休みの日の朝ー彼女視点
彼女は目覚ましより少し早く目を開けた。
楽しみだから――
と言い切るには、少しだけ照れくさい。
でも、
心がいつもより軽いのは確かだった。
スマートフォンを手に取る。
通知はない。
それを見て、
ほんの少しだけ口元がゆるむ。
来ないと分かっている。
だからこそ、安心する。
昨日までの自分なら、
「本当に来る?」
「やっぱりやめるかも」
そんな不安を
勝手に膨らませていたかもしれない。
でも今日は違う。
来ると決めた彼を、
そのまま信じている。
信じる、というより――
彼が選んだ今日を、
ちゃんと待てる自分でいたいと思った。
クローゼットの前で立ち止まる。
少しだけ、迷う。
可愛く見られたい。
その気持ちは、
否定しようがない。
でも“頑張った”と思われるのは、
なんだか違う気がした。
派手さより、やわらかさ。
特別な自分じゃなくていい。
彼が隣に立ったとき、
自然に呼吸が合うような服。
鏡の前でくるりと回る。
少しだけ、照れくさい。
こんなふうに
誰かのために服を選ぶのは、
久しぶりだった。
メイクをしながら、
ふと自分に問いかける。
今日は何を望んでいる?
告白?
進展?
確信?
少し考えて、
小さく笑う。
欲張れば、いくらでもある。
でも本当は――
彼が今日、
逃げずに来てくれること。
それだけで十分だと思えた。
強く見せなくていい。
揺れないふりもしなくていい。
彼が不安を抱えたまま来ても、
そのまま受け取る。
そしてもし――
少しだけ笑ってくれたら。
それだけで、きっと嬉しい。
バッグを手に取り、
玄関で一度だけ深呼吸する。
鏡に映る自分は、
思っていたよりも穏やかな顔をしていた。
ドアを開ける。
朝の空気が、
やわらかい。
胸の奥にあるのは、
大きな期待じゃない。
ただ、
少しだけ早く会いたい、
そんな気持ちだった。




