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第89話 俺の名を言ってみろ?


「話は聞かせてもらった、でヤンス!」



 再び勢いのあるテンションで突入してきたヤツがいた。タニシである。ヤツは特別に出入りを許可されている人物だ。今は初顔合わせということでちょっとした打ち合わせをやろうということになっていたのである。



「話って大した話はしてないが? 名前の決定とか」


「なんとなくやってみたかっただけでヤンス!」



 姿を見てみれば服装がいつの間にか替わっており、ビシッとした正装みたいな服を着ている。しかし目を引くのは黒い眼鏡だ。アレって前は見えるんだろうか?



「犬の人がPなの? 経験あるの? 大丈夫?」


「Pの経験はないでヤンスが一回やってみたかったんでヤンス。こう見えても、聖歌隊の大ファンなんでヤンスよ!」


「ああ、そう。ファンだったんだ? なんか私のことも知ってたみたいだし、エニッコスファンでもあるから気は合いそうね。ヨロシク!」



 アイツ、そんな趣味があったのか? 今までそんな話すら聞いたことなかった。でも俺が聖歌隊を全く知らなかったから、話を振ってくれなかっただけかもしれない。女の子好きならそういう事をしていてもおかしくはないだろう。



「ところで“P”って何?」


「……は? アンタ、そんなことも知らないの? よくまあ、そんなことも知らずに聖歌隊に入ろうなんて思ったな?」


「いや、だって無理矢理女の子にされてしまったから……。」


「言い訳すんなぁ! しかも、臭い! よって制裁を下す! 歯ぁ食いしばれ!」


(パーン!!!)


「ぎゃあああ!?」



 有無を言わさずいきなり殴られた! いきなり鉄拳制裁を食らってしまった! しかも超絶理不尽な理由で。というかこうなったのも、俺に何の落ち度もなかったはずなんだが。ちょっとニンニク臭かったからというのもあるが……。



「では後学として、お前に聖歌隊の“3P”というのを教えてやろうじゃないか!」


「は、はい。オナシャス!」


「では一つ目! これはプロデューサーの事を指す! ここにいる犬の人もとい犬Pがそれだ! ユニットの基本的な行動方針、公演内容の構成を担当する裏方、いや軍師と言ってもいい存在だ。」


「は、はあ。」


「あっしは天才軍師でヤンス! 『ムッ、いかん、コレは○○の罠だ!』とか言う立場を経験してみたかったでヤンス!」



 軍師的な存在か。てっきりユニットのメンバーは聖歌隊のみで構成されてるのかと思ったら、それを支える裏方がいるんだな。それが一般冒険者との違いか。しかしタニシよ、そのセリフを言うタイミングはハメられてオワコンが確定したときではないのか。つまり手遅れである。ダメだコイツ、早くなんとかしないと!



「二つ目はプロモーション! 聖歌隊の活動は信者のみんなからの支援によって成り立っている! それは信者の要望に合わせて支援意欲を促進しなければならないのだ! 決して自己満足だけでは課金…いや支援が得られないのである!」


「あの……本音が漏れ出てますけど……?」


「ちょっと噛んだだけだぁ! 些細なことで叩くんじゃない! 炎上させるつもりか!」



 要するに商売でもあるから、金を落としてもらうために満足度の高いパフォーマンスも要求されるのだろう。その辺は大道芸人や俺の国で言うところの雑技団的な側面もあるわけだ。芸事をやりつつ、冒険者としても活動する。それは結構しんどい活動なのではないだろうか? だからこそ裏方が必要なんだろうな。



「さあ、次は最後の三つ目だが、ここは一つ、趣向を変えるとしよう。」


「どうするんすか?」


「三つ目は何か、それをお前が考えて答えてみろ! わかるよな? ここまで学習してきた成果を見せてみろ!」


「えぇ!? 無理っすよ! 答えなんかわかんないっすよ!」


「甘えるなぁ!」


(パーン!!!)


「ひでぶっ!?」



 また理不尽な理由で鉄拳制裁を食らってしまった。なんでや! わかるわけないやん! 聖歌隊の後輩いじめってこんな過酷なの? 男だらけの梁山泊も結構ヒドかったのに、女子の集団のここでもでもこんな仕打ちを受ける羽目になるの? どこに行っても地獄だ……。



「で? 答えは?」


「ええ? どうしても答えないといけないっすか? じゃあ……三つ目のPはプリメーラのPです!」


「ほう? 良くわかってるじゃないか。」


「は、はは! 正解っすか?」


「あははははははっ!!」


「へ、へへへへへへっ!!」


「ワハハハッハァツ!!」



 メイちゃん以外、全員揃って笑い始めた。な、なんだ大正解だったようだ! やっぱそうよね! こういう時は先輩をヨイショしないことにははじま……、



(パーーーン!!!!)


「あべしっ!?」


「んなわけあるかぁ!! このボケが! 三つ目のPはプレースのPだ! 要するに場所だ! いいパフォーマンスをしてもたくさんの人に見てもらえなきゃ意味がない! 人を効率的に集められる場所、目立つ場所を選べなきゃ意味がないのだ! わかったかぁ!」



 ノリで許されるかと思ったらまたしても殴られてしまった。コレで三度目だ。こんなに殴られ続けたら顔がパンパンになってしまう。コレもPじゃないか。言ったら殴られるので、心の中に閉まっとこう……。

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