⑥、~魔法と成長~
長くなりました。
さて、特訓は何しようか……。
リルが特訓すると言ったが、この体格では武器を持たせるのは難しい。
そうなったらやはり、魔法か。
「グレイ! 何特訓するの?」
リルは特訓するのを待ちきれないようだ。
「じゃあ、リルは魔法の特訓をしようか」
「うん!」
さっそく、魔導書を持ってくる。
そしてリルに見せる。興味深そうに見ている。
「よしリル、こっから……ここまで覚えるんだ」
「たくさんあるんだね」
「これでも少ない方だ、頑張れよ」
リルは覚え始める。
よし、これで俺も特訓出来るな。
俺は壁に掛けていた剣を取り、構える。
まずは魔力を剣に纏う。
そして、鋭くするようにイメージする。
……よし、イイ感じだ。前にある木を切ってみよう。
俺は剣を振る。だが、その時
「グレイー! 覚えたよ!」
「えっ!? もう……?」
「うん!」
イヤ待て、少ないとはいえ、覚える数は100は有ったはずだ。
確かに似たりよったりしてるが、この数分で覚えるのは無理だろう。
「じゃあ、覚えた火の魔法を言ってみてよ」
「えーとね、火よ焼け――《ファイア》でしょ、次に火よ燃やせ――《ファイアボール》で、次に……」
リルのテスト中……
「で、最後に、紅炎よ、槍と成りて貫け――《プロミネンスランス》」
「……た、確かに覚えているな」
ランク6までの火魔法全部言いやがった。
ここまで覚えるのに俺がどれだけかかったと思ってんだ。
嫉妬覚えるレベルだな。
苦笑している俺にリルは、満面の笑顔を向ける。
「凄いでしょ?」
褒めてと言ってるような笑顔だな。
こんな笑顔向けられたら嫉妬とか無くなるな。
むしろ、褒めまくりたい……。
……子供を持った親バカの気持ちを分かった瞬間でした。
いろいろ考えている内に、悲しそうな顔をしたリルが言ってくる。
「……まだ、だめ?」
「いや、リルは凄いな! よく頑張った!」
頭をなでる。気持ち良さそうに目を細めている。
さて、理性が飛ぶ前にやめとこうか。
「じゃあ、次は実際に魔法を使うか」
「うん」
「じゃあ、手を前に出して。そして、手に魔力を集める」
リルは言った通りにする。
「まずは火魔法の《ファイア》から行ってみようか、集めた魔力のイメージを熱い物に変えて」
「……次」
「後は詠唱だけだ、やってみろ」
「うん、……火よ焼け――《ファイア》!」
目の前が久しぶりの火事になった。
「リル、水魔法!」
「う、うん! 水よ流せ――《ウォータ》!」
勿論水浸しとなった。
懐かしい記憶がよみがえってくるよ。
横を見ると唖然としているリルの顔がある。
「くくくっ、リル、顔が凄いぞ」
「ふぇ、あ、うう、グレイ、ごめんなさい!」
「とりあえず落ち着け。後、怒ってないから大丈夫だよ」
「けど、森が……」
「自然の風よ、草木を緑を蘇らせたまえ――《グロウ》」
目の前の焼き野原は森になる。
後、リルの詠唱で気付いたが、一回一回区切らなくても変わんないな……。
魔導書には区切った方が使いやすいと書いていた為、
俺は馬鹿正直に区切っていた。
「ありがと、グレイ!」
「どう致しまして、そろそろ昼飯にするか」
「うん!」
小屋に戻ろうとした時にある事に気づく。
俺の魔力は、制御している。
全力だったけど、《グロウ》の威力が前に使った時と同じぐらいまで上がっていた。
「……俺も結構強くなったんだな」
「どうしたのー?」
「いやなんでもない、いまいく」
昼飯は、黄牛のステーキでした。
昼飯を食べ終わった後は、個々の特訓に入った。
やがて夕方に近づいていく。
「リルどうだ?」
「もうたくさん魔法使えるようになったよ!」
「流石だなリルは」
頭を撫でる。リルもされるのは嬉しそうなので、今後褒める時は撫でよう。
「じゃあ、最後に何か倒しに行くか」
「ほんと!? 何倒すの!?」
「後でのお楽しみ、ついて来い」
俺は少し西に向かう。
お、いたいた。
「あれは、蠍?」
「そうだ、【イエロースコーピオン】、
身体は固く、魔法ですら貫きにくい。
また、尾の針は猛毒だから気を付けろ」
「うん!」
リルは飛びだす。イエロースコーピオンは遅れてリルに気付く。
「紅炎よ、槍と成りて貫け――《プロミネンスランス》!」
ランク6の火魔法。流石、凄まじい威力だ。
イエロースコーピオンは一瞬で灰となる。
「グレイ! 楽勝だよ!」
「だな……っ、気を付けろ!」
俺は、いくつもの殺気を感じた。
それは、イエロースコーピオンの群れだった。
「リル逃げるぞ!」
だけど、もう囲まれていた。
「ちっ、やるしかないな。リル俺から離れるな」
「う、うん」
「風よ、荒れ狂う暴風と成れ――《テンペスト》」
ランク7の風魔法。辺りに風が、いや、嵐が巻き起こる。
10秒ぐらいすると、収まり始める。
完全に収まった時には、辺りは更地だった。
「やはり魔力がかなり上がってる。また、制御しなおすかな」
リルは俺を尊敬の目で見て来る。
「グレイ助けてくれてありがと! ほんと強いんだね!」
「だろ、さて帰るか」
「うん!」
すっかり暗くなった道を俺達は仲良く帰った。
もともと入れる予定がなかった特訓編です。
けど、なんとなく入れてみました。