序幕
「なあ、姉さん。私がやっていることは正しいのだろうか?」
黒髪の騎士は窓から外を見ていた。そこには木の十字架が刺してある、そんな簡単な墓標が並んでいた。夜だというのに、大切な人を亡くしたのか十字架の前で泣いている女性、そして新しい墓標を立て続けている兵士等多くの人が粗末な墓場を訪れていた。
「国防という名の殺し合い、資材目的の武力遠征。確かにこの国は豊かになっているだろう。だがーー。」
後ろの椅子に座っている金髪の女性はそんな騎士の背中を見ていた。
「貴方のことだから責任を感じているのでしょうけど、これは人間の宿命よ。」
女性は立ち上がり騎士の肩に優しく手を乗せる。
「地球上の資源は有限。誰かが利益を得た時、誰かが損をしてるの。どこかの国の繁栄にはどこかの国の衰退があるということよ。これは必然、どうしようもないこと。」
だから貴方は何も悪くない、女性は騎士に優しく告げる。しかし騎士はその理論に満足できなかったらしい。騎士は女性に背中を向け退室して行った。
「私はこれを良しとしない。必ず誰もが笑顔である世界、これを実現する方法があるはずだ。」
騎士は一人の男の背中を思い出す。憎たらしいやつではあったが、彼はその正義感を以てこの世界を救ったのだ。自分にもそれができるはず、騎士はそれを信じ続けてきた。
「その先には悲劇しか待っていないわよ。」