく」
「ぐるっていく」
「はさむ」
ぽっぽさんを、はさむらしい。
「……いいね」
「うんぱ、かしこい」
「うんぱ達、さいきょう」
作戦は決まった。
なんとなく。
⸻
三匹は、ゆっくり動き出す。
てち……てち……。
音を立てないように。
ぽっぽさんの周りを回る。
一匹は左へ。
一匹は右へ。
一匹はまっすぐ。
「……いい」
「ばれてない」
「いける」
かなりいい感じだった。
ぽっぽさんは気づいていない。
あと少しで、囲める。
「……いま」
「いく」
「いく」
三匹は、顔を見合わせる。
小さくうなずく。
そして――
「ちゃー!!」
三方向から、一斉に突撃した。
⸻
ぽっぽさんが、顔を上げる。
一瞬、目が合う。
次の瞬間。
ばさっ。
羽を広げた。
「……あ」
想定していない動きだった。
風がくる。
ばさばさっ。
「……わ」
バランスを崩す。
そのまま。
つん。
「いたい!」
つんつん。
「いたい!いたい!」
ぽっぽさんは、普通につついてきた。
「ちがう!」
「はさむやつ!」
「やめて!」
作戦は、一瞬で崩壊した。
ぐちゃぐちゃ。
だれがどこにいるかも分からない。
そのとき。
「……いける」
一匹のうんぱが、つぶやいた。
目の前に、ぽっぽさんの足。
近い。
あと少しで触れる。
「いける……」
手を伸ばす。
届く。
触れる――
その直前。
つるっ。
「……あ」
小石を踏んだ。
ころん。
転ぶ。
「いたい!!」
大きな音。
それに反応して。
つんつんつん。
「いたい!!やめて!!」
集中攻撃。
「むり!」
「こわい!」
「にげる!!」
三匹は一斉に走り出した。
とてててててて。
後ろから、まだつつかれる。
「ごめんなさい!」
「もうしない!」
「うんぱ、よわい!」
涙目で走る。
とてててて。
とてててて。
やっと、距離があいた。
⸻
公園のすみっこで、止まる。
はあ、はあ。
「……いたい」
「つつかれた」
「こわい……」
しばらく動けない。
ぐずぐず。
目に涙がたまる。
「……いけるとおもった」
「いったから……」
「いたい……」
ぽろぽろ。
少し泣く。
⸻
でも。
あたたかい。
ぽかぽか。
日なたにいることに気づく。
「……あったかい」
そのまま、ぺたんと座る。
となりのうんぱも座る。
もう一匹も。
くっつく。
「……ねる?」
「ねる」
「ねる」
ころん。
三匹は丸くなる。
さっき拾った石は、まだ手の中にある。
「……たからもの」
「もってかえる」
「うんぱ達の」
ぎゅっと握る。
⸻
すやすや。
少し寝る。
さっきのことは、だんだん遠くなる。
ぽっぽさん。
つつかれたこと。
こわかったこと。
でも、少しだけ残る。
なんとなく。
⸻
目をあける。
「……かえる」
「うんぱ、かえる」
「たからもの、もってかえる」
てちてちてち。
三匹は歩き出す。
帰り道。
ふと後ろを見る。
ぽっぽさんは、もういない。
「……いない」
「よかった」
ほっとする。
でも。
「……こんどは、いける」
「いける」
「うんぱ達、さいきょう」
また言う。
⸻
おうちに帰ると、三匹はこそこそ動く。
宝物入れのところへ行く。
石を入れる。
「ふえた」
「いいね」
「すごい」
満足する。
⸻
こたつにもぐる。
ぬくぬく。
「……いい」
「すき」
目がとろんとする。
「つぎは……」
「ぽっぽさん……」
「かつ……」
小さな声。
でも、すぐに消える。
すやすや。
⸻
夢の中で、うんぱは――
ちゃんと囲んで、ちゃんと勝っていた。




