第二話 状況把握。
「ああああああ!!!」
「ころされるんだよ!!! ううううう!!!」
「助けて~~~!!! ここから出せぇぇぇえええ!!!!」
「うるせえな!!! 黙れよ!!!」
扉の外からおおきな奇声が聞こえてきよる。
妾はこの、狂った人間達のいる場所に入れられたのじゃ。
あの日、【召喚された日】から、1カ月が経った。
今日までいろいろなことがあったが、まあ、そこまで変わったことはない。
少なくとも、どんな世界に行っても頭のおかしい奴がいるという理は変わりなかったのう。
そしてこの世界について、学んだのじゃ。
ふっふっふ。妾、担当看護師とてれびに色々なことを教えて貰ったのじゃ。
看護師、話が通じると分かったようで、妾につきっきりで色々なことを教えてくれたのじゃ。感謝じゃな! ...ただ、ずっと憐れんだ目でこっちを見ていたことはちと看過できんぞ?
...そもそも、妾の今まで召喚されてきた世界の常識は、この世界には通用せぬことが分かった。
(妾はサキュバスの神で、こういった世界に来たのは初めてなのじゃ)
この世界、人間以外の知的生物がいないのじゃ。
なんという…なんという多様性の欠けた世界じゃ...
果ては黒人とか白人とか、どちらも人間なのに自分たちで区分を作って差別しておる...やはり人間とはアホじゃのう...サキュバスにも色々なクラスのサキュバスがいるが差別などせんぞ。そんなことをしても何も特はないからのう。
それと魔法もない。
この世界の人間が魔法の存在に気づいておらぬわけではなく、魔法自体がないようじゃの。
ただし、そのお陰か科学の成長は著しいようじゃ。
まるで魔法のようなものばかりじゃな。
てれびには、みさいるだの、せんしゃだの、おすぷれいだの、見たこともない兵器が沢山あるのじゃ。(...おすぷれいと聞いて最初は驚愕したのじゃ...いや、同性愛は否定せぬがな...)
ま、あんな兵器は、魔法のある世界ではドラゴンに一瞬で壊されそうじゃがのう。
それからくるまに、れいぞうこ、ケータイなどなど色々な便利道具があるのう。
魔法の世界では飛行魔法や収納魔法、交信魔法等があったが、あれは全員が使えるわけではなかったからのう、あれらより普及率という面で便利そうじゃ。
そして。一番の目玉はご飯じゃ。この世界の飯は美味いのう!
妾はサキュバスをやってきたので、いままで精液を飲んできたが、人間に初めてなったから、飯が美味いというのは、初めての経験じゃ。
魚、肉、卵はもちろん、みそしる、ふりかけ、うどんに、そば、らーめん、米、美味じゃ美味じゃ。
人間の欲が深いのは、飯に対する執着のせいではないか?
そうそう、この世界では売春に厳しいようじゃ。なんでも避妊が難しいからだそうじゃな。不便じゃのう、サキュバスがいない上、避妊魔法がないというのは。
わしの世界では売春は当り前のようにあったぞ。子供のサキュバスもそうしなければ飢えて死ぬからのう。まあ、幼いサキュバスの多くは親から分け与えられるのじゃが...生搾りが好きだという子もおってのう...ませておるわい...
さて、こんなところかのう。
まあ、まずはこの体の持ち主について調べることが先決じゃ。何があったか、分かるといいのじゃが...