コンの回復
あれから、かれこれ2週間ほど、コンのメンタル回復のためにダンジョン探索を休んでおった。サイクロップスの角のお金も入ってきて、まだまだ...見積もって2、3年は余裕で引き籠り生活ができそうじゃ。
ゆっくり回復しようかのう...焦りは禁物なのじゃ、焦らず、のんびりと・・・最悪、妾一人でまたサイクロップスを狩っても良い...
「リリー...また撫でてぇ...」
「なんじゃコン、すっかり甘えん坊になったのう」
コンの頭を撫でてやると、ふにゃりと耳が前に倒れた。
「くぅ~ん♡ くぅ~ん♡」
「・・・落ち着くのぉ」
ケモ美少女をなでなでしてのんびり過ごすこの時間も、悪くないのじゃ。
・・・待て...
「なあコン」
「なぁにぃ?」
「お主、なんだか表情がやわらかくなっておらんか?」
「えぇ~そうかしら~ ぬふふ~ リリーのなでなで大好きぃ...」
言葉尻も柔らかくなっておらんか?
「ちょ、ちょっとマスターのところに行ってくるのじゃ」
「ええ~ 私も行く~」
マスターのところに向かったのじゃ。
「マスター殿!」
「あら久しぶり、どうしたの? お金が必要になった?」
「コンをみてくれ!」
「マスタ~ こんにちわ~ えへへ~」
コンは妾の背中に縋りついて頭を擦り付けておる。体を横に向けてその様を見せたのじゃ。
「・・・コンちゃん、見ない間に変わったわネ」
「博物学に詳しいマスター殿なら何かわからんか?」
「・・・魔眼で見て見るわ... え?」
マスター殿が明らかに不思議そうな顔をした。
「ど、どうじゃ?」
「貴方に頭を擦り付けた時、明らかにポジティブな感情が増えてる...リリーちゃん、最近何してあげてた?」
「え? 基本撫でているのじゃ、頭とか、尻尾とか...触り心地が良くて...」
「...」
マスターはあごに手を当てて気難しい顔でじっくりと思考し始め、やがて目を閉じて考え抜いた末、目を開いた。
「獣人のなでなで回復特性と、サキュバスの結婚相手との相性が上がる効果が相乗してるのかもしれない...わネ」
「つまり...?」
「撫でるとメンタルがメキメキ回復するワ」
「な、なんじゃと!?」
「多分、コンちゃんのメンタルはもう完治してるかもしれないわネ」
「なんじゃとー!?」
「えぇ~治ってないわよ~、もっとなでなでしてもらわないとやーなの~」
「なんか、幼児退行しておらんか?」
「あ、コンちゃんって元はこういう性格なのヨ」
「ええ!? じゃあ、あのちょっとツンツンしていた性格は!?」
「メンタルやられてたせいであれになってたんじゃない...?」
「失礼ねー 私は全然ツンツンなんてしてないわよ~ もっとなでなでしてくれないとまた元に戻るわよ~」
完全に猫の甘え顔をしておる。キツネなのに。
「・・・どうすればいいかのう?」
「そうね...うーん...えーと・・・・・・ちょっと、コンちゃん」
「なぁにマスタ~」
「闘技場で魔法を撃ってみてくれるかしら?」
「いいですよぉ~」
「リリーちゃん」
「うむ? なんじゃ?」
「魔法使う間、撫でてあげてちょうだい」
「お、おぉ、分かったぞ」
闘技場に行って、コンが魔法の詠唱と舞いを開始した
「わが、英知の聖霊よ~、顕現し~...」
「よしよし」
詠唱している間、とことん撫でてやる。
「狐火~」
詠唱と舞いが以前の数倍は腑抜けて、手抜きにも見えたが大丈夫なのか?
ゴアアアアアアアアアア!!!!
「・・・」
「・・・」
「えへへ、すごいでしょ~ 褒めて~なでなでして~」
妾もマスターも絶句した。
爆炎、爆熱、狐火には凶悪な顔が浮かび上がっておる。まさに恒星と呼ぶべき紫の火球が発生した。すさまじい火力に妾の髪の毛が大きくなびき、闘技場が焼けこげる。それでいて妾とマスターにはダメージが入らない。
本来こういった高火力魔法は威力を抑える物じゃ。なぜなら自分や仲間が巻き込まれるからのう。じゃが、この炎はダメージを与える相手をしっかり選んでおる。
しかもじゃ、火力が上がれば制御は難しくなる、特に自我を持った狐火なぞ、ここまで大きくなれば自信過剰になって言うことを聞かないことのが必至じゃ。しかし、コンはこれを制御して見せた。
...ヤバイ才覚を覚醒させてしまったかもしれぬ。
これなら魔王を超えて破壊神...いや、異世界を含めた全世界1の魔法に於て、『最強神』かもしれん。
ワンチャン、いや、絶対妾のところに置いておかなければ...妾でも勝てぬぞ、コン相手では。正直脂汗が止まらぬ、久しぶりに命の危機…生存本能のアラートを感じたのじゃ。
「リリー、汗すごいよ~ どうしたの~?」
「あ、あはは、こ、コンはすごいのう」
「マスターもぉ~ どうしたの~? 全然喋らないけど~」
「あ、あぁ、えっと、コンちゃん、すごいわネ じゃ、じゃあリリーちゃん、訓練疲れもあるだろうから、部屋で休んで頂戴?」
「あ、えっと...マスター殿も一緒に寝んか?」
「むぅ~ マスターは男のひとだから一緒に寝たらダメでしょ~ リリーになでなでしてもらいながら寝るの~」
頬をぷくっと膨らませてそう言うが、今の妾からすると怒らせたという事実が何より怖い。可愛さを感じられぬ...
「マスター殿、た、助け...」
「あらヒャダ! こんな時間! 次の商談の会合にいかないと~! それじゃあネ!」
マスター殿は足をぐるぐるさせながら逃げるように走り去っていきおった。
「・・・」
「なでなで睡眠、しよっか♡ 尻尾も撫でてほしいな♡」
「あ、あ、あ」
「えへへ~♡ 寝てる間もなでなでするんだよ~! さ、帰ろ!」
手を引かれて、妾は寝室に向かったのじゃ。
入眠後もずっと撫で続け、一睡もできなかったのは言うまでもない。




