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66 謎の壁


「アイテテテッテ──ッ!? なんだ? 何かにぶつかったみたいだ……」


ここはまだ、ヤナコドムの森の中だ。

ぶつけた頭に衝撃が走り、森の草地の上に体が投げ出された。


転移というのは、直立した状態で空間を一瞬で移動する。

着地地点が近づくと景色が見えるようになり、降りたいところに不時着する。

遺跡の中の地下から地上へと飛来したので、屋外に出たとき少しこの身が上空に向かったのを感じ取った。


その間の僕の身体はエーテルのように魔法粒子として物質をすり抜けていく。

その粒子形態であっても自分自身であるという意識はふつうにあった。

どうやら転移スキルも魔法の一種のようだ。


「ここはどこだ?」


車にはねられたような衝撃に見舞われた。

地に向かって叩きつけられた折り、かすり傷を負った。

それはすでに回復済みではあるが。


明確な所在地はわからない。

だけど見覚えはあった。


「そうだ! 確かここはルディと一緒に侵入してきたばかりの森の入り口付近だ」


いったい何が起きたのだ。


ユリオルに承諾を得てから、まず遺跡の入り口前まで出た。

本当に転移スキルに目覚めたのだと実感が湧いた瞬間でもあった。


そこまでは問題視するようなことはなかった。

息が苦しいとか、窮屈を感じるとか、何もなく体感で数秒の出来事だ。

だから、どうせなら一度マチルダの待つ別居塔まで飛んでみるかと。


そう思って、さらに転移を試みると何者かと衝突してしまった。

地上から地上への飛来であっても、一度上空へ向かい身体が弧を描くように持ち上げられるのだ。


放物線を描いて飛来し、イメージした目的地が近づくと周囲の景色がスローで見えて着地したい地点を目視するだけでそこにスッと降りてくれる。

これならば様子見だけならどこへ行っても、すぐに戻って来られる。


すぐに遺跡の中へ戻ったとしても、彼らも転移台までたどり着いてるかは不明だ。

時間的にその可能性は低いと判断した。


しかし、何故だか森の外へ出してもらえなかった。

森の入り口付近に落ちてしまった。

何者かの襲撃かと思い、周囲を確認するもだれの姿も見当たらない。

不気味なほどにシンと静まり返っている。


すべての傷が塞がって痛みを感じなくなった。

静かに立ち上がる。

徒歩で森の外へ出て、レイナルーズ領に戻れば全力疾走で家までは数分だ。


ルディと歩んで来た道を思いっ切り逆走して見た。

「ドギャン!」と叫びはしないけど、また目の前に火花が散る。

見えない板のようなものに激突して、その場に尻もちをついた。

何もないはずの空間にぶつかったみたいだ。


「……なんだよ、これ?」


さっきよりも受けた衝撃は小さかった。

すぐに立ち上がって、そっと近づいて行き、手を伸ばし指先で触れてみた。


「……あっ、壁があるわ!」


温もりは感じられない。

透明で見えないけど、空間の壁が行く手を遮っていた。


そのまま手のひらを押し付けたまま、右へ左へと移動したがどこまでも壁がある。

直感的に、見えない壁は広範囲に広がっていると悟った。

この上空にも続いていて、僕は上空の壁に衝突させられて落下したのだと。

その時点で転移スキルが解除されて、不意の落下により負傷したのだ。


この森でウロウロしているとや野盗どもに見つかるかも知れなくて。

いまの僕なら戦えはするが、何しろ数が多い。

時間を取られると厄介だ。


「なぜ? なにが起きたんだ。森から出られそうにないけど」


せっかくの転移スキルなのに家に帰れそうにない。

その部分の解明に時間を割いていられない。

森を北に抜けたアスバルド領にも行ったことがないのでそちらへ探索に行くのもなしだ。


迷子になればどうする。

遺跡の中に転移する手段で帰ってこれるが。

何も得られない場合、動けば動くほどメンタルがすり減ってしまう。


あまり動き回らずに近場でできることを探ろう。

よく分からないけど、何をして時間を潰そうかな。

少し周辺を散策すると、妙案が浮かんだ。


「あっ、そうだ! 僕も草木の鑑定ができるんだった」


しばらくの間、この森を鑑定眼で調査してみることにした。



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