47-8 電気を大切にね? キングでライトニングなエレメントを狩ろう
レウラの背に乗り飛翔して、村長から引き出した方角、高台の上を目指すと何ともあっさりソイツは見つかりました。
なにせ高台の上、そのへん全部が真っ黒に焼け焦げて炭の森になっていたからです。
「な、なんですかあれ……うわ、いくらなんでも、あんなの……っ」
「あら大きい♪」
しかもバカでかい。直径4,5mの電気の塊がバリバリビリビリそこで放電してんだから超目立ちます。
「つかもう気づかれたぞ。うわっ、来る来るっ、避けろってレウラ!」
「キェッ、キェェェッ?!」
でっかいソイツがまだ距離が離れてるていうのに、空の上の俺たちにライトニングボルトの段幕を張ってきます。
機動力が売りの白き竜が鮮やかにそれをかわし、マナ先生が大急ぎでレジストを全体にかけてくれました。
「さらに~、マジックシールド! ふぅ……これでよし。あ、だけどね~、これってー、こっちから魔法攻撃することもできないのー♪」
「ソレダメじゃん……」
マジックシールドは発動中だけ効果のある、要するに対魔法バリアーです。中からぶっ離せば仲間のバリアーを壊すだけ。
さあどうする、とりま雷系には水、RPGならみんなが知ってるお約束、出番の少ないマイナー魔法水系をチョイスすることにしました。
「命令だレウラ、俺を地上に下ろせ。そんでお前は囮になれ。電撃の直撃はマナ先生とマハくんががんばって防いでくれる。たぶんな」
「悪くないわっ、でも気をつけてねアレッきゅん! もし死んじゃったら……マハくんは先生が貰うわッ!」
「じゃそういうことで」
「へ……? あっあのっちょっ、そういう勝手な約束困りますっ、アレクサント先生ーっっ?!」
レウラが地上スレスレを飛ぶ。
俺はそれに合わせて消し炭だらけの地上に降下した。
すぐに移動し、炭化し切った大樹を背に潜伏する。後はレウラたちに囮をお願いして、魔力の増幅に集中した。
「ひぇー、思ったよりやべぇ~……」
いつものように一撃必殺のパターンに押し込む。
向こうはマジで魔力という爆弾の塊だ。だいぶ前のことだけど、ダメージ食らいすぎて身体がちっちゃくなったり我を失うのはもうお断りだ。
そんなことになったらウルカに今度こそ食われる。
明日の我が身のためにも慎重に敵の様子をうかがった。
「げ……」
しかし向こうは魔力の塊だ。
そして俺は今、ヤツの弱点属性の魔力を増幅している。ついに気づかれた……。
「もう少しだってのに、気づくなよな……うわっ?!」
壁にしていた大樹に電撃が撃ち込まれた。
脆くなっていたそれは木っ端みじんに破壊され、そこに隠れていたネズミに次々とライトニングが飛んできた。
高出力化したそれが無数の鞭のようにしなり、飛び回って執拗に俺を狙う。
当たったら真っ黒焦げのドリフコース、ダメだこりゃ、とか言う前に追撃が飛んでくるんだからマジで死ねる!
思えば俺という存在は、攻撃力にだけ偏っていたんだな。さあどうする、今撃つか? それとも黒こげ覚悟で溜めて必殺の一撃? ダメだ、今撃つしかないわ。
「魔王よっ、これが私どもの意思です! 者共っやつを撃てっ!」
諦めてぶっ放すことにしたというのに、流れが急に変わっていた。
古なる者の隠れ里、その村長と兵が現れて、矢を斉射したのだ。
そいつは金属矢だ、電撃魔法の軌跡がねじ曲がり、あらぬ方向に屈折する。
おかげで俺は増幅の時間をもう少し稼げた。
「あっ、危ないです!」
しばらくして空よりマハくんが叫んだ。
直径5mのライトニングエレメントは、邪魔者を先に消すことにしたそうだ。
せっかくの援軍に向けて、新たに発動されたライトニングが迫った。
相手は魔力の塊、MP切れなんて展開は起こり得ない。このまま彼らは電撃に焼き払われて死ぬ。
「ああクソッ、自己犠牲なんてっ、されるのもするのもクソ喰らえだよ!!」
何でそうしたのかはわからない。
俺はダリルと一緒に作った思い出の杖スタッフ・オブ・ガイストを、ライトニングエレメントに無我夢中で投げつけていた……。
杖を避雷針にして電気をねじ曲げ、杖に増幅してあった魔力を意図的に暴走させた。
水属性の爆発と激流が生まれ、キングでライトニングなエレメントの雷属性を相殺した。
バカでかい水蒸気爆発が巻き起こり、俺の標的は虹と水しぶきと共に消し飛んだのだった。
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キングライトニングエレメントの石核は、何とボウリング玉サイズを超えていました。
爆発を受けたというのに石核に傷はなく、無事に俺の小脇に回収されたのです。
だが犠牲が生まれてしまいました。
「ありがとうございます。誠意を示しに来たつもりが、危ないところでした……」
村長が頭を下げて感謝をくれました。
兵たちも同じようにしましたが、意思が統合されているゆえにそれ以上の自己主張をしようとはしません。
彼らは生きていました、1人も死んでいません。
「アレクサント先生……」
それからマハくんが俺の背中をやさしく支えてくれました。
気づかいの出来るいい子です。ありがたく今はその手当てに甘えました。
「アレッきゅん、とても立派だったわ。お姉ちゃんは正しかったと思う、間違ってなんかないわ」
「そうですよっ、僕も無事で良かったって思いました!」
犠牲となったのは俺とダリル合作の杖、スタッフ・オブ・ガイスト1本だけでした。
場の属性の影響を受けまくるピーキーな杖は、水属性の爆弾となったのです。
爆発の果てに大地に突き刺さった杖は、上から半分が消し飛んでなくなっていました。
「そうだけど、ダリルに怒られるなコレ。せっかくの俺たちの合作だったのに……あーあ、もう回収するだけムダだな」
おまけに残りの旅をあの杖無しでやらなきゃならないんだから、なんか喪失感とか、もうお家帰りたいがありました。
他に方法がなかったとはいえもったいない……。
「魔王よ、しかしどうして、私どもを助けたのですか……? 私どもを囮にすれば、杖を失わずに済んだのでは……」
「ははは、虫みたいな群体に成り下がったアンタたちにはわからないよ。俺は人間だ、小さかろうと犠牲を支払うのが嫌いなんだ。理屈じゃない、ただ感情的に、気づいたらぶん投げてたに決まってんでしょ」
杖はまた作ればいい、目当ての物も手に入ったし悲しむことはない。
そりゃ大事なものだったから落ち込むけど……やっちゃったもんはしょうがない。
「そうですか……。ではどうぞ、これがお約束の品です。感謝いたします、アレは私どもにとって存亡の脅威でもありました」
「非人間的に仕事早いね、ありがとう」
黄色い紙を2枚渡されました。
そこには箇条書きでいくつかの情報がまとめられている。
いつか聞いた、ソドヴェ、ロゴスという名が目に付く。
「あなたが付け狙う、残る2個体はその名で呼ばれている。その2体は勝利者です。片方は海の向こう、もう片方は……空を飛んでいる」
「は、空?」
「そうです、ロゴスは空からくるのです。だから誰も足跡を見つけることが出来なかったのです」
「へー……まゆつばだな。だけど一応信じとくよ。じゃ、俺たちもう帰るわ、お互いもう2度と会わないことを願おう」
俺は杖を捨ててレウラに乗り、魔境サウスベルを去りました。
このときばかりはうちの竜も俺にやさしく、聖域に下りるとしきりに鳴き声を上げて顔を舐めてくるんだから変な感じなもんでした。
「見逃したかぇ、そちらしくもない……。まあいいぇ、後のことはうちに任せよ、悪いようにはせぬよ」
それからキエ様に報告だけしました。
俺は、よりにもよって生涯の敵を、壊れかけているからといって見逃してしまった。
対古なる者包囲網を布いた身として顔が立たない。
「良いではないかぇ。復讐鬼になり下がるか、別の者になるかの瀬戸際だったと思うぇ。そちは、自然体で自由でわがままなのがそちであろう。アレクサントという男として、正しい行いをしたとうちは思うぇ。おおそうだぇ、床を敷くぇ、うちが慰めてやるぇ……♪」
「ちょっとキエ様、何さりげなく人の心の弱みに付け入ろうとしてるんですか……。うわ、口説き慣れてる感じがやだー……」
キエ様は相変わらずでした。
彼女だって色々思うところがあるでしょうに、俺にやさしくしてくれました。
ええもちろんお断りしましたよ。リィンベルの義理のおじいちゃんになっちゃいますもん……。




