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君との絆が奇跡になる  作者: 呂束 翠
異世界人と男の娘とぬいぐるみと。

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第42話 一家に一台家の修理人

「それでそれでっ! その能力ってどのくらい使えるのかなっ!」

「そうですねぇ……損傷具合にもよりますが、こういった大きな破損でしたら月に2回が限界ですね」

 能力の凄さをアピールしたくて大きな破損で説明したのだと思うけれど、ボクが知りたいのはそっちじゃない。

 こういう時に頭の中身を直接伝えるみたいな能力があれば便利なのになぁ。絵を描いて伝えるのも良いけど、少し時間が掛かっちゃうし、思い描いている物を伝える能力とかは日常生活でとても使える能力のはずなのに。

 シオンちゃんから貰った『奇跡』が嫌って訳じゃないけれど、なんかこう、もう少し日常の些細な痒い所に届くみたいなそういう能力も会って良いんじゃないだろうか。

「そうじゃなくてっ! あれだよ。もっと細かい傷とか、汚れとか、そういう小さな破損だとどのくらい使えるの?」

 ボクの追加の説明で理解してくれたのだろう。「あぁ、なるほど!」と言って再び能力の説明を嬉々として始める家の精霊さん。

「そういった些細な物でしたら、毎日家を丸洗いするみたいに綺麗出来ますよ」

「なんですとぉ!」

 あの毎週してた地味に面倒な掃除がなくなるだなんて……しかもその綺麗さが毎日!? どこぞの円形お掃除ロボットよりも遥かに優秀な子じゃないか。

 時代は一家に一台家の精霊さん。どんな小さな汚れでも瞬く間に綺麗に。ついでに壁や床の穴も修復可能!!

 これが商品だったら何億掛かってもおかしくないよ。

「よし、家の精霊さん。毎日それ頼んでもらっても良いかな? 勿論無理ない範囲で良いからさ。お願いっ!」

 上目遣い__は家の精霊さんの高さ的に出来ないけど、手を合わせて小さい子がおねだりするようなポーズでお願いする。

 そんな小さい子の可愛らしいおねだりとは違って、ボクがやるのは男の情欲を煽るような腰を少し落とした、今着ている胸元が緩い服だと上から見たら服の中がちらっと見えるくらいの姿勢にしている。小さい子には真似させちゃいけないやり方だ。

 悪い癖なのは分かってるけれど、信世以外の男には大抵これが効くからついやってしまっている。 

 人間の男じゃないから大して意味ないんじゃないかなとは考えたけれど、ここまでやったらいっそ全部やってしまえの精神だ。

 いつもクラスメイトにしているお願いする時にみたいに少しトーンを上げて媚びた声を出す。

「くっっ……そんな可愛らしくおねだりして……ご主人の頼みであればそのお願い、喜んで引き受けます」

「ありがとっ! 頼りにしてるよ」

 家の精霊さんの口らしき丸の横がじんわりと紅潮する。これは照れてる……? それとも興奮してる……? どちらにせよおねだりが効いてくれたみたいだ。

 ていうか人間じゃなくてもこれって通用するんだ……実行した本人が言う事じゃないと思うけれど、なんかヤダなぁ。

 精霊さんにも__というかシオンちゃんの『奇跡』で創った子達にも、家の精霊さんみたく性欲やそれに類似する概念はあるのだろうか。

 仮にあるのだとしても、ぬいぐるみ達にはそういうのは存在しないで欲しいものだ。

 さてはともあれ、若干時間が掛かってしまったけれど、当初の目的である床の修復は終わった。

 あんな所におっきな穴があったら危ないもん。早めに直せて良かったよ。

 それに、信世の態度からして今日はみんなボクの家でお泊まりになるだろうし、翔流とシオンちゃんの分のお布団出しとかなきゃ。

 お父さんの部屋は入れたくないから、今日はリビングで3人で雑魚寝かなぁ。シオンちゃんは女の子だしボクのベッド使ってもらおっと。

 後は、みんなが帰って来る前にテーブルとリビングの片付けをして。あっ、お風呂も沸かさなきゃ。洗濯物は……まだ2日時間溜めてないし明日の朝でいっか。その時に一緒に信世の分も洗濯しちゃおっと。

「ぬいぐるみのみんな〜。リビングのお片付けお願いね。終わったらボクの部屋もお願い。怪我しないように気を付けてね」

「分かったのだっ!」

 やることを簡単にまとめて、絶対に暇であろうきりるん達に片付けてを指示する。

 言葉は喋らないけど、ぴょんぴょん跳ねたり頷いたらして指示をしっかり理解してるように体で表現してくれるぬいぐるみ達。

 きりるんを先頭にリビングにとてとて歩いて行く。

「それでは、私奴は家中を綺麗にして参ります」

「ちょっと待って」

「如何なされましたか?」

 みんなが忙しそうに片付けを始めたのを見て自分も動かなければといった雰囲気で動き始める家の精霊さん。

 多少の申し訳なさはあるけれど、そのやる気を引き止めてお話をする。

「さっき、大きな破損は月に2回しか直せないって言ってたよね」

「ええ。そうですね」

「それってさ。余裕を持ってやれる回数? それとも、ギリギリまで使ってやれる回数?」

 この子は自分の事を「命が軽い」って言っていた。

 こういう風に自分の事を貶す人って、過剰に無理して相手の期待に応えようとしちゃうタイプが多いんだよね。

 裕太にもそういう気がある。表面では大丈夫とか言いながら自分の出来るギリギリでやろうとする。

 ギリギリでやって、他の人の手を借りようとしないで、ギリギリ自分の力が足らなくて、上手く行かなくて。

 それでも「やれる」と言った手前引くことも出来ない。

 結局自分の考えていた所まで上手く出来ずに自己嫌悪しちゃう。

 そんな本人が苦しそうな事はさせたくない。

「……そういった些細な事はご主人が気にする事ではございませんよ。『奇物』である以上、ご主人の為に全力で働くのは当然ですから」

 少しだけ間を空けて答える彼。

「何か隠してる言い方してる」

 答え方を考えた言い方してる。

「そんな……ご主人に隠し事なんてする訳ないじゃないですか」

 怒られるのかと少し怖がった言い方してる。

 自分のやる事が本当に主人の為なのかと一瞬悩んだ言い方してる。

「無理はしちゃダメだよ」

「そんなことは……しませんよ。何も心配しなくて大丈夫です。そんなに難しい事ではございませんから」

 助ける相手の意思を置いておいて自分が過剰に相手を助けて認められたいと、そういう言い方してる。

 優しさから成ってる行動だけど、それと同時に自己肯定感を埋めようとしている行動をしている。

 頑張ってくれる事自体は嬉しいんだけどね。

「難しいとか簡単とかそういう問題じゃないよ」

 ただのエゴでしかないけれど。

 ボクが大事にしたい事だから、大事にさせたい事だからここは押し通させてもらう。

「君が無理し過ぎちゃうのがダメなの。ご飯だって腹八分が良いって言うでしょ。余裕残してやらないとダメだよ」

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