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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第六章 〜オルディーネ編~
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749.大きくなると、見えなくなるものがあるんですよ。





 春に行われる王家主催の舞踏会は、その年の社交の始まりを知らせる催し。

 だけど今年はいつもよりも、ひと月も早い開催となる。

 既に王都の秋祭りの際に発表されてはいた事ではあるけど、その理由は……非常に不本意ながら、私だそうです。


『前々から水の魔法石について、何時販売を開始するのかと圧力が強くてな。

 世界諸国王会議の関係もあって、発表を一年遅らせた事で不満を更に高まらせてしまったようだ。

 おまけにその諸国王会議の際に、どうやら水の魔法石の事が想定していた以上に多くの国に洩れていた様で、外交関係でもどうなっているのかと、連日の様に問い合わせの訪問があると、外交部や他国に伝手のある家から泣き付かれている状態だ。

 だが、水の魔法石の生産には危険もある以上、正式な場で正式に発表すべきだと言う意見も多く、僕もその通りだと考えている。

 苦肉の策だが、春の舞踏会で発表する事は変わらぬものの、その時期を早める事で誠意を見せる事にした訳だ』


 たったひと月だけど、準備をする人達やその関連部署は、きっと悲鳴を上げただろうね。

 春でひと月違えば、食材も花も手に入るものが変わってくるもの。

 因みに、陛下のこの理由は建前だそうです。

 一応は正当な理由ではあるけど、本来の時期だと私の出産予定日が近いため、影響を減らすため早めたみたい。

 逆に遅くすると言う選択肢は、それこそ国内外からの要望と言う名の圧力の関係で問題外との事。

 それで何でその事を知っているかと言うと、私のせいで開催日を早めたのだから、必ず出席しろという脅しなんですよね。

 別に私がいなくても、パパッと発表しちゃえば良いじゃないですか、と言ったら。


『何かあった時のために、責任の所在を公にしておくのは当然であろう』


 国策なのに地方領主でしかない私に責任を押し付けるためだ、と言うのだから酷い話だ。

 ついでに私が諸外国から注目を浴びている国の事業に関わっているから、馬鹿な手出しをするのは許さん、とPRするのも目的の一つらしい。

 その目的にしたって……。


『君は面倒くさがって馬鹿を相手にしないのは良いが、相手が一線を超えた途端にいきなり相手を潰しに掛かるからな。

 犠牲者を減らすためには必要な処置だ』


 と、これまた私が悪いみたいに言うんですよね。

 え~〜〜、一線を超えたらやられ返されるのは当然で、寧ろ何をやってもやり返されないと思う方にどうかしていると思う。

 だいたい人の家族を辱めようとしたり、私を脅すと言う下らない目的で私の家族の命を狙ったりするだなんて、正直、殺してくれと言っている様なものですよ。

 なのに殺さずに潰す程度にしているんですから、寧ろ寛大な処置だと思う。

 その後に聖杯(どく)を煽る事になったり、誰かに殺されたりするのは、本人の普段の行いによるものですから、それこそ私の知った事ではない。


「こう言う派手で可愛らしいドレスは、やはり私には似合わないと思うのだけど」


 ともあれ、様々な大人の諸事情で、舞踏会の開催がひと月早くなり、あっと言う間に当日を迎えた。

 豪華絢爛なドレスは好きではないけど、流石に今回は主役の一人なので、国に恥を掻かせない為もあり、不本意ながらも普通に華やかなドレス。

 流石の私も妊婦用のドレスの事なんて分からないから、今回は完全にお任せね。


主人(マスター)、魔絹織物に魔物の革や翅を、これ程までに使ったドレスなど、普通とは言いません」

「注目すべきはそこなの?」

「注目すべき所かと」


 そりゃあ真面に材料を揃えたら、この一着だけで凄い金額になるかもしれないけど、魔絹織物は領地の特産でなので、私が手に入れる分には格安だし、魔物の材料に至っては在庫が豊富にある。

 綺麗な皮や羽根は、何かに使えると思って取ってあるんですよね。

 特に蜻蛉系の魔物の翅は向こうが透けて見える程に薄く、その中を光が通ると虹色の様に輝く上、翅自身が持つ模様がこれまた自然の織り成す美しさがあるんですよね。

 なので私の背丈ほどもある翅が、物によってはたった一枚で金板貨が何枚も飛ぶ程の価値があるらしい。

 何せ布として使えるようにするには、特殊な処理に加えて魔法的な処理までが必要になるからね。


「普通はドレスの意匠の方を注目すべきでしょうが」


 材料なんて、極論を言えば金と権力さえあれば手に入る代物。

 でも芸術品にまで昇華した作品は、金と権力だけでは手に入らない。

 ただ、今回のドレスは華やかで可愛らしくはあるけど、特別に良い出来ではないのが残念な所。

 まぁ、妊婦用のドレス、しかも私の様な童顔子供体形ともなれば、専門の職人でも難しいから仕方ないか。

 まず手掛けた事なんてないだろうからね。


「今回は、主人(マスター)の御身体を守る事を、最優先にしたドレスですので、意匠に関しましては、少々妥協させて戴きました。

 ですが主人(マスター)、それでも主人(マスター)のお姿は誰よりも輝いております」


 それって装飾品や魔絹織物、それと翅による光の反射の影響だと思うわよ。

 でもプシュケの言う通り、ドレスの意匠に関しては今回は仕方がない。

 何せ防御力優先だもの。

 魔絹織物は通気性が良い上に防刃性が高く、魔虫の翅に至っては透ける程に薄い癖に同じく刃を通さない程に丈夫で、尚且つ弾性がある。

 肝心のお腹周りは、薄く鞣した魔物の革で覆っているため、余程の衝撃を受けない限りは大抵は跳ね返せると言う代物。

 その癖して、ちゃんと感触は伝わってくるのだから、魔物の素材が如何に優秀かを物語っているわ。


「色々と気を配ってくれて、ありがとう。

 でも普段と違う感じの服だから、気を付けないと。

 ただでさえお腹か大きくて足元が見えにくいのに、飾りで余計に見えにくいわ」

「私は普段から胸が邪魔で足元が見えないですか、そう言う物ではないのですか?」

「うん、私もそう言う物だと思っていたから」


 ぐぅ…嫁二人の何気ない疑問がキツイ。

 そっか……、二人にとって足元が見えないのが普通なんだ……。


「因みにプシュケは?」

「……み、見えなくは……ないです」


 こらっ、なんでそこで目を逸らすのっ!

 メアリーとアンネも、後ろを向かない。

 私が惨めになるでしょうがっ!


「ユゥーリィ様、私はちゃんと見えます。

 ユゥーリィ様と一緒です」

「そ、そうね、ミーナちゃん有難うね」


 十一歳の子に気を使われる私って……。

 いえ、今は足元が見えないから、一応は違うわよ。

 胸で見えないか、お腹で見えないかの差だけど。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

【 双子ちゃんメイドの、なぜなにコーナー】

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



メアリー「さて、読者が『またか』という顔をしていますが」

アンネ 「なぜなにコーナーのお時間です。……はぁ、残業代出してほしい」

メアリー「現物支給でも構わないので欲しい所ですが、今日はユゥーリィ様が胸部装甲と称しているお胸の話です」

アンネ 「現実を見たくないからって装甲呼ばわりはどうかと思う。鎧って硬いわよ。実際にはこんなに柔らかいのに」

メアリー「こらこら、だからって人の胸を揉まないの。それにユゥーリィ様が気にしている事は変わりないんだから」

アンネ 「気にしても仕方ないのにね、在っても邪魔なだけよ」

メアリー「貧すれば鈍すると言いますが、少々視野狭窄になっていても仕方在りませんよ。あと、誤解の無い様に言っておきますが、ユゥーリィ様は絶壁と言う訳ではありません、一応はBはあります。ええ、一応は」

アンネ 「念を押すと偽装疑惑が出るわね、ジュリエッタ様とエリシィー様が横に並ばれると尚更に(笑」

メアリー「……あの二人とは私達も横に並びたくないわね」

アンネ 「私は気にしないから、気にならないわよ、と言うか言うほど気になるほど差はないでしょうが、メアリーだっていぃ「言わないのぉぉぉっ!」もごもごもご」

メアリー「と、ともかく、GとかHとかIとかJが周囲にいれば、相対的に小さく思えるのは仕方がない事なのっ」

アンネ 「ちなみに先程から出ている大きさの値は、ユゥーリィ様が計画している平民向け服飾事業で使われている、大きさを表す基準値の一つです。

 貧乏人は服に胸の大きさを合わせろって事ね」

メアリー「価格を下げるためには規格を決めて、大量生産をする必要があると説明を受けたでしょうが」

アンネ 「知っていますよ、試作品を戴いていますからね。私がEでメアリーが一つ上」

メアリー「ば、ばらすなぁぁぁーーーーーっ!」

アンネ 「バラしていないわよ、一つ上と言っただけで」

メアリー「一緒でしょうがっ!」





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