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五十一話 スライム発見!でも……?

 十分経っても、三十分経っても、一向に敵は出てこなかった。


 今日はモンスターが少ないのか……とも思ったが、すれ違うパーティたちはみな何匹スライムを倒したか、みたいな話を和気藹々(わきあいあい)と繰り広げていた。


 後衛のヨハネとリリィを呼んで、ひとまず作戦会議だ。

 ふたりとも困ったように首をかしげている。


「おかしいですね、このフロアはスライムの巣になっているはずですが」

「危ないことが起きないのはいいことですけど……私の仕事がありません」

「誰かが乱獲(らんかく)しているのか……?」


 クリスも眉をひそめるばかりだ。

 あたりを見回すが岩肌が続くだけで、モンスターの影なんてひとつも見当たらない。


 そうなってくると、私の計画も完全におじゃんだ。


「うーん……私、ちょっと向こうを見てくるわ」

「気をつけろ。何かあったらすぐに俺たちを呼んでくれ」

「もちろんよ」


 クリスに片手を振ってみせて、私は三人から離れて歩く。

 うーん……本当に気配すらないわね。


 それでも耳を集中させる。

 微かに()いずり回るような音を拾い、その方向に(しの)び足で近付けば――。


(い、いたわ!)


 岩陰の隅。目立たないその場所に、一匹のスライムがいた。

 ぶよぶよとした半透明のモンスターだ。

 色は目にも鮮やかな蛍光グリーンで、大きさは幼児くらい。


 知能も戦闘能力も低いため、冒険者のチュートリアルとして広く親しまれている。

 そんな雑魚敵(ざこてき)だが、今の私には救世主に見えた。


 このスライムに襲われて助けを呼ぶ。

 さあ、計画の始まりだ!

 私は意気揚々(いきようよう)とスライムの前に飛び出した。


「さあスライムちゃん! 早く私を襲――」

「ッッッ、ぴぎぃっ!?」

「へっ」


 その瞬間、スライムは体を大きく震わせて、断末魔のような鳴き声を上げて逃げていった。

 目にもとまらぬ素早さだった。

 あっという間にスライムは岩と岩の隙間にもぐり込んで姿を消す。


「えっ……スライムって、目についた相手には絶対襲いかかるっていうのに……?」


 たしかそんな話を授業で聞いたはず。

 そのスライムが逃げ出した……なんで?


「……ひとまずみんなのところに戻った方がよさそうね」


 私は釈然(しやくぜん)としないながらも、駆け足で三人のもとに向かう。

 なんとなーく嫌な予感だ。


 元の場所にはすぐにたどり着いた。

 三人とも肩で息をしていて、そのまわりには蛍光グリーンの粘液が散らばっている。


「は……?」

「あっ、ロザリア様!」


 いち早くヨハネが気付き、私の元に駆け寄ってくる。


「そちらは大丈夫でしたか?」

「う、うん。こっちは、まさか……出たの?」

「はい」


 ヨハネは重々しくうなずいてみせる。


「ロザリア様が姿を消して、すぐに群れの襲撃に遭いまして。幸い、三人で対処できる数ではありましたが」

「聞いてください、ロザリアさん! 私もスライムを一匹やっつけたんです! この(つえ)で、ぽかーって!」

「そ、そう……」


 粘液まみれの杖を抱えて、リリィはきゃっきゃとはしゃぐ。

 一方、同じく粘液まみれの剣を拭きながら、クリスはにやりと笑った。


「俺は五匹仕留めたぞ。まずまずといった成果だが……きみの力を見れなかったのは残念だったな」

「あ、あはは……また次の機会があるわよ……」


 引きつった笑顔を返す私だった。

 ひょっとして、これは……。


(私を怖がって、モンスターたちが出てこないのでは!?)

続きは明日更新します。

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