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35-7 駆け足の各国首脳会議、からの大公閣下とのプライベートタイム 1/2

 翌日やっと俺の出番が来ました。

 各国首脳部を集めた会議場に、俺は外向けのローブ姿で入場しました。

 既にお膳立て状況説明は終わっています。

 壇上へと上がると、俺は超VIP土手カボチャどもを見下ろしました。並み居るその数は40国超えです。


「ご紹介に預かりました、アルブネア男爵の家老アレクサントです。詳しい話はもう通達済みですが、あらためて言葉にさせていただきましょう。エルフの天敵・古なる者の一部個体は――標的を人間に変えました」


 世界的脅威として既にそのことは大陸中に広がっています。

 ただし信じて具体的な行動を示すには、証拠がいくつもいくつも不足していました。

 いえ、証拠の断片ならもう入手していたのです。だからそれを俺はですね……。


「質問がある、本当にそれは実在するのか? 大陸のパワーバランスが守られ続ける限り、ここポロン公国は繁栄を続けるだろう。そのためのでっち上げの産物、という意見も一部では散見されている」


 そこで口をはさまれました。

 白ヒゲ面の厳しい顔したおっさんです。あ、ネームプレートに王って単語が……うん、見なかったことにしとこ。


「古なる者は間違いなく存在するえ。そこはコモンエルフのうちが保証する、なにせ……我らはそれから逃げるためにこの世界に来たからのぅ……存在しないのならば、何のために……という話だぇ~」


 その意地悪おっさんから俺を守ってくれた人がいました。

 この中じゃ大国フレスベル自治州の長キエ様です。

 公式な場だというのに肌を露出させて、座り心地悪そうにイスへと腰掛けていました。

 キエ様といえばゴロゴロしてるイメージです、横になりたいって本音もお姿からちょっと見えちゃいました。


「そこは私どもザルツランドもお言葉ぞえしましょう。なにせ我が国には、その討伐の主戦場になった歴史がございますので……」

「ふむ……だが実在するにして、結果的にポロン公国のもくろみ通りになってしまわないかな? 言葉だけの保証より証拠を見せていただこう」


 さらにはザルツランドのエルエルム様まで助けて下さいました。

 でもね、意地悪おじさんは納得しません。証拠、証拠ね、まあいいでしょう。良い噛ませ犬になってくれていますから。


 ……ところで、コモンエルフについてちょっと気づいたことがあります。

 ここで生まれた者がエルフで、別世界から渡ってきたのがコモンエルフだとキエ様が前に言っていました。

 またマハカーラの遺言によれば、大陸中央高地で生まれた者は全て夢の存在であるそうです。


 つまりそういうこと、キエ様もあのことを知っていた。知っているからこそそういう分類にしていたのです。

 そのキエ様には悪いですが、ここは目的のだしになって貰いましょう。


「はい、そう言われると思って、私アレクサントは――この会場(・・・・)に古なる者の1個体を持ち込みました」


 反論はありませんでした。

 でも反響はありました。首脳陣たちが絶句に凍り付き、ざわざわと不穏に騒ぎだしたのです。


「こちらをご覧下さい。これが……古なる者、まあその成れの果てです」


 目当ての場所に例のものを運んでおきました。

 宮廷の使用人たちにカバーを外させるとさあ、大変、古なる者のご登場です。

 オールオールムの館で出会った、あのクリスタル漬けの機械仕掛けの怪物、アレです、アレを持ち込みました。

 その異形に会場の誰もが凍り付き、その存在の放つ極限なるヤバさ、邪気、異質に恐怖したのでした。


「キエ様、これ、本物ですよね」

「ヒッヒェッ……そ、そんなものをそちッ……そちは正気かぇっ?! ああ本物じゃっ、それはっ、本物のっ、古なる者だぇっ! 証明してやるから! はよっ、はよそのカバーを閉じてッ、今すぐ撤去するぇぇーッ!!」


 あのキエ様が震え上がっていました。そりゃもうエルフ耳の元気を無くすほどに。

 遺伝子レベルの天敵、呪って殺して支配する最悪の怪物、それが悪夢のように再びここに現れたのです。


「すみませんがそうはいきません。さて皆様、この怪物は非常に、非情極まりなく危険です。この封印を解けば、きっとキエ様はこの個体に死の呪いをかけられてしまうでしょう。だいぶ古い時代のものなので、人間は守備範囲外とも思われますが――ええまあ、こうして追いつめられているので、思わぬ気まぐれや悪あがきを起こす可能性もありますね」

「頼むからそれをどかすぇっ! そんな子に育てた覚えはないぇアレク坊やっ!」


 育てられた覚えなんてないけど、演出も十分に出来ましたし使用人にカバーをかけ直してもらいました。

 あとこのままだと話が進まなくなるので裏方への撤去もお願いしてさあ、これで良しです。恐怖に浮き足立つ会場を、どてカボチャの各国首脳部を壇上からニヤリを見下ろします。


「そこで皆様。再び古い同盟を結び直すというのはどうでしょうか。500年前の独立戦争の時のように、みんなで協力してこの脅威うごめく時代を生き抜こうではありませんか」


 実は東のヒルデガルド連邦は出席していません。

 呼んだけど来てくれなかったんです。だからこの言い回しになりました。


「この恐るべき脅威に対抗するには1国では不足、仮に勝利出来ても、国そのものが傾いたという歴史もあります。そこで、この古なる者に対しての相互防衛条約を結び合おうではありませんか」


 これでお仕事完了です。

 後はクリスタル漬け古なる者をアルブネア新領に移送して、美味しく俺の研究材料にする予定でした。



 ・



 ところで相互防衛とは言いましたけど、狙われるのは俺とアインスさんのいる公都以外に考えられません。

 だからあんなの建前でした。

 お前ら、俺たちを全力で守れ。互いの身の安全の為に、そうしておいた方が将来のためだよ。


 って話を焚き付けて、母国に提案を持ち帰らせる作戦だったのです。

 後は出たとこ勝負、加盟国が全体の2割3割でも御の字です。

 それだけの力が冒険者あふれる公国に加われば、より有利にやつらを返り討ちにする事が出来るんですから。


 ところがそこまでは良かったんです。

 かわいい忠犬マハくんに挨拶だけして、楽しい領地にとんぼ返りしようとしたら……。



 ・



「まさかあのまま帰るつもりだったとはなっ! さあ飲め、食え、これは無礼講であるぞ!」


 大公閣下につかまりました……。

 夕方前に歓迎のプライベートパーティを開くので、それまで待機するように。と、大公様からの使者を受けたのです……。

 あと無礼講ってセリフそれ昨日マハくんが言ったし、俺には元から無意味だしお腹いっぱい。


「そうですよ、つれないですよアレクサントさん。私たちは遠い親戚みたいなものじゃないですか」

「その節はお世話になりました。アダルブレヒト家の今は、誇張でも何でもなくなくアレクサント殿のおかげで続いている、何度言ってもたりないが感謝している」


 するとそこにエルムエル王子様までいました。

 さらにはどこかで見覚えのあるお兄さん、かと思ったらあのアダルブレヒト家当主殺人事件で監禁されていた、あの長男さんでした。

 ……でも名前、名前なんだっけこの人。悟られる前に上手く聞き出せないものでしょうか……えーと……。


「大げさですよ、感謝するなら俺に調査を命じた大公様、その話をこっちに持ってきたロドニー近衛兵長にしちゃって下さい。エルムエル、俺はただの流浪の民だから。ザルツ王家とは何の関係もないってば」


 エリウッド? いやそれは弟の方だったような……。

 確かアダル家の管理する鉱山から怪しい団体に横流しがあって、それがバレたから何とかかんとか……。

 結局横流しで鉱石が大量に消えて、その背後にいた連中も正体不明、謎を残して事件が終わったんでしたっけ? せっかくだし続報とか聞いてみましょうか。


「そんなのつれないですよアレクサントさん! もっと仲良くしましょうよ!」

「はっはっはっ、エルムエル王子も彼を気に入られたかっ。アレクサント殿は良いぞ! 女ったらしで金に素直で実にわかりやすいっ!」


 大公様、全然それ誉めてねーし、そんなやつマハ公子と交流させるなだし。

 しかし名前、名前、えーと……ダメだ話を聞きたいのに名前を思いだせん……。


「……あ~~、例のアダルブレヒト家家督乗っ取り騒動ですが、その後なにかわかりましたか? 鉱石のゆくえとか、犯人の背後関係とか……」

「ああ、そのことか……。大公様、彼に話してもよろしいでしょうか?」


 ところが大公様の許可を求められたんだからちょい不穏です。

 お調子者でやや変人な大公様が、珍しく仕事向きの顔をちらっとかいま見せました。


「うむ、ならば俺から話そう。アレクサント殿、どうやら鉱石は東に運ばれたようだ。そして東にある国となると……かつての敵、大国ヒルデガルドと見るのが妥当なのだ」

「そりゃヤバそうですね。じゃあえっと、デル……デル……あ、デルムッド氏、を監禁した兄弟連中、その背後についてはどうでしょう?」


 アルフレッドの母国です。

 悪いんですけど良い印象ありません。

 会議にも来てくれませんでしたし、なんか怪しい気がしてきました。


「実は……デルマリウス義兄さんが脱獄した。その後、姉も弟も毒殺された」

「え、そうだったんですか。それはまた……おかしなことを聞いてしまったようです、すみませんデルムッドさん」


 こっちは不明のままどころか、口封じと脱獄ってオチでした。

 確か怪しい教団に加わっていたんでしたっけ、あのデルマリウスさんとその妻のなんとかさんって。

 ま、どうでもいいや。何とか名前思い出せたし。


「もしかしてそれも例の、古なる者と繋がっているとか、そう考えたりしているんですねアレクサントさん」

「だからなれなれしいってエルムエル、いや何か近いってっ、イスぴったりくっつけないで下さいよっ、そこまで無責任な深読みとかしないしっ」


 エルムエル王子には気に入られてしまったらしい。

 あとニンジンが嫌いなのか、俺の分が倍になっていました。ぶ厚い肉と一緒にありがたくいただきます、もぐもぐ……うーんトレビア~ン。


 飯だけは美味いのでテキトーにVIPたちの相手をしつつ、しばらくの飲食を楽しみました。


定時22:11から遅刻しました申し訳ありません!!

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