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34-7 これからの展望、思い付きの計画

 アルブネア新領に移って1月が経ちました。

 良い節目なので開拓計画について少しまとめます。


 まず開拓そのものの進行は上々飛び越えての大躍進です。

 たった1月で見違えるほど建物と畑が増えていきました。

 皆の努力とスタミナポーション、錬金術で作ったその他生活必需品のたまものです。


 けどいつまでも開拓民に狭い小屋暮らしをさせるわけにもいきません。

 なのでここ最近は住宅の増設に力を入れています。ここには木々が多いので建材にはさして困りませんでした。


 さらにはその場しのぎの水路があちこちの畑に走り、未完成ながらも牧歌的で平和な光景がそこに出来上がっていました。

 この土地は俺たちに攻略されるまで手つかずでした。

 迷宮の魔物が外部を徘徊する、道無き危険ルートだったのです。


 だけれど今はそこに広い道がある。魔物もいない。

 脅威が取り払われた今、このドロポン街道には確実な道路需要がありました。

 まあ一応そこにはアルフレッドの働きも無いこともないのですが。


 この街道がどんなに便利な位置にあっても、近隣領主の持つ道と繋がっていなければ意味がありません。

 その交渉役を果たしたのがアルフレッドです。

 つまり強引に良い話にまとめると、俺たちの力が、領地の飛躍的な成長を促したのです。


 以上、アルブネア領の開拓事情についての解説でした。



 ・



「日に日に往来が賑やかになって、なんか見てるだけで楽しいっスね。自分、今も先輩の魔法にかかってる気分っスよ」


 屋敷近所の高台から町並みを見下ろしてると、どこから現れたのかアシュリーに声をかけられました。

 彼女は頭の左右に両手を回して、猫みたいに気楽な足取りで俺の隣にやって来ます。


「うん、まあまあかな」

「身体張ってがんばった自分らのために、も~ちょっとだけ素直に褒めるっスよ。よくやったアシュリー愛してる……とか言って欲しいっス」


 アシュリーが言う通り、ドロポンの作った往来には冒険者や商人たちの姿がちらほら見えました。

 整備された安全な最短ルートがそこにある。当然と言えば当然の賑わいでした。

 特に公国は東西交通の要所、さらには迷宮群を周囲に抱えています。

 要するに元からバカみたいに交通量が多い国なんです。


「助かった、アシュリー愛してるよ」

「……言わせておいてアレっスけど、違和感の方が勝って鳥肌立ってきたっス……。先輩には愛とか耳カス一欠片分も似合わないっス」


「なら言わせるなよ」

「言ってもらいたかったからしょうがないっス。ふふっ、何だかじわじわいい気分っスぅ♪」


 彼女の自然体な笑顔から目線を外して、また下の往来を見下ろします。

 生後2ヶ月の開拓地とは思えないほど賑わっています。このままだとなんかもったいないです。


「次は売り物かな。……あの通りに店を作らせよう」

「無理っス、こっちはまだまだ畑と住居作りで手いっぱいっスから。それに何を売るつもりなんスか?」


 そこで開拓地の実行部隊にダメ出しされちゃいました。

 もどかしい、もっと人手があればいいのに……。

 でもその人手を維持するために住居と畑が必要になるわけで……ああもどかしい。


「何だろう、とにかくあそこをもっともっと賑やかにしたい。町が生まれたら面白そうだ。そのためには特産品とか、名物がもっと必要だ」

「農作物だけ並べてもパッとしないっスからねー。先輩の作った変な食べ物も、最初は誰も手を付けないに決まってるっス」


 みんな慣れ親しんだものを食べたいに決まってます。

 でも凄いんですよ、特にグミの実。

 お嬢のがんばりが無いと、グニグニした甘い変な食べ物、くらいの価値にしかならなかったと思います。

 きっと北部と西の腹ぺこエルフたちくらいにしかまともに売れなかったでしょう。


「って、どこ行くんスか?」

「ダリルと商売の話してくる。アシュリーも来る?」


 となればそろそろ停滞していたダリルの方を進めよう。

 レアさんの到着によりこれまで抱えていた問題が片付いたのです。……正確にはこれから片付けるとも言います。


「面白そうな気もするっスけど、自分今日は休みっス。……もうちょっとここを見物することにするっスよ」

「そう。……じゃあやっぱり俺も、もうちょっとここに居るかな」


 アシュリーの目が嬉しそうに開拓地を見下ろしていました。

 これを自分たちが作り上げたのだと自慢げな瞳で、少年の心を持つ少女が幸せに微笑むのです。


「なんスかそれ。何か先輩らしくないっスね、どういう心境の変化っスか?」

「うーん……アシュリーと一緒に居たいって思っただけだよ」


「うっ……先輩っ、白々しいセリフで人をからかうんじゃないっス……。ふへぇ……本気にしかけてドキッとさせられたっスよぉ……」


 いつか終わりが訪れるかもしれない。

 オールムのように全てを失う時が。

 そうさせる気はさらさら無いけど、もしかしたらいつかは終わりが来てしまうかもしれない。


「冗談じゃなかったんだけど」

「はいはい……乙女の心をもてあそぶんじゃないっスよ~」


 終わりの幻想に震えるくらいなら、誰も勝てない魔王になってしまえば良い。

 圧倒的な力で終わり全てを退けて、果ての無い喜劇を繰り返そう。

 同じ失敗を繰り返すのはもうごめんだ。俺は魔王になりたい。


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