ニートは家を出るまでがハードルが高い。
いつも通り自分はベットではなく、机に伏して眠っていたのだと、アリス・イートンは気が付く。
窓の隙間から日の光が差し込む。もう昼過ぎだ。昨日は確かカエルと一日中会話していたの覚えている。
机の上にはサンドイッチがラップされて置いてあった。やはり彼女は自分には勿体無いメイドだとつくづく思う。
彼女は人間ではないが。それにしても彼女が自分の世話をしないでどこかに行くなんて、珍しいと思いながら、サンドイッチを頬張る。サンドイッチの横に書き置きがあった。
『朝から街に行ってきます。諸事情がありますので』
やはり珍しい。彼女にしては手紙の内容が妙に歯切れが悪い。いつもクールだが言いたいことはハッキリ言うので、何か言いたくない事情でもあるのだろうか?
それにしても今日は結構やな夢を見た。自分にとって前世は文字通り悪夢であり思い出したくない記憶である。
目がまだはっきりと見えない。世界が歪んで見える。彼女はため息を吐き、目を覚ますために刺激が強い薬草の匂いを嗅ぐかコーヒーを飲みたいと思い棚を漁った。
そしてコーヒー豆が入っている瓶、見つけを持ち上下に振る。コーヒー豆はあったがもう残り少ない。
しかし今日は行商人が村に来る日だ。脳内の買い物リストにコーヒー豆を入れながら、コップに出来上がったコーヒーを注ぐ。そしてコーヒーを口に入れる。すると、コーヒーの濃厚な香りが、
今日は素晴らしい一日になると感じさせてくれる、
『ドッカーン』
前言撤回。最悪だ。天井を突き破り何かが落ちてきた。その衝撃で部屋の埃が舞え上がる。
落ちてきたもの、それは人間の形をしているが本当に人間だらろうか?人間じゃないかもしれない。
普通に考えて、ドアから入ってくるはずだ。それをしないで、突き破ってくるなんて人間だとしてもよほどの物好きか考えなしのバカである。
しかし、アリスは自分がよく知っている、魔力を感じる。よく見たら、影は二つあるではないか。一つは知らないが、もう一つは、、、
「ただいま戻りました。ご主人様。」
彼女は人間ではなく精霊の中の物好きである。最近よくラノベを買ってくるから心配していたが、まさかこんなことになるとは。アリスはわかりやすいようにため息を吐く。
「ハァ〜。おかえり。でその人は誰?」
アリスは質問をしたが自力で答えに辿り着く。
「ああ、なるほど。」
「%'0*>{)&%'{{?+|`」
アリスはさっきまで喋っていたのとは違う言語で話しかける。答えは簡単だ。そこにうずくまっているのは珍しい人間に姿を変えれる魔物だ。さすがのアイスも見るのは数百年ぶりである。さすがメイドのマーガレットである。アリスが人間不信で、ニートだから魔物で喋る訓練をすると言うことなのだろう。つまりこれは彼女の主人へのプレゼントということになる。
しかし現実はもっと単純である。
人間?が立ち上がる。
「なんですか。その言葉は。私をおちょくっているんですか?」
「え、魔物が喋った!!」
アリスは少し自分の考えがずれていることに気づいていなかった。
「私のことを忘れたんですか!?」
「え、私あなたとあったことがあるんですか?」
彼はメイドを凝視する。メイドは無表情で彼の視線を避ける。
「あなた、自分がどういう立場か忘れたんですか?」
「え、ニートじゃないんですか!?」
彼は絶句し、もう一度メイドを見る。そしてアリスは思い出した。
「ああ、なんか昔『賢者』に任命された気がします。」
「そうです。それです。私はあなたと同僚、つまり三賢者の一人、マイク・ユラシア。神速の魔術師とよばれています。それに確か、10年前の式典で会いましたよ。『永久の魔女』 アリス・イートン殿。」
「ていうか、なんであなた私を知らないんですか?。あったことありますよね?」彼が尋ねる。
「それについては私が説明します。」
メイドのマーガレッが会話に割り込む。
「私の主人、アリス・イートン様はある出来事により小さい頃から人間不信になってしまいます。」
「そして10歳の頃、彼女は生まれた村から出ました。」
「家出をした後、彼女は今住んでいるこの田舎村に流れつきました。」
「彼女はこの村に拾われた恩を返すため、なんとか役に立ちたいと考えていました。そんな彼女は魔術師としての才能がそこそこありました。普通の人間ならそこそこの魔術師としてそこそこな人生を送りますが、彼女は普通の人間ではありませんでした。」
「彼女は15歳の頃、禁忌魔術の一つである不老の魔術が勝手に発動してしまったのです。以来、彼女が歳をとることはありませんでした。そうとも知らずに彼女は村を守るためだけに魔術の訓練をしていきます。」
「そして約200年の歳月の間修行し続けた彼女は、いつの間にか国家最高峰の実力を望まず手に入れてしまったのです。」
「彼女が魔術を極めたのはこの小さな村を外敵から守るためでしたが、その力を使わないのは勿体無いとその時代の『賢者』に言われ、彼女はその『賢者』の推薦により、彼女の実力を国が認め、彼女は三賢者になりました。」
「しかし彼女は実戦の重要なところで全く役に立ちませんでした。」
「それは生まれた頃から右手に刻まれている、魔法陣が重要な局面で勝手に振動し右手が疼いてしまうからです。」
「彼女は自らが仲間の足を引っ張りたくないと直訴し、この村での隠居生活送ることになったのです。」
「それ以来、一切表舞台に立たなくなった彼女は本名も顔も忘れられ、ふたつ名だけ三賢者に在籍している、伝説の存在になってしまったのです。」
「と、言うわけで国からの任務です。」
彼が言う。アリスは異論を唱える。
「え、ちょっと待ってください、私『賢者』の地位を返上したと思うんですけど?」
「は?何を言っているのですか。『賢者』の地位は返上できませんよ。一度受けたら死ぬまで『賢者』ですよ。そんなことも忘れたんですか?」
「ええ、そんなー」
アリスは自分が賢者になったことを後悔した。そして右腕が疼く。




