14-06 1/2 白き幼竜と共に行くカントリーロード
山を越えたことにより晴れてフリスティア連合国側に到着しました。
麓で一晩ゆっくり夜営してから、一変して平地となった田舎街道を東に東に進軍します。
目的地は連合国を束ねる盟主、ハルティアと呼ばれる経済国です。
正直に言えば幼い頃に何度も立ち寄ったことがあるのでよく覚えてますし、なのでちょっと楽しみでもあります。
旅は順調にして順風、この調子なら明日の昼までにたどり着けそうでした。
「あふ……ふぁぁぁ……。なんか良い天気過ぎるし」
「アレクってば緊張感無さ過ぎ、敵がいたらどうするのよ」
「あー大丈夫大丈夫、レウラがいるしー」
のほほほ~~んと平和な田舎道を進んで行きます。
青い空、万緑の野原と淡い木々、あんまり管理されてない土くれの道。
ええ、レンガ舗装ですらない田舎も田舎のド田舎道です。
「そうだけど……あの子って、食べ物に夢中になって見落としそうなところあるじゃない」
「……そう言われると返す言葉もないな。どんなことよりも食い意地を優先するところがなんか……竜っぽくないっていうか……つか帰ってくるたびに重くなってる気が……」
そりゃあんな危険な山道ですから。
それだけこちら側は交易路としての価値もなく、てなわけで旅人どころかまともな宿場町すら見あたりません。
これを田舎と言わずなんと言う。
公都がライトファンタジーの世界なら、このへんは本格ファンタジーって感じです。
素朴で原始的でちょっと暗黒時代に片足突っ込んだ感じの……完全別世界です。
山一つへだてただけでこうなるんだから、うーん異世界異世界としみじみ実感出来ちゃいます。
「太って飛べなくなったりして……。ううん、自分で言っておいてなんだけど、本当に大丈夫かしらあの子……」
「知らん知らん。あんな強欲飛竜、一度デブって思い知れば良い」
「ふふっ、そういうの近親憎悪って言うのよ」
「そんなん違うしー、レア素材だけは全部欲しいだけだしー」
今日も斥候です。
なんでってレウラが便利なのもありますが、ホモ公子――じゃなくてマハくんが入れ込み過ぎてえらいこっちゃなのです。
野営中は同じ天幕で休むことになりますから逃げられません。なので昨日の夜は……。
ああ……ああ眠い……起きたら手繋がれてました。
「キュルルルルルルル~~ッッ♪」
あ、ダンプ先生は本陣の方に下がってます。
昨日の食事がよっぽど良い栄養になったのか、レウラのやつめは今も上空を縦横無尽に飛び回り、姿を消したかと思えばまた重くなって帰ってきます。
で、人の肩にてゲップしやがるんですねぇ……駄竜め。
昨日今日でどんだけ食ったんでしょうコイツ……。
「あれ? アレクあそこ見て」
「ああ、誰かいるね」
まぶたを擦りながら田舎道を進んで行くと、ある木陰に人影を発見しました。
近くに寄ってみれば老いた女性のようで、その木に手をかけてせき込んでいたのでした。
「ごほっごほっ……すみません旅の方……。急に持病の癪が……げほっげほっ……ぶしつけですが背中をさすってはもらえませんか……」
「そう、大丈夫おばあさん?」
お嬢が彼女に歩み寄ろうとしました。
でも俺は後ろからエルフちゃんの肩を両手で抱いて、ちょっと乱暴に引っ込めます。
「ひぁっっ?! ちょっ、い、いいいっ、いきなりどこ触ってるのよぉっ!! 変な鳥肌立ったじゃないっっ!!」
「そりゃごめん、取り合えず待った」
謎の急病人――しかもこんなド田舎でばあさんってば旅装束しています。果たして何者でしょうか。
つか、いかにも古典的というか、騙し討ちのテンプレスタイルというか……。
怪しくねコレ……?
「げほっげほっ……うっ、げほほっっ! …………げほっ」
そのせき込みもなんか嘘くさいです。
どうもチラチラとこちらの様子を盗み見してきています。
それに冷静に全身を観察してみれば……腹の辺りに不自然な膨らみが見つかります。
例えば短剣とか、そのくらいのサイズの何か。
「げほげほげほっっ!! あの……すみませんが背中を……」
「あ、無理」
「ちょっとアレクっ?! ひっひぁぁっ!?」
お嬢がまた近付こうとしたので、しょうがないし抱き抱えて元の場所に戻しました。
子供みたいに軽いなぁ。
「そこをなんとか……げはっげほっ! 助けると思って……げほっげほっげほっうっげほぉっ!!」
「もうアレクっ、苦しそうじゃないっ! ならアンタが助けてあげなさいよっ!」
そう言われても怪しいじゃん。
そもそもなんでそんな病弱なヤツが一人で旅してるし。全部おかしいじゃん。
「ああ……お願いです旅の方……」
「はぁ……。しょうがないなぁ……あーこうですか?」
でもでも絶対怪しいです。
そこで俺は「げしっ!!」っとその老婆の背中を蹴り込みました。
「ヒッヒギャッッ、ワブッ、ホギャァァーッ?!!」
「ちょっちょぉぉぉーっ、ちょっとアレクッ!! 何してんのよ、おバカァッッ!!」
そしたらちょうど倒れ込んだ先が傾斜だったんですね~。
老婆は悲鳴を上げて3mほど下の雑木林に転落して行くのでした。
……ていうかその老婆の衣服がいや~んって感じにはだけました。
その旅装束の下にはなんか……あらまあ素敵な……鎖かたびら。
あとやっぱりあの膨らみは短剣でして、黒塗りの刀身が俺たちの目の前にさらされちゃったのです。
「えっ、この人ってなに……っ」
「さあ……ただの追い剥ぎにも見えないね。もしかしてこの輸送ルートもバレてたのかな」
お嬢はその光景に驚き、しかし賢くも小声を選んでくれました。
白か黒かで言えばもうお嬢の目から見ても黒いようです。その刀身のごとく。
「でもだからって蹴ることないのに……本当に病気のご年輩だったらどうするつもりだったのよ……」
「いやいや、あんな古典的な騙し討ちとかもうフリとしか思えないし。あ、バインド」
そのババァはバインドで拘束しときました。
さ、何も見なかったことにして進軍です。




