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35-7 駆け足の各国首脳会議、からの大公閣下とのプライベートタイム 2/2

 ところで場所を移すことになりました。

 昨日報告するつもりが忘れていて、それをこの場でやるには問題が出たんです。


「ところでアレクサント殿、王墓の最深部にたどり着いたそうだな。……で、中はどうだったっ?」

「ああそのことですか。なら皆さんには悪いですけど場所を変えましょう」


 大公家のプライベートにも直結し、国際問題になりかねない超巨大爆弾の話を王墓(あそこ)で聞くはめになりました。

 それは他の誰かの耳に入れるには、あまりに危険がともない過ぎました。

 だからこうして場所を大公家のプライベートエリア、そのテラスに移したのです。


「で、どうだったのだ? 俺も若い頃からあそこが気になっていてな、だがどうも奥までたどり着けん。だからずっと気になっていたのだ」

「大公閣下のヤンチャ時代が目に浮かぶようですよ。しかしね、どうもこうもありませんでしたよ」


 よっぽど興味があるのか、続きを聞かせろと閣下が身を乗り出してきました。

 タイミングが違ったら、マハはいいから俺が行くと言ってたに違いないですこれ。よし落胆させてやりましょう。


「マハカーラの棺は空でした」

「か、空だとっ?! 中を見たということかっ!」


 いや見たどころかお供えものも美味しくいただいて、珍しげなメロン持ち帰っちゃったとか言えないなー。

 あのメロン、ただ食べちゃうのはもったいないし量産とかできないかなー。


「ええ。けどそのマハカーラの亡霊が現れましてね、妙な話を聞かされることになったんですよ」

「し、始祖様に会ったというのかッ?! ならばその話を聞かせてくれ、おおおお興味深い……!」


 俺なんかの言葉、そんなホイホイ信じちゃいけませんよ大公様。嘘つきなんですから。

 けど答え合わせのためにも話してしまうことにしました。

 さて大公様はどこまで事情を知っているんだろう。


「アバロン大公家の役割と、マハカーラ・アバロンが戦争を起こした本当の理由を聞かされました」

「……それは、む、そうか。それを、聞いたか」


 だいぶ詳しく知っているみたいです、彼は返答を迷いました。うかつなことを言うのを避けたのです。

 俺もそれだけ次の言葉を悩んでしまいます。

 余計な一言になったりしないだろうかと、会話を止めて思慮を続けました。


「……迷宮における、大公家の役割を教えて下さい。交換条件です」

「む、それは……それは……それはすまん、答えられんな」


 そこですっとぼけた質問をぶつけました。

 大公閣下が返事を言いよどみます。事実を知っていれば、そのことをおいそれと答えられるものではなかったのです。

 眠れる者を目覚めさせるやつが現れれば、それは国の滅びを招くことと同じなんですから。


「そうでしょうね、じゃあ全部答えます。全ての迷宮には主がいる、その眠れる者と呼ばれる存在が目覚めてしまった場合、ここ大陸中央高地で生まれた者全てが消える。だから大公家はそこへと至る道を封じている、そう聞かされました」

「はぁ……そう来たか、意地悪で人が悪いな貴殿は……。そうか、それを知ってしまったのだな……なかなか厄介な男に知られたものだ、わははっ……どうしたものか」


 ちなみにマハくんはまだ知らないんでしょう。

 漏れては困ることなので、継承のタイミングで伝え聞くようになるはずです。


「こうして素直に答えたんですから、こっちから質問しますね。大公様、変なこと聞くんですけど……迷宮に現れる、話の通じない、電波な女の子について知らないですか?」

「ああ、それは管理者殿のことだな」


 え、管理者なんだアレ……。

 いやまてあれが管理者ってさすがに……人違いを期待したい気分になりました。有り得ない……。


「彼女と大公家は共犯関係だ。管理者殿と我々の利害は一致している。眠れる者を目覚めさせてはならない、という共通見解でな」

「会話まともに通じないけどねー……」


 じゃあマハくんの夢がもし現実にあったことだたっとしたらどうだろう。

 眠れる者、マハカーラ・アバロンが最後にわがままを願った相手。大陸中央高地に生まれた者にとっては、生ける創造主そのものについて。


 目覚めれば世界が消える。だが目覚めさせることなく、彼女の夢そのものに介入出来れば、願いを叶えてくれる神そのものにならないでしょうか。

 ただ……こんなのあまりにリスキー過ぎます。ダメ過ぎます、なにやってんだマハカーラ……。


「話終わりました? そろそろ寂しいんですけど」


 するとそこにエルムエル第1王子がやって来ました。

 寂しいって、そっちにはエリウッドさんがいるじゃないですか。


「おおっ、すまんな、もういいぞ! なかなか興味深い話を聞かせてもらった、頼りにしているぞアレクサント殿っ」

「この件で頼りにされても困りますよ」


 積極的に関わる気はありません。

 オールムがもしこのことを知れば悪用してたかもしれません。だからみんな黙ってたんでしょう。


「アレクサントくん、例の相互防衛同盟の話だけど、ザルツランドに戻ったらぜひ説得してみせよう。先祖が生涯をかけて討とうとした最悪の脅威ですから、そこは期待してくれていいですよ」

「おお頼もしいなっ、はははっアレクサント殿のもくろみ通りになってゆくなっ。各国強調の動きも我が国としては都合が良いっ」


 ところがいきなり真面目な話をしてくれました。

 額面通りに受け取って、利用してやろうっていう俺の良心が……うん、全然何ともない。

 いつかは駆除しなきゃいけないやつなんだから良いんです。

 利用して下さりありがとうございます、って将来言わせたい。


「だってアクアトゥスとの間に子供を作ってくれるんだからね、このくらい何のことはないよ」

「ははは、そういえばそうでしたね~」


 口約束、口約束です。契約はしていない何も問題ありません。

 騙され利用されているとも知らずにのんきな王子様です。


「でも念のため、このことは彼女にも書面にて伝えておきますね、だって双方の合意って大事です」

「え…………」


 しょ、書面……それって、アクアトゥスさんにこの話を……え……?


「重々約束のほどよろしく願いします。ヨトゥンガンド家の連中も、それで全部納得してくれますので。いやぁ楽しみだなぁ……早く子供の顔が見たいです、2人の子なら絶対かわいいに決まってますよ」

「ちょ、ちょ待ったっ、な、なんだってェェェーッッ?!! やめてそれはダメ絶対ダメっ、ってちょっ、あーっ、ど、どちらへ行かれますかエルムエル王子ぃぃーッ?!」


 そんなことしたらダメ、アクアトゥスさんに火がついちゃう!

 せっかく最近おとなしかったのにヤツの末裔ちょっと待てやこらッ!!


「貴方に代わって他国を説得して回ろうかと。相互防衛同盟、良いじゃないですか。……期待していますからね、アレクサントさん」


 あら嬉しい、じゃなくて!

 いろいろまずいんですってこれっ、その約束やっぱ無しにして! よしそうしよう!


「ごめんエルムエル! それさ、それ全部無かったことにしてくんない?! ダメだよそんなの不純異性交遊だよ! キャンセルでお願い、ごめん!!」


 俺の必死の願いにエルムエル王子が振り返りました。

 エルリースのおもかげを残した、そばかすの彼が明るくやさしく微笑みます。ああ、よかった……。


「それはもう今さら無理というものですよ。可能な限り彼女をその気にさせます。各種支援も積極的にいたしますのでどうか、ご覚悟下さい、ご先祖様」

「そんな覚悟出来るわけないよっ無理だよッ!!」


 ザルツ王家のエルムエル王子、なんて罰当たりな末裔でしょうか!

 だからね、それはね、ハチャメチャがやってくるコースなんですってばー!


 もうやだ、コイツ拉致監禁して全部無かったことにしたい……。

 でもそんなことしたら同盟で有事の戦力アップ計画が……ぐぬぬ……。

 おのれ先祖を敬え、俺を大事にしろ、ああああアクアトゥスさんだけは絶対ダメーッッ、イヤァァーッッ!!


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