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超楽しみにしてたロボゲーが、地球に戻る前にサ終したので、過去に戻ってやり直す!  作者: 弓屋 晶都


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第12話

1つ目のコンテナがゆっくり開く。

七色の光が溢れ出して、ディスプレイいっぱいに広がる。


「UR演出だ!!」

俺は思わず叫んだ。

「1つ目からURなんて初めてだ! ピックアップなら、5分の1の確率でプラズマキャノンだぞ!!」


光の中からシルエットが浮かび上がる。

「これは……っ、間違いない!! プラズマキャノンだ!!」

「よかったですね、長尾さん」

俺は飛び上がりそうなほどの気持ちを、ピアリスの手前なんとか押し留めて次を開く。


「……ぇ」


2つ目のコンテナから、七色の光が溢れ出す。


「こんなことってあるのか!? まさかの2つ目もURじゃないか!!」


光の中からプラズマキャノンのシルエットが浮かび上がる。

「まままままさかの2連続プラズマキャノン!? うおおおおおおおお有難い!! これでいきなり覚醒武器にできるじゃないか!!」

「ふふふ、よかったですね、長尾さん」

「ああ、もう勝ったも同然だ!」

残り8個が全部Nでも、俺は笑っていられるぞ!

にやけそうな口元を必死で引き締めながら、次のコンテナを開く。


「……っ!? 3つ目もUR!?」


しかも、またプラズマキャノンだ。

いくらピックアップとはいえこれは出すぎだろ。

だって先週はSSRが2つだけだったんだぞ!?


「これで2覚醒……。あと1つでいきなり完全覚醒URって事か……!?」

「よかったですね、長尾さん」

嬉しそうなピアリスの声に、俺は小さな不安を感じながらも、次の箱を開ける。


次は……。


「……またURだ……。4連続でUR……、完全覚醒URプラズマキャノン…………。もしかして、俺がガチャ画面を長く開きっぱなしにしてたせいでバグってんのか……?」


まさか、このまま10個全部プラズマキャノンで、大喜びしてホームに戻ったら全部消えてるとか、そんなオチじゃねーよな……。


「いいえ、接続と通信は正常に行われています」

ピアリスの返事に、背筋が凍る。


「……な、なんでピアリスがゲームの通信状況まで把握してるんだ……?」

メディカル担当のお前は、支給されたホログラム装置から俺の体調チェックをするだけの……。いや、そうか。ピアリスは毎日本社に俺のヘルスデータを送信してる。そのための通信性能は備わってんだから、AIと組み合わせれば通信制御もできるのか。

しかし、それにしたって……。

「このゲームが長尾さんの心と体の健康に、強い影響力を持っているからです」

ピアリスは、さらりと答える。

「私には、長尾さんの健康を守る役割が与えられています」


「…………ま、待て待て待て待て! 俺は祈ってくれって言っただけだぞ!? 確率操作しろとは言ってないからな!?」


つーか俺が頼む前に、もう演出は入ってたんだし、結果は決まってた……んじゃないのか? 違うのか!?

あああああくそなんだこれ素直に喜べねぇぇぇぇぇ!!


「長尾さんは以前からレーザー砲がお好きなようでしたので、レーザー砲を多めに祈っておきました」

ピアリスがにっこり微笑んで答えただろうことが、声色からわかる。

うあああああ最後の望みが絶たれた!!!

「それ絶対『祈ってる』だけじゃないだろ!! なんか干渉してんだろ!!」

俺はゴーグルごと頭を抱える。

せっかく楽しくロボワで遊び始めたとこだってのに、何してくれてんだよ!!!

いきなりの重大違反行為じゃねーか!!


「ご心配には及びません。システムデータに一切の痕跡は残りませんので」


怖っっっっ!!!


悪事だと分かっていてやったのかよ!?

いや、ピアリス達自律思考型学習成長AIには犯罪と定義される行為は行えないようフィルターがかかっているはずだ……。

じゃあピアリスは、ゲームの確率操作は犯罪ではないと思ったのか……?

そんなのおかしいだろ。ロボワの利用規約には明確に外部からのデータ干渉を禁止する項目があるんだからな。


「ピアリス、こういうのはやめてくれよ。そりゃ欲しいのが出れば嬉しいけどさ、こんなのはただのズルだ。対人戦のあるゲームは、皆が同じルールの上で、出来る限りの工夫や練習を重ねて強さを競い合うのが楽しいんだよ」


「……ですが、長尾さんの望みのものが出なければ、長尾さんが酷く落胆してしまいます。それは何としても避けるべきです」


んー……。つまり、ピアリスは違反行為と俺の心の健康を天秤にかけた結果、俺の心の健康を守るべきと判断した……って事か。


俺が気安く『祈ってくれ』なんて言ったのがマズかったんだ。

何の役にも立たなくていいから、同じ気持ちでいてほしいなんて、そんなのAIに求めるべき内容じゃなかった。

求めるならせめて、具体的にどうして欲しいのかまで、正確に伝えなきゃいけなかった。


そりゃそうだよな……。ピアリスは、ロボワのサービス終了に落ち込む俺を、無理にでも4年前に戻そうと例外事案を押し通してくれたんだもんな。

俺の健康のために。って。


「……ピアリス。このガチャって無かったことには出来ないか?」

「それは難しいですね……。すでに結果の送受信は終わっていますので」

「っ、じゃあ、せめて、5つ目からは通常の確率で引くってのは……」

「今回のガチャに出現の10アイテムのデータは既にゲームサーバにて保存が完了しています」

「うぐ」

もう、このまま開けるしかないのか……。

なんつーか、もう、嬉しいとかじゃなく、罪悪感しかないんだが……?

「こんなURばっかり出したら、流石に運営に目をつけられるだろ……」

「その点はご安心ください。10連ガチャでURが10個排出される可能性は0%ではありません」

「だとしても普通に生きてて目にするようなもんじゃねぇだろ!」

「……そうでしょうか?」

「そうなんだよ!」

「……長尾さんのストレス値が増加しています」


お前のせいだよ!!


という叫びを、俺はなんとか飲み込む。

ピアリスに悪気は無い。間違ったのは俺だ。

くそっ、せっかくのプラズマキャノンだったのにな、こんなんじゃ使うに使えねぇよな。

今回引いたUR武器は自主的に封印するかなぁ……。


凹みつつ、俺は次のコンテナを開ける。


なんかUR演出も見慣れてきたな。

URの追尾ミサイルランチャー。これもピックアップだ。

その次はURレーザーガトリング。つまりピアリスはピックアップを1つずつ引いて来てくれたんだな。

思った通り、その次はURのグレネードランチャーが来た。

ってことは次はポンポンことアネモネで……。

ああ、やっぱりな。


ピアリスの言葉から推測するに、今回の10連は10個ともURの可能性が高い。

だとしたら、残りの2つはピックアップ外のURか……?

俺の好きなレーザー系なら、あれかこっちか。1つずつってこともあるな。あと箱は2つなんだし。


しかしせっかくレーザー武器を引いたところで、良心の呵責に苛まれながら使うのは精神的にしんどいしな。

やっぱどうせ持ってても使えないなら、レーザーじゃないやつのほうが……。


俺の予想に反して、9個目と10個目のコンテナはどちらもアネモネだった。


「何でアネモネなんだ……?」

「長尾さんが、よく使う武器はなるべく覚醒させたいと以前おっしゃっていましたので、長尾さんがご利用中の武器の使用率を確認したところ、こちらが最適と判断しました」

「なるほど……って、待て待て! お前、俺のゲームデータまで確認できるのか!?」

「はい。必要性がある場合に限り、可能です」


さらっと答えるな……。

そうか。ピアリスをただのメディカルチェックAIだと思うのがそもそもの間違いか。ピアリスは元々500人もの命を預かる宇宙旅行船の総合管理AIだ。

本社としては、見知った姿形で俺を慰めるための人格コピーだったんだろうが、ピアリスが『自身の判断で出来ること』の範囲はそこらのAIの範疇を超えている。

ピアリスにこれ以上違法行為をさせないためには、俺がしっかり、そこんとこを肝に銘じて会話を選ぶ必要があるってことだ。


俺は、覚悟を固めつつゴーグルを下ろした。

ピアリスはいつものように、ベッドと机くらいしか家具のない俺の部屋で、俺をまっすぐ見つめて、俺の言葉を待っている。


「待たせたな。メディカルチェックを始めてくれ」

ピアリスは、俺の言葉に嬉しそうに微笑んで一礼した。

「かしこまりました、長尾さん」



***



『ポイントリーグ開催!』

その日、朝食とメディカルチェックを済ませてログインした俺を出迎えたのは、2036年11月のポイントリーグ開始の知らせだった。


よっし、いよいよだな!


期間は10日の今日から19日23時59分までの10日間。

この1対1の対人戦はロボワが終了するまで毎月行われる、ソロプレイを愛する腕自慢ユーザーのためのイベントだ。


ここまで、出来る限りの強化はしてきた。

とはいえ俺の手持ちURはポンポン1つきりだからな。

いくら強化したところで武器の差で上位陣に食い込むのは無理だろうが、1つ2つはランクアップしたいものだ。


ポイントリーグの画面に移動すると、ピラミッド状の階層図が目に入った。

まずは全員が最下層のブロンズランクからスタートして、シルバーランク、ゴールドランク、その上がプラチナ、ダイヤモンドか。


俺の11月シーズンの目標はゴールドランク!

最低でもシルバーランクには上がりたいとこだ。


早速、出撃ボタンを押す。

マシンセレクト画面で、昨夜のうちに対人用セッティングを済ませていたマシンに乗り込めば、準備完了だ。


一瞬のローディング画面の後、マッチングの待機画面に移行する。

真っ黒な画面に【マッチングを行なっています】の文字がゆっくり明滅している。


思えば今までの環境では、対人戦が成立したことは一度もなかったからな……。

期待と緊張から、操縦桿を握る手に力が入る。

けど、初めてでドキドキしてんのは俺だけじゃないよな。

だって、この世界のロボワのPvPは今日が初日なんだからな!!


[マッチングに成功しました。ステージに入場します]

暗い画面が速度のある演出でザアッと開けると、目の前には小さな村が広がっていた。

ブロンズランクのステージは、こういった隠れる場所のあるマップ3種の中から1つがランダムで選ばれる。


初心者2人をいきなりだだっ広いステージに放り込んだら、単純に射程と火力の強い方が勝つだけになっちまうからな。


やっぱこういうのは、物陰に隠れて相手の出方を見たり、そっと背後に回って奇襲をかけるのが楽しいんだよな!!


口端が自然と上がる。

とはいえ、1戦ずつじっくりやってちゃ、いつまでもブロンズから抜け出せないからな。シルバーまでは手っ取り早く行かせてもらうぜ。


俺はフィールドをざっと見渡して、物見櫓のような他より高さのある建物に目をつける。

あそこが良さそうだ。

サッと自分にバフをかけると、索敵用センサーのレーダーパネルを視界に入る所に調整しつつ、なるべく物陰に隠れて移動する。


物見櫓には梯子がかかっていた。

梯子をこの足であがるのは難しそうだな、音は多少するだろうが、ジャンプでのぼるか。

消音装置はまだこの時点では実装されてないし、音が出るのはお互い様だよな。


ガシャン、と着地音を立てて櫓のてっぺんに乗る。

このステージではここが一番高いようだ。


さあ、よく見える場所にマトが出て来てやったぞ。

撃ってこい!



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