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必殺の黒い炎、だが燃えたのは嫉妬の炎

挿絵(By みてみん)





急に隣に現れた夢魔に驚いた咲耶だったが、未だ鎧武者に

圧倒される瑠璃と妖狐を見て鎧武者を倒す方が先だと

龍牙を構えて夢魔に隣に並ぶ。


それに合わせるように夢魔が右腕を引くように

構えると、その手のひらに黒い炎が現れる。



「夢魔さん?」


「さんはいらん」


「えっと・・・それじゃ夢魔、何故ここにいるのかは今は聞かないわ。

 今はアレをなんとかする事を優先しましょう」



こうして話して間にも瑠璃を超えるスピードで襲いかかる

鎧武者の攻撃を避けきれず、二人のHPが徐々に削られていく。


瑠璃も妖狐も装備の見た目のとおり耐久力は低く、

わずかにかすっただけでもダメージは少なくないのだ。


しかも瑠璃は攻撃を捌くので精一杯であり、

その隙をついて攻撃する妖狐もなぜかダメージを

与えられず、逆に妖狐のHPが減っていた。



「アレも酒呑童子と同じようなイベントボスか何かで、

 特殊な方法じゃないと倒せないのかしら?」


「違うな、奴の胴を見てみろ」



夢魔に言われるままに咲耶が鎧武者の胴を見てみると、

そこには怪しげに光る1枚の御札のようなものが貼られていた。


それがなんなのだろうかと思った咲耶だが、妖狐の攻撃が

鎧武者に触れた瞬間、御札の光が一瞬だけ強くなって

妖狐にダメージを返したのに気づいて夢魔を見る。



「あの札が奴を強化しているのだろう。

 俺が知っているモノと同じならば、おそらく物理反射と

 攻撃のスピード及び範囲強化だろうな」


「それはまた・・・私たちのPTの弱点そのものね」


「そこいらに転がっている櫻花楼閣の奴らも

 あの札を対処できずにやられたのだろう。

 魔法攻撃で無力化しない限りは奴に物理攻撃が

 通ることはないからな」



無様な奴らだと夢魔が呟くと死屍累々の中から

汗のモーションが見えた、おそらく図星なのだろう。



「もっとも魔法を使えるものが櫻花楼閣にいたところで、

 あのスピードで動く鎧武者に当てられるとは思えんが」



ふん、と鼻を鳴らして夢魔は手に出現させた黒い炎を操り、

手のひらサイズの火球へと変化させるとそれをより一層

強力に放つため、投擲スキルのモーションに入る。


それに合わせて咲耶もいつでも斬りかかる準備に入り、

火球が放たれると同時に鎧武者へと疾走する。


自信満々で放たれた火球は咲耶の走るスピードよりも

遥かに速い速度で鎧武者へと向かい、その胴体に

直撃して貼られている御札を燃やし尽くす。


―――と思っていた咲耶だったが、想定外の事態に

一度後ろに大きく跳んで体制を立て直す。


なんと夢魔の放った魔法に気づかずに飛び出した妖狐の

背中に、その火球が直撃してしまったのだ。



「~~~~!?!?」



ゲームなので痛みはないのだろうが、急に自分が

炎上したことで声にならない悲鳴をあげながら

ゴロゴロと転がって火を消そうとする妖狐。


それを見てようやく夢魔がいることに気づいた瑠璃は、

妖狐が火達磨になっている原因に思い当たったのか

夢魔へと向かおうとするが、再び鎧武者によって

その動きを封じられる。



「ちょ・・・夢魔!妖狐に当たっちゃったじゃない!」


「奴が飛び出してきたのが悪い。

 それに貴様は一つ勘違いをしているようだな」



やっと火が消えたのか涙目で座り込んでいる妖狐に

回復アイテムを使いながら咲耶が夢魔に文句を言うが、

それに対して夢魔は堂々と応える。



「櫻花楼閣に魔法を当てられる奴はいないだろうと

 言ったが、俺自身も奴に魔法を当てられる自信など―ない!」


「威張っていうことじゃないでしょ!!」



咲耶が思わず龍牙に手をかけそうになるが、

妖狐が目を丸くして何かを見ている事に気付き、

どうしたのだろうかと手を止めた瞬間。



キィンと甲高い音が響き、その音から少し遅れて

夢魔の首が宙を舞っていた。








「(あぁもう・・・面倒ですねぇ)」



いくら突き放しても一瞬で距離を詰められて思うように動けず、

瑠璃が作りだした隙をついての妖狐の一撃もダメージが

通った様子はない。


その現状がより一層、瑠璃を苛立たせていた。


さてどうしたものかと考えていると、マップに表示されている

PTメンバーの位置を示す咲耶のカーソルアイコンが

移動しているのが目に入る。


なにか良い案でも浮かんだのかとそちらに目を向けようと

した瞬間、いきなりボスの前にでた妖狐が炎上したので

驚いて原因となった火球が飛んできた方向を見た。


すると、そこにはなにやら夢魔に向かって文句を

言っている咲耶が・・・夢魔?


そこで瑠璃はようやく夢魔がいる事に気づくと同時に

プチンと頭の中で何かが切れるのを感じた。



「(そうですかぁ・・・妖狐を燃やしてくれたのはあのクズですかぁ。

  しかも人が必死に戦っているというのに咲耶も私の活躍を

  見ないで夢魔とお話してたんですねぇ・・・)」



色々と勘違いしている瑠璃だが、先程までの苛立ちが

限界に達してキレてしまっている為に冷静な判断が

できずに身体をゆらりと揺らす。


そんな瑠璃の様子を好機と思ったのか、鎧武者が大きく

手にしている刀を振り上げる。


それに気づいた瑠璃だが、冷めた目でそれを一見して呟く。



「だからぁ・・・邪魔なんですよぉ」



鎧武者が刀を振り回すよりも先に瑠璃は体を半回転させ、

今までにない速度で弧を描くように白百合を鎧武者へと

叩きつける。


するとどうしたことか、今まで妖狐の攻撃を一切

受け付けなかった鎧武者は右肩から左脇腹へと一閃のもとに

切り捨てられ、次の瞬間にはそのまま夢魔の首をはねていた。










「だから違うのよ、瑠璃」


「どうせ私なんて私なんて・・・」



ボスを倒してから数分後、防具の修理に行くという妖狐と

別れた瑠璃と咲耶は自分たちのホームへと帰ってきていた。


もちろん夢魔の死体はそのまま放置である。


結局あの鎧武者は隠し部屋の外にいた雑魚と同じモンスターで、

御札によって強化されているだけのトラップだった為、

あれだけ苦労したのにアイテムドロップの一つもなかったのだ。


それに落ち込んだ瑠璃を励まそうとした咲耶だが、

先ほどの勘違いが尾を引いた状態のままずるずると

話が進んで現状に至るのである。



「別に私と夢魔は楽しく話をしていたわけじゃないのよ」


「じゃあ私が鎧武者を倒したところは見てましたかぁ?」


「そ、それは・・・」



涙目で見上げるように咲耶の目を見ながら瑠璃がそう言うと、

実際にその場面を見てなかった咲耶は気まずそうに目を逸らす。


それを見た瑠璃は泣き喚きながらごろごろと

ホームの中を転がっていく。


どうやらあの御札の効果は物理反射ではなく、一定値以下の

物理ダメージの反射だったらしく瑠璃の渾身の一撃の元に

粉砕されたのだが、今はそんな話をしている場合ではない。


さてどうしたものかと咲耶は瑠璃を見ながら考える。


瑠璃がこうしてぐずるのは初めてのことではないが、ここまで

長々とぐずるのは珍しいことなので対処が思いつかないのだ。


すると、咲耶の近くまで転がってきた瑠璃の動きが突然

ピタリと止まったので、ようやく落ち着いてくれたのかと

咲耶がしゃがんで瑠璃にそっと声をかける。


「瑠璃、落ち着いた?」


返事がないので軽く肩を揺すってみた咲耶だが、何も反応はない。


どうしたのだろうかと瑠璃の顔を覗き込もうとした

次の瞬間―咲耶は瑠璃に押し倒され、唇を重ねられていた。


ガラスのハートを持つヤンデレに嫉妬させるとどうなるか

咲耶は身をもって味うがいいと思うよ。

感覚のないネトゲでキスってどうなんだろうね?

美女と美少女なら見てる側は最高だと思うよ!

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