第14話 翔流の『奇跡』
キャラ紹介。一人目。信世くん。
名前:深森 信世
性別:男
年齢:16歳
誕生日:4月8日
信世のし(4)とや(8)から
身長:170㎝
体重:60㎏
能力:絶対王政(名前は仮)
物や人を言った通りに動かすことが出来る。
複数の命令を同時に使うことも出来る。細かい命令を言うとその通り動かせれる。
その他未公開の詳細設定etc
・能進高校一年三組。
・艶縫 紡祇の友達。
・紡祇も一年三組である。ちなみに天馬 翔流と綺羅星 瑠璃凜も一年三組。現在音信不通の田中裕太は別クラス。
元々は紡祇くんと一緒にふわふわイチャイチャするキャラの予定で、紡祇くんが危険な時にはすぐに助けに来る決める時はビシっと決める白馬の王子様的なキャラでした。
キャラ設定作った初めの時は紡祇くん目線メインで進む予定でしたが、バトル要素入れようとすると紡祇くんが大変可哀そうな事になるので、信世くんに全て被ってもらう事になりました。
おかげで、最初はとても心優しいふわふわしたキャラだったはずの信世くんはノンデリで紡祇くん関連特化のハイスペックになりました。
眠い時に信世くんの名前打つと「死にゃ」くんになるの名前不穏過ぎて笑っちゃうんですよね。
それでは、本編どうぞ
「翔流。何かされたな?」
「開口一番それかよ」
侵略者は紡祇の部屋から出られないのに、翔流をぬいぐるみ一つ付けずに外に出している。外傷は特になく、髪形が崩れていて服が汗で湿っている。状況から考えて翔流が何かされたのは明白だ。
特に気になるのが、俺がリビングに入った時にした脚を組みなおす動作だ。妙に動きがぎこちなかった。痛みで動きが鈍いとかではない。一つ一つの動作がゆっくり過ぎる。
綺羅星の操り人形になっていた男達にみたいな愚鈍さだ。あいつら程ではないが全ての動作が遅い。
綺羅星みたいな『奇跡』の影響を受けている可能性が高い。向こう側にも何か隠し玉があるみたいだ。
それも恐らくだが精神干渉するタイプのもので、いくつか準備が必要なのだろう。すぐに使えるものなら既に俺に仕掛けているはずだ。
「まぁ、皆で座ってお話でもしようや。俺、飲み物取ってくるよ」
立ち上がろうとした時、翔流の動作が自然な動きになった。
不自然に自然な動きだった。
嫌な予感がする。
目の前に突っ立っている邪魔な男を前に蹴飛ばして障害物を消し、翔流に向かって『奇跡』を使う。
「『動くな』」
「ちょっ!!」
本格的に動き始める前に翔流の動きを止めたが、やはり『奇跡』持ちのせいなのか効きが悪い。ゆっくりとだが立ち上がろうとしている。
ゆっくりと、徐々にその動作が早くなって元の速度に戻ろうとしている。
マズイ。もう効き目が切れ始めている。綺羅星よりも早い。
「『動くな』『止まれ』」
綺羅星にしたように『奇跡』を重複して掛け直してみるが、翔流の動きは一向に止まる気配を見せない。むしろ早くなっている。
行動が早くなるのと同時に翔流の髪が紅く染まっていく。
まだゆっくり動いている程度だが間違いなく動きが早くなっている。これが翔流の『奇跡』か。
何か使える物は無いのか。この男達は愚鈍過ぎて壁程度にしか使えない。何かアイツの動きを止める、せめて足を止めさせればどうにかなるんだが……。
そういや、今日の翔流の服装は半袖のTシャツとスキニーだな。ワイシャツのようにボタンを開ければすぐ脱げる物じゃない。
もしもだが、服がその場で留まればそれを着ている人間はどうなるんだろうな。
……服は『奇跡』持ちの人間の判定にならないよな?
「『服だけ空中で止まれ」
服に限定して『奇跡』を使う。
椅子から立ち上がって俺の方へ走り出そうとしていた翔流は、宙に止まった服に引っかかって動けなくなっていた。
本人に直接使えないなら周りの物を使えば良い。命に関わるので『捻じれ』だとか『潰れろ』とかは言えなかったが、これならどうにかなるだろう。
しばらく宙に浮かんだままどうにか拘束を解こうともがいていたが、どうしようもないと察したのか呆れた顔して俺に話しかけてきた。
「お前の『奇跡』中々チートじゃないか?」
「俺もそう思う」
言った事をそのまま実行させるこの『奇跡』は相当イカれた能力なのは自覚している。『奇跡』持ち本人には効き目が薄く、細かい動作が出来ないのは微妙な所だが、それでも十分強い。
綺羅星のように相手を操り人形のように仕立て上げられて、その上ある程度自立した動きをさせられるのも十分強力だが、如何せん使い勝手が悪そうだ。
丁度『奇跡』について話が上がったので、気になる事を聞いておこう。コイツはどんな『奇跡』を使うんだろうな。
俺、綺羅星、侵略者の女の三人とも全員が何らかを「操る」能力なのは判明している。
俺は「言葉通りに操る」
綺羅星は「好感度を操る」
侵略者の女は「ぬいぐるみを操る」
翔流の場合はどうだろうか。恐らく『奇跡』を使ったであろうタイミングは俺に『奇跡』で動きを止められたはずなのに、むしろ加速していた時だろう。
候補としては、デバフを逆の効果にする。「なんちゃらを操る」で統一するなら「不調を操る」とかになるだろうか。
もしくは、俺が動きを止める効果を超える速度で動けるようにするとか。この場合は「速度を操る」だったり「自分の体を操る」とかになりそうだ。
とにもかくにも、詳細は本人から聞き出してしまえば良い。効果を知らないまま綺羅星に渡して大惨事になったら大変だ。しかも、推定だが翔流は侵略者の女から綺羅星のような洗脳や好感度調整に似たなんらかの能力を受けている。
周りで突っ立っている男達と同じように、アイツの動きが鈍かったのはそれが原因だろう。
綺羅星に渡す前にそこらへんは明確にしておかなければいけない。
男達に指示を出して念のため翔流の両腕両足を掴んでもらう。
むさくるしい光景だ。写真撮っとこっと。
「これで制圧したつもりかよ」
憎たらしそうな目で俺を見てくるが、それに返事している暇は無い。
早速コイツの『奇跡』について教えてもらおう。それと、コイツが侵略者の女に何されたのかも全て。
「お前と雑談するつもりはない。『お前の能力とあの女にされた事全て簡潔に話せ』」
「いいぜ。教えてやるよ」
ハキハキ話す野郎だ。しっかり話そうとするその姿勢は大変ありがたいな。
だが、今そんな反応されるのはあんまり良くない。
俺の『奇跡』で命令された人間は命令された事を行っている時は表情が無くなり、目が死んだ状態になる。そして、命令された事が終わるとしばらくの間は次の命令が来るのを待つ状態になる。
単純な命令だけならそれで充分なのだが、ある程度自立した行動してもらいたいので、綺羅星や連れてきた男達には、綺羅星の『奇跡』で俺の為にある程度察して動くようにしてもらっている。だから、アイツらは目が死んでいないし、自分の意思で多少は行動するようになっている。
だから目が死んでいる状態は俺の『奇跡』が通じている証でもあるのだが……翔流は目が死んでいない。
コイツに俺の『奇跡』が通じていないという事だ。
「『嘘をつくな』」
「『奇跡』を使わなくても教えてやるって。焦るなよ」
俺の命令に従順になっている様子は一切ない。耐性付けやがったな。
「そんな怖い顔するなよ。美形の怒った顔は怖いんだぜ?」
「誰が美形だ。話を逸らしてないで教えろ」
「へいへい。せっかちだな。教えてやるから座りな」
舌打ちして冷蔵庫から麦茶の入ったポットと一人分のコップを出して床に座る。
「え、俺のは?」
「さっさと話せ。話し終わったら飲ませてやる」
キンキンに冷えた麦茶を一杯飲み一気に干して床に置く。一方翔流は、汗だくのまま汗だくの男達に四人がかりで四肢を掴まれている。見ているだけで大変暑苦しい。
「じゃあ、お望み通り簡潔に話してやるよ」
「三行で話してくれ」
「無茶言うな」
そのくらい簡潔に話してもらいたい所ではあるけども。
「じゃあ、鍵括弧三セットで話せ。色々と詰まってんだ」
「一言で言いきれと!?」
「一セットで言えと言ってないだけマシだろ。ほらさっさと話せ。いくぞー。さーん、にー、いーち」
「ああもう分かった分かったよ。なるべく短く話すよ」
あ、ここはカウントするなよ。と言ってなるべく短く、簡潔に話し始める。
「俺の『奇跡』は肉体強化だ。お前みたいな他人を操るとか、シオンさんみたいにぬいぐるみを操って、しかも能力を付与するみたいな他人や他の物体に影響を及ぼす類じゃない。
あ、待て待て。お前は喋るな。鍵括弧が分割しちまうだろ。シオンさんについてだろ?あれだよ。紡祇を乗っ取ってる人だよ。お前が来る前に色々話してたんだ。それで、色々あって……。いや、その色々が知りたいって言われても色々あったんだよ。深堀りすんなよ。他人に言えるような事じゃないんだからさ。まぁ、色々あって俺はシオンさんに惚れた訳よ」
それと、喉渇いたからお茶飲ませてくれないか?とかほざいたので、仕方なく一杯注いでこれ見よがしに目の前で一気飲みする。
紡祇の体を別人の体にして乗っ取った奴と大変楽しいことをしていたであろう奴に飲ませる物は無い。唾液でも飲んどけ。
しかしだ。あの侵略者の名前はシオンって言うのか。ぬいぐるみを操る『奇跡』ってのは予想通りだが、能力の付与も出来るのか……。まぁ確かに、小鳥のぬいぐるみが爆速で突っ込んできたり、きりるんが狼になったりしていたから間違ってはいないのだろう。そのシオンさんとやらに嘘の情報を伝えられていなかったらの話になるがな。
「それで、お前はそのシオンさんとやらと大変楽しい事して惚れ込んで、惚れた弱みに俺を殺しに来たって感じか?」
一応友達やっている身の上だから手加減していたが、惚れた女(体は男だが)の為に殺そうとしてくる奴には手加減なんて必要ないのではないだろうか。
……今からでも捻じ切ってやろうかな。
俺の不穏な気配を感じ取ったのか、翔流が焦って訂正する。
「そんな怖い顔するなよ……。別に俺はお前を殺そうだなんて思ってないし、シオンさんからそんな事頼まれてない。俺が頼まれたのは足止めだけだよ。お前が来てからざっと30分程時間稼いで欲しいんだとさ」
「30分か」
壁掛け時計を見てみると、来た時にスマホで見た時間と比べて10分経過していた。
残り15分。何を企んでいるか分からないが、時間がない。
「説明ご苦労。鍵括弧ワンセット残っているがもう必要ない。『翔流を捕まえたまま絶対に動くな』」
翔流の横を通り過ぎて紡祇の部屋に向かう。今度は翔流本人にでも、翔流の服にでもなくて翔流を捕まえている男達に『奇跡』を使う。どこまでの強度になるかは分からないが、相当な硬さにはなるだろう。俺が紡祇の部屋に行くくらいの時間は稼げるはずだ。
「おいおい。まだ肝心な事伝えてねぇぞ」
負け犬の遠吠えというやつだ。自分から時間稼ぎしている事をバラす馬鹿に構っている暇は無い。
それとも、バラしても問題無い事だろうか。念のため、壁掛け時計に細工された場合を考えてスマホを見る。
時間は壁掛け時計と同じ時間を指していた。
なんだ。何もされてないのかと安心してリビングを出ようと扉に手を掛ける。
「なんだこれ。開かない」
「俺を踏んづけてた狼覚えてるか?アイツが外で防いでんだよ」
扉の隙間から外を見てみると、廊下は銀色のもふもふで一杯だった。
後ろで翔流を拘束していたはずの男達は、手足を掴んだ時のポーズのまま床に転がっている。ついでに真っ二つに裂けたスキニーとシャツが宙に浮いていた。
服や男達の拘束を解いて下着姿になった翔流はキンキンに冷えた麦茶を一気飲みして頭を痛めている。
悠長な態度で飲み物を飲んでいる奴の面を見て腸が煮えくり返る。腸を引きずり出してやりたい。拘束だけで済ますんじゃなかった。動けないように致命傷を負わせるべきだった。
「なぁ。ふざけんのも大概にしろよ」
惚れた女の為にやっていると言えば聞こえは良いが、やっていることは友人を殺そうとしている女の為に動いている犯罪の助長でしかない。
「お前がやってる事分かってんのか?お前がやってる事は人殺しの手助けだぞ。友達を殺そうとした奴の手助けだ」
「ああ。分かってるさ」
……いや、これは、俺のこれは本音じゃないな。ただの建前だ。
本当に怒っているのはこれじゃない。
本当に、一番に考えているのは俺が死ぬかも知れないなんて事じゃない。
紡祇の体がずっと他人にされるがままなのが許せないんだ。
紡祇は紡祇の意思で紡祇のやりたい事をするべきだ。
だから、紡祇の意識が知らない女に奪われて友人に色仕掛けかなんだか知らないが勝手な事されて、今も何かされているのが許せないんだ。
それを邪魔するコイツが許せない。
こんな馬鹿を俺は許せない。
こんな馬鹿は友人じゃない。
「馬鹿は死ななきゃ分かねぇって言うよな」
「そうだな。死ななきゃ分かんねぇな」
友人じゃないなら生かしておく理由はない。
確実にここで葬る。
「テメェはここで死ね!」
「いいぜ!15分間経ったらな!」
コイツはもう友人じゃない。敵だ。