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38-4 名所その3 縁結びの見晴らし台 2/2

「で、こじつけられそうな神話とかありますか? 縁結びです、縁結び、何だっていいですよ」

「うん、ルルド教の神の使い、エイザルの祠をここに立てるとかどうかしら~? 古い方の経典の中に、部族違いの男女の縁を結んだ伝説があるわ」


「ルルド教ねぇ~……」

「ふふふ……アレッきゅんはお祈り大嫌いだものね♪」


「それもありますけど。でもそれ使っちゃうと教会の連中が噛んでくるじゃないですか。俺、あの連中と付き合うのはあんまりね……」

「でもあんまりマイナーな神様ばかり奉っちゃうとほら~、逆に~~、目を付けられちゃうんじゃないかしら~♪」


 宗教そのものはともかく宗教団体っていうのは得てして集金装置になりがちなものです。

 そうするとうちは羽振りが良いのが知れてますので、間違いなく、大量の寄付とか要求されそう……。


「まあそうだけどー、俺はほらー、zが神様な人種だからほらー。……もっと金かかんなそーなやつないですかね?」

「うふふふっ……本当におかしな子♪ そこが危なっかしくてほっとけないわぁ……♪」


 わかりますよ。領地運営をする上で宗教は切り離せません。

 領民の満足度を高めますから。まー、ゲームとかだと。


 味方にすれば便利です。

 だけど絶対なれ合っちゃいけない相手だと思います。

 忘れちゃいませんよ俺、エーテルの市場独占話を持ちかけてきたのも教会の連中でした。


「だってヤダもん、あいつら嫌い」

「しょうがない子ねー」


「うーん……もういっそここもドロポンにしちゃうとかどうだろ。地母神ドゥルコーンの加護が得られるよ! みたいな」


 もう全部偉大なるドロポンでいいかも。

 フリー素材になってくれない神とかいらなし。


「キェッ、キェーッ、キュルッ、キュルルルルーッ!」

「って何だ、どうしたレウラ、腹が減ったんならもうちょっとだけ待っ――うぉぁっ?!」


 そしたら俺の周囲をレウラが飛び回っていました。

 省エネモードの子竜状態だったのが救いです。旋回を続けたソイツは最終的に俺の胸へと体当たりしてきたんですから。

 キーパー・アレクサントくん吹っ飛ばされたーっ! 尻餅つかされました、痛いです……尾骨打ったぁぁ……。


「あっお姉ちゃんわかっちゃったわ! もしかしたらレウラくんも立候補したいんじゃないかしら。ふふふっ……それはそれで悪くないわぁ♪」

「いたた……するにしたってもうちょっと慎ましくやれよ……。お前いい加減自分の体重を自覚しろって!」

「キュゥッ! キュキュ~ッ、キュルルルッ!」


 レウラを胸に抱いたままそれを見下ろします。

 なんか自己主張してるけどもちろんわからん。何となくだけどドロポンへの対抗心で訴えかけてきてる気がする。


「かわいい……。ああっどっちも今すぐ抱きしめたいっ、ハァハァ……そうだわ……子竜とのからみもいいかもしれないわ……」


 なんか今、聞いちゃいけないセリフがでてきた気がする……。

 よしスルーだ、マナ先生はスルーしないと話が片付かない。


「お前さ……負けず嫌いだよな。プライドとか超高いよな。ていうかお前、俺に復活させられる前はモンスターサイドだったんだからな?」

「クルルゥ~?」


 まるで犬っころみたいにレウラが首を傾げます。

 狂える黒き大飛竜が元々のコイツ。あるいはソイツを材料にしただけ、とも言えるから微妙なところだけど……。

 しかしレウラと縁結び……これ繋がるの……?


「マナ先生、非常にまずい妄想をしているところ悪いのですが……どうにかコイツと縁結び要素をこじつける方法あります……?」

「うふふ……無いわ♪」


 ドロポンは街道を生み出して開拓地に富をもたらしました。もうこの時点で神です。

 一方のレウラは……うん、その飛行能力は凄いよ、でも縁結びとぜんぜん関係ないや。


「ですよね~、はい却下、却下だぞレウラ」

「グルルルッ! キェッキェッキュルックルッ、キェーッキェーッ!」


 もちろんレウラは俺に甘えつつ不平で返してきます。

 やたら細かく沢山鳴くので、もしかしたらこれ喋ってるつもりなのかもしれない。しかも長文系のしつこい文句。


「だから何言ってるのかわからんって……」

「キュルルーッ、キュルッ、クルックルルルックルゥーッ!」


 どうしてもここで奉られたい。

 その強い意思だけは伝わりました。ドロポンには負けられねぇとかそういう意地もたっぷり。


「もうしょうがないわぁ~、竜の伝説を、ぜ~んぶねつ造しちゃいましょ~♪ 昔々あるところに若者と貴族の娘と白い飛竜さんがいました。傷ついた子竜を助けた若者さんに、ある日白き竜が恩返しに来ました。こうして身分差カップルの2人は結ばれました、めでたしめでたし」


「重要なところいくつもいくつもはしょりましたね……言いたいことは何となく伝わりましたけど……」

「いいのよ~、細かいところは先生が創作しておくわ。それでねアレッきゅん、ここがその子竜を助けた丘なのよ、ああっロマンチックだわ~っ、先生も縁結びしてもらいたいくらいっ♪」


 ……言うほど悪くないかもしれません。

 俺の希望通りのフリー素材ですし、レウラだってどうしても伝説になりたいって言うんですから叶えてやってもいいでしょう。

 じゃないとヘソ曲げるし。いざ足が必要なときに拒まれたら大変です。

 本来餌付けしてる側にイニシアチブがあるはずなんだけどさ……。


「もうそれでいきましょうか……」

「キュェッ?! ピキュルルッ、キュルルッキュルルルルーッッ♪」


 折れました。するとレウラが大はしゃぎでさえずりだし、もう媚びる必要はねぇなっ、と胸から飛び立ってしまいました。

 鷹もビックリの飛翔速度です。空の高いところをビュンビュンと上機嫌に泳ぎ回っています。


「はぁ……んじゃ決まったことだし領館に帰りましょうか。おーいレウラー!! 舞い上がってないで降りてこーい、もう帰るぞーっ!!」


 空めがけて叫び声を上げます。

 聞こえてません。テンションマックス過ぎて会話が通じてないってやつ?

 舞い上がるってこういう状態のことを言うんですねー。ダメだこりゃ。


「まいったな……どうしましょうかマナ先生」

「うん、それはそうとねアレッきゅん♪ 先生……アレッきゅんにお返しもらってないわぁ~♪」


「宗教家なのにわりと現金なところありますよね先生」

「違うのよ、この前の温泉旅行、本当に楽しかったのアレッきゅん……! だけど……だけどアレがいけなかったのね……先生、また火ついちゃった……」


 マナ先生の様子をうかがいながら立ち上がり、一歩後ろへと下がりました。


「ねぇ考えてもみて……山の中で今、私たち2人っきりよ……」

「そりゃ超やべーっすね、俺超ピンチじゃん?」


 ピンチにさせるならヒロインにしとけよ、って展開。

 誤算だった……まさかレウラが舞い上がって降りてこないだなんて……もはやここは陸の孤島……! 逃げ場無し!


「ねぇ、アレッきゅん……バインド!」

「ちょっ汚っ?!!」


 不意打ちにはかなわない、バインドが生み出す植物のツタに拘束されてしまいました。

 桁外れの魔法防御力を持つキエのローブも、拘束魔法ばかりは対処できません。


「ディスペル」


 けどこっちだってパワーアップしてるんです、バインドを強制解除します。


「あらぁ~、解除されちゃったわぁバインド!」

「だから汚いよ先生っ?! ディスペル!」


「うふふそうかしら~、バインド!」

「そうですよっディスペルッ!」


「……バインド!」

「ディスペル!」

「バインド!」

「ディスペル!」

「バインド!」

「ディスペル!」

「バインド!!」

「ディスペル!!」

「バインド!!」

「だああああーっ、ディスペルだってばっ!!」


 しつこ過ぎるぅ……。

 魔力の裏付けによる単純魔法の粘着使用、さすがマナ先生こういうのがお得意です……。


「ふぅふぅ……やるようになったわねアレッきゅん!」

「はぁっはぁっはぁっ……暴力に出るの止めてくれませんっ?!」


「違うわ! 暴力と魔法は違うの! 先生のバインドは触手持ちモンスター並みにやわらかくてテクニシャンだからこれは、愛よっ!」

「そんな変態でいやらしーいバインド使えるの先生だけですってば!? 淫獣マナ先生って呼びますよーっ?!」


 バインド! ディスペル!

 バインド! ディスペル! その不毛な応酬は声も枯れんばかりにいと果てしなく続き、かりそめの停戦を迎えたのは4、5分後という事態となるのでした。


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