38-3 名所その3 縁結びの見晴らし台 1/2
レウラに再起乗して空へと舞い戻りました。
あれで良かったのかなと思いつつも、作っちゃったもんはしょうがない。今さら後には退けないです。あれだけでかいと撤去作業的にも退けない、退かない。
まあそういうもんなんですよ。
観光地というのは客の暇とのお付き合いです。
秘宝館みたいな変な施設が生まれるのはきっとコレのせい。
誰が何と言おうとあそこは金運仕事運を呼ぶ大精霊ドロポーン様のおわす神聖なる場所、もうそういうことにしておきましょう。
実際偉大ですから。
「って……人の耳元で何してんですか……?」
「クンカクンカ……ハァハァ、スーハァスーハァ……え、何か言ったアレッきゅん?」
マナ先生が後ろに乗りたいと言い出しました。
やな予感がしたんだけど、レウラの速度なら次まで大した距離じゃないです。
半自動的に年上のお姉さんのやわいおっぱい背中に押しつけられ、気づけば耳元の匂いをかがれてしまっていたという現在進行系。
「もうすぐ着きますから落ち着いて下さいね。てか女神様との誓いはどうしたんですか、アレッきゅん絶ちしろってお告げが下りたんじゃないんです?」
「しょうがないわ、アレッきゅんを後ろから抱きすくめられるなんて……はぁぁぁっ、この映像をお見せすれば女神様だって許して下さるわ!」
うん、相変わらずたちの悪い狂神者、俺以外には無害です。俺、以外には……。
早く着け、急げレウラ、いち早くマナ先生をパージしなくてはならない!
「いやそりゃどうでしょうかね、もしかしたらあっちも迷惑してるかもしれないし……。うわまた来たよ、もうやだ神の仕事つら過ぎぃ! みたいな?」
「ハァハァ……スリスリ……ウェヘヘェェェ……しょ、少年時代から変わらないこのすべ、すべべ……♪ やっぱりもうダメっ、辛抱たまらないわーっ!!」
完全に後ろから抱きすくめられてしまっていました。
そこまではまあいい、許そう、役得だしやわらかいし。
ただマナ先生のお腰がカクカクと暴れだし、それが搭乗者を前へ前へと滑らせバランス感覚を狂わせます。
「キュェッ?! キェッキエッ、キェェェーッッ?!!」
「危ないっ危ないってマナ先生って、ちょっうわっ、落ちる落ちる落ちる落ちるっ?!!」
なんとマナ先生、レウラの背の上で立ち上がりました。
それから俺を後方に引っ張って、よっこいせと俺をまたいで前側に陣取ります。
そんなことされたらレウラだって焦ります。なにこいつやべぇどうにかしろご主人! って叫んでいました。
「ふぅ、これで良いわ♪」
「全然よくないです……てかもう着きますよ」
マナ先生はそこまでして何がしたかったのか。
答え、背後からだけじゃ物足りなくなったので正面側をご所望されたのです……。
「ねぇアレッきゅん?」
「何ですか……」
「最近ちょっと心配。無理とかしてない? 辛くなったらいつでも先生に相談してね。神様に代わって私があなたを見守ってあげるから」
思いの外それはやさしい包容でした。
危険と隣り合わせな騎乗方であることをのぞけば。なんて非常識で命知らずな人なんだろう……。
「そんなに心配してくれなくとも大丈夫です」
「ん~~、そうかしら……アレッきゅんは自分のことにも鈍感だから信用ないわ~♪」
そうかもしれません。
その証拠になぜだか目頭が熱くなって先生から目をそらすはめになりました。
けどそれは間違いだったのです。
「キェッキェーッ、クルルックルルルーッッ?!!」
「腰振んなやっまかりなりにもアンタ教師ッ!! ぶわっ、よだれが目にィッッ!」
そこはやっぱりマナ先生、欲望には絶対に逆らえないご様子でした。
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「死ぬかと思った……うぇぇ……顔面ビチャビチャ……」
「ごめんねアレッきゅん……先生慰めようとしたのに気づいたら……ごめんね……」
最後の名所候補に着きました……。
今は立ち上がれる気がしません、地に膝と腕を突いて俺はうずくまっていました……。
腰振りはまあそういうものだと妥協しよう。
マナ先生みたいな綺麗でやさしい人にされたら悪い気も……いや、転落死するかと思ったけど……心を仏にして妥協しよう……。
だがマナ先生より滝となって後方俺の顔面に流れつたったそのよだれは、もう役得とかスケベ心を台無しにするくらいのデロデロ感なのです……。
犬に顔舐めまくられたとかその程度のレベルじゃないよ!
「それでどうですか……そこの見晴らし」
「見晴らし? あらそうね~、レウラくんの背の上には負けるけど……ふふふっ、良いものねこういうの」
そらレウラの上が1番の絶景になるに決まってます。
その背の上から見て考えて、あそこの山からなら色々見えるだろうなってポイントを選びました。
ここは温泉街から少し離れた丘の山頂。
例えばこの場所から東をみればほら絶景、ひなびた温泉街と森林、大きく切り開かれた開拓地、丘の上の領館、さらにその向こう側に目を向ければ、広い平野の先に公都の姿があるのです。
高い城壁と密集した町並みが遠くかすんで、それが公都という栄華を誇っているかのようでした。
「ううん、やっぱり素晴らしいわ。先生、1人の冒険者としてちょっと感動しちゃった……」
「え、何がです?」
「だってそうじゃない。私たちが制覇した23号迷宮の跡地がこんなにも発展してくれて、ほら見て、道が都まで続いてるわ。アレッきゅん……先生こんなの見せられたら惚れ直しちゃう……」
「いやそれ以上デレられるのはちょっと……正直……さっきも死にかけたし……?」
マナ先生にツッコミ入れながら立ち上がり、先生と一緒にドロポンストリートの行く先を追います。
公都とアルブネア新領がしっかりと繋がり、開拓地としても発展している。まだ半年も経っていません、その成果に思わず得意げな笑みを浮かべてしまいました。
「大丈夫よ、今の仕事を止めて四六時中、ずっと遠くから見守っていたい! って思う程度だから♪」
「怖いよ?! あの、あんまり冗談に聞こえないんですけど……」
「あら~、だって~、冗談なんかじゃないもの~♪ 先生結構本気よっ、命をかけて見守るわ!」
「そうですか……。まあそんなおもしろ珍回答は軽く流すとして、マナ先生にここの眺めを気に入っていただけて俺も良かったです」
絶景になってるなら良しです。
ならば次のステップに飛びましょう。
「ではここに、縁結び伝説をねつ造しましょう。後でドロポンに頼んでここまでの山道を整備します。その山道を、カップルどもに登らせるんです」
「ふんふん……、それでそれでー?」
「するとどうしたことでしょう。ハイキングデートというきっかけと運動による心拍増加が、2人をちょっと開放的な気分にさせること間違いなし。お互いの好感度アップのきっかけが始まり、こうして上にたどり着いた頃には縁結びが大成功ってわけですよ。……あとはその登る理由を、上手い具合にねつ造すれば良し。お願いしますマナ先生」
ぶっちゃけちまうと、こういうスポットに行くぞと決めて実際に行動した時点で縁結びなんて成立しちゃってるのです。
「アレッきゅんってばもうずる賢いんだから~♪ 先生にはとても思いつかないわ~」
「マナ先生はなんだかんだ聖人君子だからね」
ま……自他共に認める雌豹でもあるけど……。
ていうかさ、なんでだろうな、なぜ、いまだに、この人には勝てる気がしないのか……なぜだ……なぜなんだ……。
俺の中に絶対の上下関係ってやつが刻まれてしまっているのか……?




