41-9 魔剣を抱いて墓を征く、落城をかけた迷宮攻略
アシュリーとアルフレッド、それとマナ先生とマハくんを連れて王墓を下りました。
幸いにもその時はメンテナンスシーズンだそうで、王族1名だけで配下を5人連れて下ることが出来るんだそうです。そりゃラッキー、喜べよ俺。
「さ、ドンドンいきましょ、手抜きなんてしなくていいわ、全力でっバンバンいかないと」
「つ、強い……マナ先生ってこんなにっ、強かったんですか……?!」
さすがのマナ先生もふざけちゃいられないご様子、なかなか滅多に見られないシリアスモードの大人の姿でした。
この迷宮は霊タイプなどの実体を持たないタイプや、アンデッドが多いです。
つまりマナ先生からすりゃ補正◎の超得意迷宮でした。
「……しかし片方はアレで、もう片方は魔剣とはまた、因業な存在もあったものだな」
「そっスね。考えによっちゃコレおねだりしておいて正解だったっスよ! この魔剣・アレクサントを!」
「うふふ~~先生それ羨ましいわぁ~、生身のあれっきゅんが1番だけどー♪ だってほらっ肉体ッ、って大事よ!」
「そうそう金属で良かったわ俺、ざまぁ生身俺! だけどぶっちゃけ無機物繋がりでドロポンと変わらな――フギャァッッ?!!」
こりゃ余裕も余裕のよっちゃんです。
そこで俺もわいわいと会話に乗ってみましたが、いきなりアシュリーに投げ飛ばされていました。
我が行く手にはアンデッド・ワイトの群れ、そうです俺です魔剣俺なんです俺!
しかし角度が甘いっ、俺が特別に軌道を修正してやります。
それから汚らしいワイトのボディを4匹まとめて斬り裂いて、アシュリーの手元に下手な愛犬より素直に戻ってやりました。
はいお仕事完了、さすが俺。俺とアシュリーのコンビは最強ですよ。
「お見事っス先輩!」
「まあなっ、じゃねぇよ! 投げるなら言えってっ俺いつも言ってるよなおい!!?」
「いちいち投げますっす~とか断ってたら、そんなの武器になんかなんないっスよ」
「はいダウトッ、俺は武器である前にー! 1人の人間ですからね人間! 人権屋を敵に回すよお前ー?!」
……ああクソ……俺の人間アッピールにこいつら誰も突っ込まないから余計にムカつきます。
ああわかってますとも、こいつら腹の中じゃこう思ってるんですよ。
お前金属じゃん……魔剣じゃん……ていうかそろそろウザッ、とかさ! ぜってーーー思ってますよこれ!!
「遊んでないで早く来い!」
「そうよ、お国が滅んだらお姉ちゃん困っちゃう。神様もダーメ、って言ってるわ」
さらに奥に進んでゆくと塵型悪霊ガスト、お化けのクローカーが現れました。
いえ現れたと同時にアルフレッドとマナ先生が神聖魔法で即打ち落としました。これぞ味方が強過ぎて緊張感および出番が無いってやつ。
けどこういうのは実体のない霊ですから、魔剣俺としてはどうも苦手な相手なのです。アイツ、と違って物理タイプ俺ですから俺。
「急ぐぞ、城が落ちる前に迷宮管理者とやらに会わねばならん」
「ぅぅ……僕の出番が無いです。アシュリーさん、その剣ちょっと触らせてくれませんか……?」
「いいっスよ」
「ほ、ホントですかっ?!」
「なに勝手に許可下ろしてるしお前! ていうかここはさ、俺の方に許可取るところでしょマハくん!」
俺たちは王墓をどんどんハイペースで下っていきました。
マハくんの頬ずりエトセトラを食らいましたが、平気、全然、俺平気、大丈夫……。
うっとりとした瞳が熱い吐息を刀身を曇らせたり、やさし過ぎるジェントルタッチが握り手を撫でたりしたけど、全然、全然っ、だ、大丈夫だよぉ……。
・
「ところで魔剣うつけよ、ヤツは何を考えている」
「え、ええー? その呼び方酷くない? もうちょっと道具であり意思ある生命の神秘でもあるこの俺様に、敬意を払えよお前」
道中、アルフレッドに話しかけられました。
まあぶん投げられてる最中だったんで、返事はアシュリーにキャッチされたその後になりましたが。
「ならばもう少し緊張感のある喋りをしろ」
「うん、それは無理、シリアスとか超苦手なんだよね」
「ダメっスよ先輩! それは魔剣として自分はどうかと思うっス、魔剣なら厨二を貫くべきっスよ先輩!」
今宵も我が身が血を欲しておる……クカカカカッ、とか言ったりするの?
やだよそういうの、ただでさえ俺お前に所有されて一時も離れずベッタベタ状態なんだから、そんなノリいつまでも続けてらんないじゃん。
ま、一緒に冒険するのはやじゃないけど。まあそれなりに、先輩1とやらが歩まなかったIFストーリーを楽しんでもいますよ。
「……そんなことより質問に答えろ、うつ剣」
「誰がうつ剣だよお前っ?!! うわひっどっ、そういう何気ない一言からイジメって始まるんだよね~、うっわぁ~」
これはね、うつけと剣をかけてるんですねー、あおりで返してやりました。
アルフレッドは俺たちの前を歩くだけで振り返りません。でもきっとうんざりとした顔してることでしょうとも。
「今は時間が惜しいけどそこは先生も気になるわ。だって先生ね、ついこないだとある方々に呼び出されて……見張れ、って言われちゃったのー、アレッキュンをー♪ あら素敵ッ♪ なんて一石二鳥なご指令なのかしらっありがとう3賢者様!! プライベートの危険な情報も余すことなくギッチリミチミチにレポートがんばるわ! ……なーんて思っちゃったのは秘密よ~♪」
「先生落ち着くっス。口にしちゃいけない部分が色々はみでてるっスよ」
そりゃザマァ俺です。
例えばマナ先生に天井裏から監視されたりしてね。
で、寝てたらヨダレとか降ってくんの、エイリアン並みに分泌量でドバーッ。いやぁつくづく金属で良かったわ俺ー。
ていうかそういうことなんですよ。今コイツらの興味は俺ではないもう1人の俺にありました。
ヤツが魔王キアを継承してこの騒動の引き金を引いたのです、その事実は揺るぎません。
で、その魔王の力に手を染めたアイツ、よりにもよってアイツ、ある意味1番継いじゃダメなヤツがこの先どこに向かおうとしているのか。
それが気になって止まないようです。
ええただでさえ先輩1は秘密主義者なんでそこは余計にでしょう、相談無しで大事を起こす常習犯ですからアイツ。
「さあね~、あんまり深く考えてないと思うよ。便利な力がそこにあったから手を付けた、って感じ? 力そのものに善悪なんてないんだから素直に利用した、ただこれだけのことでしょ。アイツは反省なんてしないし、責任も持たない、悪いのは古なる者って開き直ってるだろうね」
「フッ……違いない、アレが反省などありえん。ヤツがお前という分身を作ったのは、もしかしたら大失敗だったかもしれんな、フッ……」
「頼りにしてるっスよ、先輩2」
ああそうかも。
俺が俺に対して義理とか果たす理由なんてないし、魔王化ルート確定しちゃったアイツに代わって、コイツらにもっと歩み寄るのも悪くないかもしれない。
マジでアイツが暴走したら俺が俺に天誅下すってことで。
「ってゆーかいい加減その先輩2って呼び方止めろって言ってるじゃんよ?!」
「ならば、うつ剣でいい」
「よくねぇよ!!」
ああはい、やっぱ歩み寄り却下だわ。




