第二話 盗賊団のリーダー
フェイルが目を覚ますと、そこは薄暗い洞窟の中だった。壁にはろうそくが点々と掛けられていて、辺りを照らしている。
「...っ」
動こうとしたが、体が縄で縛られているようで身動きが取れなかった。
「お、起きたか」
暗がりから姿を現したのは、背の高い30代くらいの男だった。右目に眼帯をしており、頭にバンダナをつけている。
「...アンタは」
男が目の前でしゃがむ。
「俺はここの盗賊団のリーダーさ。名前は、『レノン』。よろしくなフェイル君」
レノンは誘拐犯とは思えない、にこやかな顔で自己紹介をした。
「俺を攫った目的はなんだ?身代金か?」
「いやいや、そんなんじゃないよ。それにしても君、冷静だねぇ。誘拐されたってのに怖がっている様子がない。拷問されるかもとか考えないの?」
「...そりゃ考えるし、痛いのは嫌さ。死にたくないとも薄ら思う。けど、生きたいとも思わない。俺の命がどうなるかは運命に任せるよ」
すると、レノンは床を叩きながら高笑いした。
「はは、そうかそうか。なら、その運命は俺が握るとするよ」
その瞬間、レノンの柔和な雰囲気が一変し、支配者のような荘厳なオーラを出した。
「フェイル。君はこれからは俺の盗賊団、『グリオール』の一員になる。そして、世界を変えるんだ」
「...! グリオール盗賊団、聞いたことがある。各国の貴族を襲ったり、国宝を盗んだりと、国に対して悪さをしている連中だと」
「はは。正解正解。だけど、その行為は本当に悪だったのかな?襲われた貴族が、人身売買をしているようなクズだったとしても?盗んだ国宝が他国から無理やり強奪した物だったとしても?」
「つまり、アンタらは正義の味方だとでもいうのか」
「正義とまでは言わないさ。善悪の区別はしてても、結局人の物や命を奪っていることに変わりはない。所詮は悪党だよ。ただ、悪党を相手取るのは悪党が最適ってわけ」
レノンが立ち上がり、近くに置いてある引き出しを開ける。
「つまり、俺たちは悪党から盗みを働く、悪党専門の盗賊団ってことさ」
レノンはナイフを取り出し、フェイルを縛っていた縄を全て切る。
「さあ、フェイル。今まで引きこもっていたところ申し訳ないけど、今日からは団員として、ビシバシ働いてもらうよ!」
フェイルは身についた汚れを払いながら、立ち上がる。
「殺されてもいいから、従わないって言ったら?」
すると、レノンはキョトンとした顔をした後、耳元で囁いた
「君が大事に想う人々が、亡くなることになる」
横にある盗賊の顔を、睨みつける。
「ウチには変装が得意な奴がいてねぇ。君の代わりに王子として生活してもらう計画なんだ。連絡を秘密裏に取ることも可能。だから、君が慕う執事や使用人、みーんないつでも手が出せちゃうって訳」
「お前ぇ...」
フェイルは拳をギリギリと握り詰める。
「だから言ったろ?俺たちはあくまでも『悪党』だってさ。お前が俺たちに従う限り、こっちも何もしないから安心しなよ」
レノンは背を向けると、手招きをする。
「さ、ついて来て。みんなに自己紹介の時間だ」
フェイルは底知れぬ男に従わされる事に嫌悪感を抱きながら、指示に従った。




