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3-05 2/3 第一回奴隷争奪カップ、いきなり決勝にして蛇足なる戦い

 かと思ったんですが、奴隷剣士カイルさんもあれだけ動き回ったんだから疲労してました。

 全身全霊だったわけで、受け流されたわけで、すぐに身動き出来る状態じゃありませんでした。


「うぁ~今のでメッチャ手痺れたし、明日は筋肉痛確定だよ、アッハッハッ」


 なのですかさず剣を拾い上げました。

 武器を手にすると心に余裕が戻ってきます。

 カイルさんも膝を震わせながらヨロヨロと上半身を起こして、懲りずにまた身構えました。


「ヌォォォォーッ!!」


 絶叫しました。それでまた俺に突っ込んで来ます。

 こっちは受け流します。弾きます、避けます、やり過ごします。

 今さっきので彼の持久力にほころびが生まれました。


「ひょいひょいっと……っ」

「ぬっ、ぬぉっ、貴様っ、くぅぅ!」


 隙が多いです。あとうるさいです。

 その隙を突いて剣を入れると、何とまあ上手い具合にカバーされてしまいました。

 さすが元兵士様、実戦経験が違い過ぎます。なんだこのしぶとさすごいよ?


「あの猛攻を防ぎましたか……ヒェヒェ、なるほどこれが冒険科の実力というわけですなぁ……」

「いやいやしかし危なかった、あと一歩で決着が付いてしまうところでしたなっ!」

「おうじぶん、もっとがんばったらどうや? そないなセッコい戦いばっかしよっておのれは女戦士かぁ? 男ならガツーーンッといかんかぃっ!」


 言う方は楽でいいよね、こっちはそんな体格に恵まれてないし無理言わないでよ。

 本気出したらこんなヤツ魔法でドッカンなんだってば。



「おぅおぅ、うちがこの子買うたらなぁ、死ぬまでこきつかったるわぁ! どうせ2年の命や、それまで使えるだけ使いつぶすのが当たり前やからなぁ~!」



「…………ぁ……」


 するとどうだろう。

 その言葉にアインスさんが反応した。

 今まで全くの不動、無感動、直立状態だったはずの彼女、その指先がピクリとだけ小さく強ばっていた。


「ッッ……!」


 それから……苦しげにその片腕をつかみ……爪を鋭く立てたのが見えた。

 ……やっぱり生きてるんだから感受性が喪失してるわけじゃない。

 人の言葉がちゃんと全部わかるんだ。自我も間違いなく残ってる。


「ひどいなぁ……」


 モショポーさんって人を理解してきた。

 だからまた大げさに言ってるだけかもしれない。

 けど、でも、それは聞き捨てならないじゃないか。


 一市民としての博愛精神に抵触するよね。

 奴隷なんて欲しくないけど……でも気が変わった。

 あの子、アインス・ガフさんは俺の元に招き入れて、死ぬまで人並みの生活をさせてやる。


「なら……」


 それは同情とかじゃない。

 俺には信頼出来る店番が要るし、彼女はもっと丁重に扱われるべきだ。

 ハッキリ言い切るなら、この時代の人間にアインスさんを任せられない。それが結論。


「ならこっちは週休二日の三食昼寝付きだっ! 奴隷として扱うなんて絶対イヤだ! うちのアトリエでっ、頼もしい従業員としてっ、死ぬまで楽しい錬金術の世界に携わらせてやるっ!!」


「なっ……なんやてぇぇーっ!! アホか自分っ、なんやそれわけわからんわーっ!!」


 闘志をもって奴隷剣士カイルを見定める。

 彼はこちらのブチキレに戸惑い警戒しているみたいだ。


「ククク……クハハハハッッ! はぁ……こんな茶番はもう終わりだよ……なら奥の手を出そうじゃないか……」

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……いいだろうやってみろアレクサントっ、俺も契約がかかっている、ただ死力を尽くすのみだっ!」


 剣士カイルが攻めの構えに変わる。

 向こうも疲弊している、決着を付けたいのだろう。


「いくよ……」

「来いっ!!」


 彼には一つ先に謝っておこう。

 口にしたらバレるし心の中で。


 これは剣闘。でも魔法を使っちゃいけないとは誰も言ってない。

 さすがにウィンドカッターとかファイアボルト撃ち込むのは100%反則負けだけど、しかしこの使い方ならきっとギリギリセーフだ。……と思う。


「我が名はアレクサント、好奇心の怪物なり。敬虔なる大地の精霊よ……」

「お、おい貴様っ、魔法は反則だぞ!」

「その破壊の力をに向けて解き放ちたまえっ、……アーススパイク!」


 深く深く身構えて、アーススパイクの術を自分の足下に発動させた。

 すると爆発的に地面が隆起する。それは俺自身を砲弾に変えて剣士カイルの目前へと吹き飛ばす。


「――っっ?!!」


 そんな奇襲、誰にだって予測できないだろう。


 まさか自分に撃ち込まれると誤解していたそれが、敵の足下で爆発して俺が飛んでくるんだから。

 カイルさんの喉元に剣を押しつけたまま、俺はそのまま相手を押し倒した。


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