第20話 馬鹿の扱いは少し酷いくらいが丁度良い
キャラ紹介とか補足とか書きたいんですけど、今の所伏せて置かなきゃいけない情報ばっかで下手に出せないんですよね。
あと、これから梅雨が始まりますね。福岡の気候が悪くなると私の体調とメンタルが死ぬので、福岡の天候がヤバいとかになったら「作者死んでんだろな」と思っててください。
「それで、あれについては何か知ってるか?」
今は増幅するのを止めてもぞもぞ動くだけになったスライムを指差す。
時間稼ぎをお願いされていたから、何かは知っていると思うんだが……。
「え、あれって信世が出したやつじゃないの?」
「あ、ちょ、痛い痛い。そんな蹴らないで」
横腹を勢いよく何度も蹴る。
ほんっとコイツ使えねぇな。
気が済むまで蹴って舌打ちした後にベッドに座る、
それを見て翔流もベッドに座ろうとすると、きりるんに威嚇されて尻尾で押し返される。完全に警戒されているみたいだ。
「みんな俺の扱い酷くない?」
不服そうに言うがこうやってドーナッツを食べさせてやってるだけでも、まだ温情がある方だと思って欲しいものだ。
にしても、どうしたものか。
翔流のせいでスライムから逃げるのが遅れてしまった。逃げるだけならコイツも連れていけるのだが、味方かどうかも分からないこの馬鹿を連れて行くのはあまりにも危険すぎる。
殺そうかと思ったがリビングの戦闘でした攻撃でも死ななかったと言う事は別の方法を探すしかない。
直接『奇跡』で殺せず、高温では死なない。水をまとわせて溺死させようにも、コイツの身体能力強化があれば殺すも攻撃から逃げるも何でも出来る。
反応速度が遅いのが唯一の救いか。それでもあの耐久力があるから弱点と言える程ではない。仮に溺死させれるとしても、溺死するまでの時間でスライムがどう変化するかも分からない。
あまり時間を掛けれない今ではこの馬鹿は仕留めれないということか……。
「とりあえず皆でお菓子でも食おうぜ。丁度3人分用意してあるしよ」
翔流からポンデリングを二つ受け取って紡祇にも一つ渡す。
「きりるんこれ食べる?」
「バウ」
受け取ったポンデリングを半分にちぎってきりるんにも食べさせている。扱いが完全に飼い犬である。
紡祇と一緒にベッドから降りてお茶も頂く。三人横に並んでティータイムだ。
……本当はこんな事している場合ではないのだが、この馬鹿をどうにかしないと何も出来ないから仕方ない。
大人しくお茶とポンデリングを頂きつつゆっくりする。窓から外を見るともう夕焼けが差し込んでいた。
スマホの電源を付けて時間を見る。時間は20時。流石に遅くなってしまった。
連絡も無くこの時間まで家に帰っていないのを心配したのか母から『今日は紡祇ちゃんの家に泊まるの?』と連絡が来ていた。
流石にこの時間まで一切連絡していないのは心配掛けてしまっていたか。このスライムの件もあるから今日は紡祇の家に泊まることにしよう。
紡祇の家に泊まるのと、晩御飯は要らないのを伝えてスマホをポケットになおす。
「きりるんもお茶飲む?」
紡祇がきりるんにお茶も飲ませようとしていたが首を振って断られていた。あの巨体にこのマグカップで飲めって言うのは流石に厳しいぞ……。
ポンデリングを頂きながらスライムの様子を見ているが何も変化はない。
翔流の様子も見てはいるが特に変な行動はしていない。強いていうなら、リビングで戦闘した時よりも洗脳時特有の動きの鈍さが減っていた。洗脳の効果が軽減されたのだろうか。もしくは肉体強化でそこら辺も滑らかに動けるように調整したのだろうか。どちらにせよ警戒するに越したことはない。
「いやぁ、俺の分まで用意してくれてありがとな。信世がそこまで気の回る奴だとは思わなかったよ」
お茶を一杯飲みほしておっさんみたいにプハァとオーバーリアクションしている翔流が変な事を言い始める。
俺はコイツの為にお茶や菓子を用意する程優しくはない。そもそもこれは紡祇が用意したもののはずだろう。
「そうだよね~。信世が翔流の分まで用意してるの珍しいよね」
えらいぞ~と言って俺の頭を撫でる紡祇の手を取って逆に撫で返す。
撫でられるのは嫌いじゃないが翔流が居る前でされるのは少し……恥ずかしい。
「……お前ら、付き合ってんの?」
「付き合ってないよ~。ねっ、信世」
「当たり前だ。友達だぞ」
「友達か……。これで友達か……」
たしかに俺と紡祇はかなり距離感が近いが付き合っている訳じゃない。仲良くなってよく遊ぶようになった時から周りに付き合っているのかと聞かれる事が多くなったが、別に仲の良いだけの友人だ。
紡祇の今の見た目別人だが、元の見た目も男にしてはかなり可愛い。おかげで修学旅行の時は大変だった。
嫌な予感がして別の班だった紡祇を俺の班の男と入れ替えてさせて貰ったのだが、その嫌な予感が的中して俺がお手洗いに行っている間に変な外国人から話し掛けられて困っていたり、連れ去られそうになっていたりと大変だった。
外出時以外にも、風呂や就寝時にクラスメイトの視線が怖かったからずっと一緒に行動していた。
まぁ、一緒に風呂に入ったり一緒に寝たりするのは、紡祇が実家に居る時からよくあったから、クラスメイトの血走った目の男達よりかはかなり冷静でいられたと思う。同性相手でも変な目で見られるのは気分が良くないだろうからな。
そういった事もあって、よくクラスメイトから「付き合っているのか?」と聞かれるようになったが、別に付き合っている訳ではないと毎回訂正している。
そもそも俺と紡祇は男同士だからな。同性愛を否定はしないが俺は紡祇をそういう目で見れない。
「友達にしても、距離近すぎないか?」
「そうだな。それは置いといて、これって紡祇が用意したんじゃないのか?」
「え、信世が用意したんじゃないの?」
「あの……俺の話……」
また、付き合っているのかとか、スキンシップが多すぎるだとかで話が膨らみそうだったので無理やり話を戻す。聞き飽きた話題だ。返すのも面倒になる。
「俺は用意してないぞ」
二人とも俺が用意したみたいに言っているが、さっきまでこの馬鹿と戦闘していたんだ。そういう事する時間がなかった。
だから紡祇が用意したのかと思ったのだが、紡祇も翔流も心当たりがないみたいだ。
あれ……それじゃあ。
「誰もやってないなら、これ用意したの誰だ?」




