ガチャ
「ほう……、これはいいな。特に特別報酬枠が期待以上だ」
「特別報酬? 本当だ。リボルバーにぴったりだね。クマさんはどうでしたか?」
2人の声に「今見る」と答えて、俺もリザルト画面を開く。
そういやネズミをものすごい数倒したからな。
金色の光も5つ6つは出てたよな。
お。レベルも一気に2上がったか。
……普通に考えて俺のレベルで来れるような場所じゃないよな。
《ミッション達成:迷宮ステージをクリアする》
《ミッション達成:迷宮ステージのボスステージをクリアする》
ああ、途中のウィンドウのとこまでで一応クリア判定か。
そんで、ボスを倒すと完全クリアって事だな。
うん? 画面に次々と開封されてゆくドロップアイテムに、金枠が2つある。
「俺んとこSSRが2つ出てるぞ、分けるか?」
「我のとこには4つある。施しなどいらん」
おお、流石はリボルバー。
PTでステージに出撃した場合、ドロップアイテムは基本的に戦績に応じて分配される。
それをそのまま受け取るか、全部集めて各員の需要に応じて再分配するかはPTの方針次第だ。
「僕のとこは1つですが、貴重な経験をさせてもらったので、十分です」
アサギは明るい声で答えた。
いいのかそれで。
最後、お前が撃たなかったらリボルバーは墜ちてたんだぞ?
……ああ、お前にはそれがSSR以上に嬉しかったんだな。
「んじゃ、ありがたく2つ貰っとくな。ねずみの歯とロケットパーツだから、欲しけりゃ言えよ」
「はい」と答えるアサギと「いらん」と答えるリボルバー。
ほんとよくこんな正反対の2人が付き合ってるよな。
一体どこでどんな出会いをしたんだ……?
普段、他人のプライベートに首を突っ込む事のない俺でも、この2人の馴れ初めは流石に気になる。
……が、それはまたの機会があれば、だな。
「そろそろ時間なんじゃないか?」
俺が尋ねれば、リボルバーが「そうだな」と答えた。
20時まではもうあと10分ほどだ。
別れ際は2人にしてやる方がいいか?
「んじゃ、俺は先に落ちるな。あんま役に立てなくて悪かったが、楽しかったよ。また誘ってくれ」
リボルバーが「おう」と答える。
アサギが慌てて「そんなことありません!」とフォローしてくれていたが、俺はログアウトボタンを押していたので途中で途切れてしまった。悪いな。
ゴーグルを下ろす。
もう20時か。長丁場だったな。
早いとこ夕飯にしないとゼンが帰ってくるぞ。なんか買いにいくか。
スマホを手に取ると、ロボワの更新情報メールが来ていた。
お。PvP用のピックアップガチャのお知らせか。
いよいよ来週からPvPが始まるもんな。
何々、ピックアップUR武器は5種か。
追尾ミサイルランチャー……、さっき見たばっかだな。まあエイム不要で初心者でも当てやすいし威力もデカいからな。
レーザーガトリング……は、連射性能高いし弾速も速いし誰が使っても強いよな。
グレネードランチャー……遮蔽物貫通と範囲攻撃だな。
おっ、プラズマキャノン! 俺が欲しいのはこれだな!! 高威力に長射程、弾速も速いし狙いやすいから初心者にもいいよな。遠距離から安全に高火力が出せるから、装甲が紙でもこれさえあれば相手によっては勝てそうだしな。
んん? アネモネ…………ってポンポンじゃないか。
ああ、思い出してきたぞ。
俺も前はこのピックアップでここにポンポンが来たのが不思議だったんだよな。
攻略サイトでも完全にポンポンはハズレ扱いされてたが、今ならわかる。
カニバサミと合わせた時の高いバフと、一発入れればあとは逃げ回るだけで確実に倒せる毒ダメージは、ここに並んでもおかしくない性能だよな。
毒ダメージは相手が解毒キットを持ってりゃすぐに回復可能だが、それでもいくらか削れるだろうし、状態異常を無効にするタイプの装備はもうしばらく後にならなきゃ出ないはずだからな。現時点でのポンポンはかなりの強武器だ。
俺はスマホのスクロールを少し戻す。
プラズマキャノンはこのプラズマチャンバー……プラズマ弾を生み出す爪の部分がいいよな。この収束する形が美しいんだよな。
あー……。
いいなぁプラズマキャノン……。
手持ちのダイヤで10連は引けるだろ、さっきのミッション報酬も全部受け取れば5000ダイヤは超えるか。
うーん……あと1000ダイヤあれば、20連……。
まだ今ならミッションが結構残ってるからな。
ちまちまミッション開けてけば、一週間くらいであと1000ダイヤいけるか……?
***
一週間後。
必死で集めた俺の3000ダイヤを突っ込んだガチャ。
画面にはキラキラと金色に輝く格納コンテナが映し出されていた。
またSSR確定かよっっ!
そろそろURの確定演出が来てもいいじゃないか!!
一週間前に引いたピックアップガチャもSSRが2つで終わったんだぞ!?
いやいや、一旦落ち着こう。
ポンポンが出た時は、SSRからのURだったわけだからな。
諦めるには、まだ早い。
俺は、ひとまず深呼吸でもしようかと息を吸い込む。
ん? 今なんか人の声がしなかったか?
俺はゴーグルの音量を下げる。
「長尾さん、呼吸と脈拍が乱れていますが大丈夫ですか?」
「ピアリス!? もうそんな時間か!」
朝からちょっとガチャを引くだけのつもりが、ついつい身についたデイリー周回を先にこなしてしまったせいで、もう9時を過ぎてしまったらしい。
昨夜のロボワは2900ダイヤで終わったが、今日には30日ログインボーナスとして100ダイヤが受け取れた。それでピッタリ俺の所持ダイヤは3000になった。
……が、今そのダイヤは儚く消えようとしている……。
いやまあ、SSRも使えるのはたくさんあるしな。
SRもそこそこ使えるのはある。
RとNだって素材になる。
無駄な物なんて、この世にないはずだ。
「長尾さん、メディカルチェックのお時間ですが……。大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫大丈夫。ちょっと待っててくれな」
「はい……」
何だか心配そうな声してるな。
俺は、ピアリスの気分を変えるつもりで声をかけた。
「今ちょうどガチャ引くとこだったんだよ」
「ガチャ……船でよく長尾さんが血圧を上げ下げしていた、運試し要素ですね」
う、まあ、そうなんだけどな。
運試しか……。
金を積んでガンガン回せる奴は別だが、俺みたいに1つのガチャを数回しか回せない奴にとったらガチャは運試し。神に祈るしかないよな。
「ああ、だからピアリスも祈ってくれよ」
「私も……ですか?」
「俺に、いい武器が……URがたくさん出ますようにって」
「URがたくさん、ですね。分かりました」
ピアリスが小さく笑った気がした。
「んじゃ、引くぞ」
俺もつられてほんの少し笑う。
そのまま、気負うことなくボタンを押した。
まさか、こんな結果になるなんて思いもせずに――。




