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プロローグ10

プロローグ最終回

「はあっ………はあっ………はあっ………」


三人は夜の森の中を走っていた。

ただひたすら城に向かって。


ディノが真っ先に城下町に出る。

「はあっ………………はあっ……………誰も………いない………。」


アルバンの城下町は、いつも、いつでも活気づいていて賑やかだったのだが、今はその面影が全く無く辺りは、しん。としていた。


ディノの後ろから走ってくる人の気配。

「はあっはあっはあっはあっ………ディノ早いって……エリーを……置いてきてるって…………。」

ケンが何とかディノに追い付いた。

「悪い。エリーは?」

ディノがケンを見ながら言う。

「…はあ…はあ…………あ、あそこ。」

後ろのエリーを指差す。


エリーは今にも倒れそうなくらいフラフラになりながらこちらに走ってきていた。


「…………ケン。先に城に行ってくれ。この様子だと、城へと続く橋が閉じられている可能性がある。」

「わかった。ま、閉じられていても、俺のお父さんがいれば大丈夫だ。」

「そっか。じゃあ、お願いな。」

「任せとけっ!!」

そう言うとケンは走って行った。

「エリーっ!!もう少しだ。頑張れっ!!」

エリーに向かって大声で叫ぶ。

「………ディ…ディノ。…はあっ………はあっ………はあっ………。」

何とかディノの元までたどり着いた。

「………ご、ごめんなさい………はあっ………わ、私…。」

「それよりも、エリー。まだ走れるか??」

ディノが心配そうに聞く。

「はあっ………はあっ………少し………休ませ………て…。」

エリーは今にもぶっ倒れる寸前まできていた。


それが多分わかったのだろう。ディノは背負っていた刀を全ておろしてエリーに背を向けた。

「今は逃げる事が先だから、休んでいられない。だから、エリーの分は俺が走る。乗って。」


(駄目………そしたら私は………ディノに迷惑かけちゃ………………)


エリーの見ている世界が歪む。


地面が迫って辺りが真っ暗になる。


「………エリー?……!!!大丈夫か!?しっかりしてくれ!!エリー!??エリーィッ!!!」

ディノが必死に叫ぶ。しかし、エリーの耳には届かなかった。


―――――――――――――――――


…………ここは………どこだろう…………あれから………どうなっただろう…………サラが倒れて……………リーアが……叫んで………私は…………気持ち悪くなって…………死体がこっちを見て、死体が死体が死体が死体が死体死体死体死体死体死体死死死死死死死死死死死死!!!!!


「キャアアアアアアアアッ!!!!!」


メリアは絶叫していた。


「…はあっ、はあっ、はあっ、はあっ、はあっ…………。」

胸を押さえて起き上がり辺りを見回す。

と、サラとリーアが横たわっていて、自分は何処かのテントの中で寝かされていた。

「おお。気づいたか。急に悲鳴を上げたからびっくりしたぞ。」

テントの外から声がして、バルハラスが入ってきた。

「お………とう………さん??」

メリアが困惑した目付きでバルハラスを見る。

「おいおい、不安そうに聞くな。間違いなく父さんだよ。」

いつもの調子でメリアに言う。

「ここは何処!?」

「アルバンの城の付近だ。村の人に手伝って貰って三人を運んできた。」

バルハラスがお茶を淹れながら呑気に言う。

「…竜は??村を襲った竜は!?」

「ああ、さっき一匹倒したよ。さあ、これでも飲みなさい。それと、もうしばらく寝ていなさい。」

メリアに淹れ終わったお茶を差し出しながら休むように進める。

「駄目!!竜は二匹いたの!!」

「…!!………メリア。それは本当か!?」

バルハラスの表情が一気に険しくなる。

「私達見たの!!竜が二匹村に向かったのを!!」

「…ちっ!メリア!これを頼む。あとそこの二人も!」

そう言ってバルハラスはお茶を淹れたコップをメリアに強引に手渡すと血相を変えてテントから出ていった。

(もしメリアの言った事が………信じたくは無いが………本当だとしたら………大変だ!!………………しかし、じゃあ何故、見当たらないんだ??…………まさかっ!!)


グオオオオオッ!!


突然、竜の咆哮が森の中から轟く。

「…!!マリアアアアァァァッ!!」


竜の咆哮した先の空で――――――

無惨にも、無情にも――――――

アルバン・ディ・アメリア………レクサード・マリアは――――

糸の切れた人形のように――――



―――――宙を舞っていた



「マリアアアアァァァァッ!!」

バルハラスは叫びながら駆け出していた。

竜が空中に飛ばしたマリアを食おうと口を大きく開ける。

「っ…おおおおおおおっ!!」


ブゥンッ!!


バルハラスが背負っていた剣を竜にめがけてぶん投げる。

投げた剣は一直線に竜の首の辺りに突き刺さる。


グギャアアアアアッ!!


悲鳴のような咆哮をして、よろけた。マリアが、重力の法則に従って落下していく。

「っ…おおおおおおお!!」

バルハラスがマリアの真下にまで走り続ける。

地面まであと数メートル。

バルハラスは滑るようにマリアの真下に着く。

マリアが落下する。

それをバルハラスは受け止めた。

「おいっ!!マリア!!マリアッ!!しっかりしろ!!マリアッ!!」

バルハラスがマリアの顔を軽く叩きながら声をかける。

その時、バルハラスは気づいた。胸から腰にかけて鋭利な刃物の様なもので斬られた後。背中には同じように斬られた後が何ヵ所もあり、右腕が肩からもぎ取られて、口や頭から大量の血が流れていた。

「っ………あ、あな……た………ごめ……な、さ……い。」

マリアが弱々しく喋る。

バルハラスの後ろでは竜が慌てて飛び出し、逃げ出すのを感じる。

「お前らぁぁああああああああっ!!」

憤怒したバルハラスが竜に向かって吠える。

「……あ、……あな……た………。」

マリアがバルハラスの手を強く、強く握る。

「!!なんだ?……マリア?…どうした?」

マリアをとても心配するように顔を見る。

「…最後に……あの子達に……伝えて……欲しい…言葉……ゴホッ!ゴホッ!ゴ…バッ!!」

咳と共に口から血が吹き出る。

「!!……………ああ……なんだ?言ってくれ……。」

「…メリア…あなたには……普通に……生活して欲しかった……だから……必ず……好きな人と……結婚しなさい……。」

「ああ。…伝える…必ず伝える!!約束する!!」

「…ディノ…あなたは………ディーの血を引いてる……から……運命に……負けちゃ駄目……。」

「わかった……伝える!伝えるから!もう喋るなっ!!これ以上無理をすると本当に………。」

「…無理よ…もう……私は……自分の事は自分でわかるもの……死ぬのって………怖いわね………。」

マリアの瞳から涙が零れる。

「そんなこと言うなあッ!!まだ死ぬわけじゃない!!」

(…願望だ。それは俺の願いでしかない………。)

バルハラスは長年の経験から、

既に解っていた。

マリアは、

死ぬと。


「………ごめんね。

…あなた……ディノ………約束………守れなくて。

………それと、


        ありがとう


…………………。」

マリアが一瞬、笑ってから、ゆっくりと瞳を閉じた。

握っていた手から力が無くなり地面に落ちる。

「……マリア……マリア?……マリアッ!!………………うあああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」

一人、バルハラスは闇夜の空に大声で吠えた。



―――――――――――――――――



「………………母さん………??」

ディノが急にふっと夜空を見る。

満天の星が異様に光ってみえ、大きな流れ星が一つ流れた。

ディノは、エリーと刀を背負ったまま城まで走りきった。

城にはケンの父親が勤務していて、ケンが父親に伝えたのだろう。城の裏口から入れて貰えた。

エリーをすぐに医務室に運び込み、手当をお願いしてから、何となく、城の見張り台に登った時だった。

その流れ星がディノを不吉な予感に浸らせた。が、すぐに気のせいだと思い返し、再び空の星に目をやろうとした時だった。

「………………あれ?」

街の中から二人の人がやって来ていた。

一人は大人の男性だろう。背丈が高く、体ががっしりしていそうだった。だが、両肩が少し出っ張っているようだった。

左側には子供と思わしき人物が連れ添うように歩いてくる。

(誰だろう………。)

ディノはジーッと眺めていた。


と、城から一人、向かってくる人達に走って行った。

暗くてよく判らなかったが、多分その人達の知り合いだとディノは思った。

走って行った人が、案内するように城に戻って来る。


(………父さん??)

唐突にそう感じた。暗くて顔も見えないし、確証も何もなかった。だが、何故かそう感じてしまった。

ディノは見張り台からすぐに城の中へと戻り、城の入り口まで駆けていった。


〜城門内側〜


ディノが階段をかけ降りて、入ってきた人達を見た。

今度は城の灯してある蝋燭や松明のおかげで明るく照らされていたため、相手の顔まではっきりと判った。

城に入ってきたのは―――――――

ディノの予想通り、父、レクサード・バルハラスだった。

バルハラスは肩に乗せていたサラとリーアを兵士に渡して、何らかの指示を出しているようだった。

見張り台から見たときに両肩がおかしかったのは二人を肩に乗せていたからだろう。

「父さんッ!!」

ディノが走りながら呼ぶ。

「……!!ディノか??」

バルハラスが気づいてこちらを向いた。

「?………父さん。リーアとサラはどうしたの?」

気絶している二人を見て不思議そうに聞く。

「大丈夫。気絶してるだけだ。竜に襲われていたからな、多分そのせいだろう。」

バルハラスは、無表情で淡々と答える。

「………あれ?メリアは?」

不思議に思ったディノが聞く。

「………あそこだ。」

バルハラスが指を指す先には、メリアが項垂れるように椅子に座っていた。

「…メリア?どうし……」

ディノが近づきながら声をかけたときに、気づいた。


―――泣いてる―――?


メリアがディノを見る。その目には涙が溜まって溢れていた。

「お兄ちゃん………。」

「メリア………お前どうし――――」

がばっ

急にメリアが抱きついてきた。

「メッ、メリア??」

ディノが慌てながら困惑する。

「………怖かった…。」

メリアが小さな声で言う。

「……私、死んじゃうんじゃないかって……そしたらお兄ちゃんやお母さん。お父さんに会えなくなるって思ったら……

怖くて怖くて………そしたら、体が二つに斬られた男の人が飛ばされてきて…訳わかんなくなって………気持ち悪くなって………………お父さんが来てくれなかったら、

私………………私………う…、う…、うあああああああああああああああん!わあああああああああああああん!」

メリアはディノに抱きつきながら嗚咽を繰り返し、ひたすら泣いた。

「…………メリア………。」

ディノが優しくメリアを抱き寄せる。

二人は暫くの間、静かに寄り添っていた。


――――――――――――――――――


「………メリア。落ち着いたか………??」

「…………………うん……。」

「そっか………良かった………………父さん。母さんは?」

ディノがおもむろに聞く。

バルハラスは一瞬、ほんの一瞬だが、とても悲しそうな顔をし、一気に厳格な顔になりディノとメリアに向き合い、ゆっくりと言った。

「………二人とも大事な話がある。人のいない場所に行こう。」


〜見張り台〜


「………………で、話ってなに?父さん。」

ディノが不思議そうな顔をしてバルハラスを見る。

「………ディノ。母さんから刀を預かったか?」

空を見ながらバルハラスが言う。

「え?ああ。うん。ここにあるよ。」

ディノが後ろを指す。


そこには無造作におかれた6本の刀。


バルハラスはそれを確認するとディノとメリアに向かって言った。

「母さんは………

―――――――死んだ―――――――。」



「………えっ………。」

ディノが固まる。

「嘘……。」

メリアが膝から崩れる。

「……嘘だッ!!母さんは言ってた!!『必ず追い付く』って!!死んだなんて嘘だッ!!父さんの嘘つきぃっ!!」

ディノが憤慨してバルハラスにくってかかる。

「………ディノ。メリア。父さんは母さんから遺言を預かった。今から伝える。」

「嫌よ!嫌よ!嫌やぁっ!!聞きたくないっ!!」

メリアが首を横に振りながら両手で耳を塞ぐ。

「聞く必要なんて無い!!母さんは生きているんだ!!絶対にっ!!」

ディノが反発する。

「今から言うから二人とも覚えておいてくれ………

『メリア。あなたには普通に生活して欲しかった。だから必ず、好きな人と結婚しなさい。』

「…お……母…さん……。う、うわあああああああんっ!!」

メリアが泣き崩れる。

構わずバルハラスは続ける。

「…

『ディノ。あなたはディーの血を引いてるから、運命に負けちゃ駄目。』

「………っ!………俺は………俺はあっ!!ちくしょおおおおぉっ!!」

バルハラスが言い終わると同時にディノは走り出していた。

城の階段をかけ降りて、周りの人を押し退け、城から飛び出し、城下町を通りすぎ、森を駆け抜け、村に出た。


崩れてしまって、

壊れてしまって、

無惨になった、

悲惨になった、

生まれ育った村に。


自分の家の前まで走りきって止まった。家の前に盛り上がった土があり、刀が刺してあった。刀の刀身には刀傷が深く文字のように彫られていた。



    『レクサード・マリア

      ここに眠る。』



「………う……ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!

オオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!」

ディノは真っ暗な空に向かって吠えた。


  そして――――――


        誓う。



     「竜を………殺す!!」

最後まで読んで頂き誠にありがとうございます。


なんとか形だけまとめる事が出来ました。

最終回が長いのは作者の力量不足です。申し訳ありません。

次回はそれから何年か後の話です。


それでは…………

    To be continued…


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