第36話「魔族」その一
リーネたちは謎の魔石を回収し、アルヴェリア王国の王城に向かう。
「そういえば、あの魔物は放置で良かったのか?」
「そうだね、別に大丈夫だと思うよ。あの魔物は魔石の魔力を吸い続けたことによる変異だ。腐敗して消えても魔力溜まりが発生するだけで、問題はない」
「魔力溜まりは危険だと思いますが」
「あそこは元より、凄腕冒険者の狩場だ。多少強い魔物が出ても、問題はない」
リーネはそう言い切った。
「そ、そうなのか……」
「それにしても、あの魔石をよく持っていけますわね」
「紐は偉大ってことさ」
やがて王都の王城に着き、王様に会いに行った。
「おぉ、これは」
「アルベルンの森の最奥にあった魔石だよ。おそらく、これが原因」
アルヴェリア・レオンハルト王は、その魔石をじっと見つめた。
「ふむ、魔石に詳しい者に鑑定させよう」
「お願いするよ」
王は近くにいた兵士に指示を出し、魔石を鑑定できる魔道士を呼びに行かせた。
「それにしても、これほど大きな魔石が森にあったとはな……」
「私も驚いたよ。普通なら、ダンジョンや洞窟にあるものだからね」
「うむ。自然に発生したものなのか、それとも何者かが持ち込んだものなのか……」
「そこが気になるところだね。魔物が変異するほどの魔力を持っていたんだ。何か理由があるはずだよ」
リーネは魔石を見つめながら答えた。
「もし誰かが意図的に置いたものだとすれば、何のために?」
「さあね。魔物を強くするためか、それとも別の目的があったのか。今のところは何とも言えないよ」
「ふむ……」
王は腕を組み、難しい顔をした。
「ところで、そちらの弟子たちはどうだ? 森での調査は大変だっただろう」
「はい。魔物の数が奥に進むほど増えていました」
サントリナが答える。
「なるほど。やはり森に何か異変が起きていたのだな」
「でも、師匠が変異種を倒してくれたので大丈夫でした!」
フィアが胸を張って言った。
「ほう、変異種か。それほどの魔物が現れたのか?」
「キラーグリズリーに似た魔物だったよ。大きさも魔力も普通とは違っていたね」
「Aランクの魔物であるキラーグリズリーが変異したとなると……。冒険者たちにも注意を促したほうがよさそうだな」
「そうだね。魔石がなくなったからといって、すぐに森が元通りになるとは限らない。しばらくは様子を見たほうがいいよ」
「分かった。冒険者ギルドにも連絡しておこう」
王は兵士に追加の指示を出した。
「それにしても、リーネ殿は相変わらずだな。これほどの問題を前にしても、落ち着いている」
「慌てても仕方ないからね。分からないことは調べる。それだけだよ」
「ははは、実にリーネ殿らしい答えだ」
そんな話をしていると、部屋の扉が勢いよく開いた。
「陛下! 鑑定が……鑑定が終わりました!」
息を切らした魔道士が、慌てた様子で部屋に駆け込んできた。
「なんだ、慌てるほどのことなのか? まずは息を整えよ」
魔道士は息を整えて答えた。
「あの魔石を鑑定したところ、あれはこの国で生まれたものではありませんでした」
「……」
「ふむ、して、どこからやってきたものか、分かったのか?」
「はい……。魔王領【ヴォルディアス皇国】でしか生成されない魔石です!」
「!! なんだと!?」
王は立ち上がり、声を荒らげた。
「となると、魔族の仕業……」
王は考え込む。
「ねぇ、魔族って?」
「魔族は、悪魔のような角や翼、容姿をしている種族ですわ」
「なぜ、魔族が……」
「魔族と他種族は敵対しているからね。それに、あの皇国と他の国々は冷戦状態とはいえ、国際問題になるね」
リーネが答えた。
「……」
そんな中、一人の家臣が前に出た。
「王よ、一言よろしいでしょうか」
「む? なんだ」
「何者かが、我が国と彼の国を戦争させるため、わざとあの場に置いた可能性はないでしょうか」
王は考えた。
「ふむ、確かにその考えもある。しかし、そう簡単に決めていいことではない。しばらくは会議が必要か……。すまないが、リーネ殿、弟子の皆様、今から会議をする故」
「分かった、私たちは帰るよ」
「すまんな」
「別に、気にすることはない」
そう言い、リーネたちは王城を出た。
「なぁ、そういえば魔王ってなんだ?」
「魔王は、【クラス】の一つですわ」
「そ〜なの〜?」
「はい、実際に存在しますが、魔族にしか発現しません」
「【クラス】『魔王』は『魔女』の派生型ですわ。そして、『魔王』が生まれると、人族側に『騎士』の派生型『勇者』が生まれるのですわ」
「そうなんだな」
「そして、『勇者』は『魔王』と戦う運命にある」
リーネが答える。
「不思議だな」
「ですね」
「そんなことより〜、お腹すいた〜〜、ご飯〜」
ラファールが飛び回る。
「分かったから、飛び回らないでください」
「帰ったらご飯にしようか」
「やった〜〜」




