【15】青い鳥は近くにいる。〜妖精王の祝福〜
「実はね……」と言うと、妖精王はロイヤルミルクティーを一口飲んだ。
そして――
ニパッと笑った。
「俺、結婚するのーーー!!
ウェーイ☆☆☆」
妖精王がテンション高く、ウィンクを飛ばす。
「で・さ!
人間で言うところの、バチェラーパーティに憧れてて☆
そんで婚約者を説得して、結婚式の前に地上に遊びに来ちゃった☆
うーん!俺って発想がマジイケてるヨネ☆
ウィッス☆」
再び落ちる静寂――
キョトンとしている妖精王に、最初に話し掛けたのは――
リオだった。
「じゃあ……ビンタされるって……婚約者!?」
ホッとしたようなリオに、妖精王が腕を組んでウンウンと頷く。
「そうそう☆
妖精王って血縁者としか結婚出来ないの!
俺の結婚相手は、人間で言うところの妹!
これがさ……マジ、怖い!!
ヤマンバギャル並み☆☆☆」
すると、ロクシーがすっと立ち上がった。
「もう、いいわ。
あんたには前払いしてもらったし。
契約も終わり!
じゃあね」
そう言うと、スタスタとメインリビングを出て行く。
その後をルチアーノが、大声を上げて追いかける。
「ロ、ロクシー先生!お待ちを……!」
二人がいなくなると、ルシアンが口を開いた。
「妖精王よ。
ならば、あの大木の元に送り届けなくても良いのか?」
妖精王がニパッと笑う。
「ルシアン、サンキュー☆
でも、ここから歩くから平気☆」
アーチーボルトが声を上げる。
「歩く……!?
何十キロもあるぞ!?」
妖精王はアーチーボルトに向かってウィンクした。
「アーチーボルトもマジサンキュ☆
でもさ、俺が来た時、夜の虹が現れたじゃん?
だから、平気だと思うんだよネ☆
俺が、あそこに本気で戻りたいと思えばさ♪
それより――
ルシアンに最後の頼みがあるよねー!」
ルシアンが大天使の戦士の眼で、妖精王を見た。
「……最後の頼みなら、果たしたはずだ」
妖精王がバチンと両手を合わせる。
「それな☆
でも、今度こそ、最後のお願い!
アンジュちゃんと二人きりでお話しさせて〜!!」
ルシアンが口を開こうとした、その瞬間――
アンジュが立ち上がり、宣言する。
「よろしい!
妖精王よ!結婚式の前の祝福である!
話を聞こう!」
そして――
アンジュと妖精王は、プールサイドのビーチパラソルの下のテーブルに二人でいた。
もちろん、窓辺からルシアンが大天使の剣をギラリと光らせ、二人を見守っている。
妖精王がニパッと笑う。
「最後にアンジュちゃんに伝えたくてさ☆」
アンジュが「うむ!」と頷く。
春の始まりのそよ風が、二人の間を吹き抜ける。
妖精王はやさしい目をして、静かに言った。
「アンジュちゃん。
青い鳥は近くにいるよ。
逃しちゃダメダメ☆」
アンジュが小首を傾げる。
「青い鳥……?」
そして、光輝く清らかな笑顔で告げた。
妖精王の存在よりも、もっと――
「そうか!
妖精王よ、助言に礼を言うぞ!」
そうして、窓に向かって振り返る。
「ルシアンよ!」
その一言で、ルシアンは瞬間移動し、アンジュに向かって跪く。
「はい!」
ルシアンの胸は高鳴り、顔色は自然と火山のマグマ色へと変化していく。
アンジュは全く気づかず、鈴の音のような声をプールサイドに響かせた。
「新しい使命だ!
これからは祈りの場にて、青い鳥を探せ!」
ルシアンは胸の鼓動を押し殺し、静かに答える。
「……御意……!」
一方――
ロクシーの部屋でパソコンから、プールサイドの映像を見ているロクシーとルチアーノ。
ロクシーが、じーっとパソコンを見つめて呟く。
「アンジュちゃん……意味分かってないよね???」
すると、ルチアーノが深紅のシルクのハンカチを噛み締めながら、心から感動したように言った。
「……確かに!
ですがこれからルシアンは、祈りの場で青い鳥を探す……最高にロマンティックでありますッ!!
リリカル……ッ!!」
ロクシーの無言の肘鉄が、ルチアーノにクリティカルヒットした。
そうして、玄関まで見送りに来たアンジュ、ルシアン、アーチーボルトとリオ。
そして、アンジュに「行こう!お見送りだ!」と言われてやって来たロクシーとルチアーノに向かって、妖精王がニパッと笑った。
「みんなに幸あれ〜❤️❤️❤️
ばーい☆」
その刹那――
妖精王は、空気に溶けるように消えた――
そして同時に、アンジュは“化身”に変わり、アンジュも大天使ガブリエルとして消えていった。
神の御前に、
天は静まり返っていた。
御座の周りを包むのは、
永遠の光――
沈黙すらも、
聖歌のように響く世界。
その中央で、
大天使ガブリエルがひざまずいていた。
無窮の光の中から、
神は穏やかに告げる。
「ガブリエルよ、よくやった」
ガブリエルは深く頭を垂れ、
純白の翼が光に包まれた。
「ありがたきお言葉……
このガブリエル、
感謝の念に絶えません」
神の御姿が霧のように溶けると、
ガブリエルは
自らの執務室へと戻った。
「神の命、“地上の異変をこの目で見届けよ”――つまり!
妖精王は無事に帰った!
私は聖なる使命を果たせたのだな!
流石は私!
大天使ガブリエル〜♪」
そうしてガブリエルは、いつもと変わらず、
山のような報告書に手を翳した。
地上では――
アンジュの本体、“大天使ガブリエル”が天界に戻ったことを知るのはルシアンのみ。
ルシアンがアンジュの無事の帰還に安堵していると、アーチーボルトが庭から叫んだ。
「た、大変じゃ!!
みんな見てくれ!!」
まず、リオがダッシュでアーチーボルトの元へと駆け付ける。
ルシアンは恩寵で危険がないことを確認していたので、普段通りのペースで歩いて庭へと向かう。
「アーチー!どうしたの!?」
アーチーボルトの庭では、四季折々の花々が一斉に咲き誇っていた。
アーチーボルトが植えていない花までも――
リオがグリーンの瞳を見開く。
「……凄い……!
これは世界に発信すべきじゃない!?
ロクシーに頼んでSNSに上げるとか……!」
すくすく育った大根のようなリオの素直過ぎる発言に、アーチーボルトがフフッと笑う。
「これは……妖精王なりのお礼なのじゃ……。
この別荘にいた時間が、本当に楽しかった。
だから、花をお礼に贈ってくれたのじゃ。
妖精王の花が、ここに咲き乱れておる。
それは我々が、知っていれば良いこと。
分かるな?」
すると、ルチアーノが庭に出て、特大クラッカーを鳴らした。
「凄いぞー!!
アーチーボルト!!
リリカルな感性とは無縁のお前の別荘に、こんな秘密の花園が出来るとは……!
リオ!
写真撮ろうぜ!
あ!ロクシー先生もっ❤️」
ロクシーが窓辺に立ち、「私は後で一人で自撮りする!」と答えて、隣のルシアンに目をやると――
ルシアンはいなかった。
ルシアンは天界に帰り、神から労いの言葉を賜ると、大天使ミカエルの軍勢に入り、そのまま戦いに出た。
戦いが終わると――
息をつく間もなく、ルシアンは今日も聖なる祈りを捧げに、世界各地に赴く。
アンジュとは、妖精王との別れ以来会っていない。
それでもルシアンは、新しいスーツに身を包み、アンジュの命を守り、青い鳥を探しながら祈っていた。
そして、ヴェネツィアにあるルシアンの器のクローゼットの奥には――
まだ、苺の香りが残るタキシードがある。
そしてそれを知る者は――誰もいない。
〜fin〜
ここまでお読み下さり、ありがとうございましたm(_ _)m
これにて物語は完結です。
ここまで読んで下さって本当にありがとうございます!!
どなたかの琴線に触れることが出来たら幸いです。
気軽に感想など頂けると嬉しです。
本当にありがとうございました!
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