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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第四章 〜新米領主編〜
496/1053

496.え〜〜、何で、責められないといけないんです? 意味が不明です。





 幾ら蒸留酒で酒精が強かったとはいえ、所詮は二杯です。

 しかも炭酸水と果汁で割ってますから、あのまま酔い潰れる事なく、私が膝の上に乗っていた王子の頭をそっと魔法で支えながらどかす。

 柔らかい足の代わりに枕を差し込んでも目覚める様子のないぐらい、深い眠りについた王子に毛布を掛けて、こっそり此方を覗いていた双子ちゃん女中(メイド)に後を任せて、自室に戻って朝までグッスリ。

 だというのに、朝から何やら騒ぐサリュード王子。


「お前には女としての恥じらいはないのかっ!」

「サリュード王子相手に、何を恥じらう必要があるんです?」


 王子は私のお父様かお母様か、と突っ込まなかっただけマシだと思うのに、何故か私のこの一言にサリュード王子は絶句。

 後ろによろけた後、地面に跪いて両手を床につく状態に、大袈裟なリアクションだなぁ〜、としばし眺めてしまう。

 その様子に、王妃様が何があったのか聞いてきたので、サリュード王子の名誉を守る意味もあるので詳細は割愛して、今回の騒動で、神経が昂って眠れなさそうでしたので、膝枕をしてあげただけ(・・)と。

 聡明な王妃様なら、大体これで事情は分かってくださるはず。

 夜中の出来事とはいえ、変な事はなかった事は、ウチの双子女中(メイド)達が興味深げに覗いていたので、大丈夫ですよぉと言ったところで、何故か深い溜め息を吐かれ。

 サリュード王子をどんな存在なのか、素直に答えて欲しいと聞かれたので、私も思う儘に素直な言葉で。


「困った弟みたいな存在」


 うん、何故か周りは同情の視線を送ったんですよね。サリュード王子に。

 しかも、それは無いわぁ〜と言わんばかりの非難の視線を私に。

 え〜〜、何で?

 また、多少のお説教を受けるくらいは覚悟して王子をお慰めしたのに、流石にそんな視線を送られるとは思いもしなかった。

 ふと見れば、何故かぴくぴくと痙攣をおこしているサリュード王子の姿に。


「サリュード王子、お腹でも痛いんですか?」


 ええ、心配して声を掛けましたよ。

 大袈裟なリアクションとばかり思っていたので、もしかしてソファーで寝たから、お腹を冷やして、お腹を壊したのかと心配します。

 だって、毛布を掛けたとはいえ、部屋にお送りせずに放置したのは私ですからね。

 だと言うのに。


「お前みたいなヘンテコな姉を、持った覚えはないわ〜〜〜〜っ!」


 そう叫ぶなり、屋敷の外に掛けて行っちゃいました。

 確かに私みたいな年下の女の子に弟扱いされたら、そう言いたくはなるかも。

 でもね、仕方ないじゃない。


「アドル、王子の靴をお持ちしてあげて」


 我が家は、前世の靴を脱いで屋敷に上がるスタイル。

 屋敷の中はスリッパか裸足なので、当然、掃き出し窓から飛び出した王子はスリッパのままな訳で、あんなスリッパで外を歩いたら、足が痛くなる訳ですから心配もします。

 少なくとも、こう言う心配をさせる内は、弟扱いされても仕方がないと思いません?


「分かってはいたけど、止めでしたわね」

「むしろ傷を抉ったかと」

「悪気のない本音って残酷よね」

「お兄様、お労しや。でも絶好の機会?」

「優しさという名の暴力よね」

「上げてから、地面に叩き落とすみたいな?」


 うん、何か後ろで言われている気がするけど、身に覚えがないので、私の事ではないと言う事で。

 その内に戻ってくるでしょから、今の内に朝食の準備をしてしまいましょう。

 上げてから落とすと言えば、また時間を作ってパンを作ろうかなぁ。

 ペッタンとパン生地を上げて落として、美味しいパンを作るには必要な作業なんですよね。


「ユゥーリィ、流石にその発想に行くのは酷いと思う」

「何故にっ!?」

「それと、後で話があるから」


 あれ? エリシィー、何か黒いの出ていない?

 私、何かエリシィーを怒らせる様な事をした?




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・




 はい、朝食前に、エリシィーにコッテリ絞られました。

 いくら弟扱いでも、成人男性を相手に膝枕はないと。

 子供相手はともかく、私の膝はエリシィーとジュリの物で、他の人は駄目と。

 いやぁ、ヤキモチを焼いてくれているのだと分かり、ついニヤけてしまったら、ますます怒られてしまった。


『いひゃい、いひゃい、いひゃい、耳を引っ張らないでぇ〜っ!』


 実力行使は酷いとは思うけど、エリシィー曰く、叱っているのにニヤける私が悪いと。

 ごもっとも。

 私もお説教している相手が、巫山戯ていたら怒りますからね。

 ただ私の場合、巫山戯ていた訳ではなく、エリシィーのヤキモチが嬉しくてニヤニヤしちゃっただけで。

 そう言ったら、今度は両頰肉を引っ張られてグリグリされちゃいました。

 まぁ自業自得だけど、嬉しくなる訳でして。

 いえ、そう言う趣味に目覚めたって訳ではないですからね。

 何処かの変態残念M王子じゃあるまいし、そう言う勘違いは止めて欲しい。


 因みに、その変態残念M王子ことサリュード王子は、視察ではなく休養。

 王子に対しては、魔物の繁殖槽に対する公開許可も出ていないので、基本的にはのんびりです。

 王妃様達も、陛下達が王城へと戻られた時点で視察と言う公務の名目は無くなっているので休養。

 FAXの魔導具による手紙では、二、三日中に方が付くらしいので、領民を巻き込んだ、この騒がしい日々も残り僅か。

 そう言う訳で、本日は果樹園の方に赴いちゃいました。

 桃や葡萄などの普通の果樹も育てていますけど、魔物の領域にしかないとされる果樹も此処では人工的に栽培に成功しているので、今日はもぎたてを楽しんでもらう趣向です。


「一つが大きいですわね」

「もっと小さい物かと思いました」

「でも良い香り♪」


 まず、その大きさに驚いているのだけど、無理はない。

 でもある意味納得なんですよね。

 果実ってのは、捕食者に食べて貰って種を運んでもらう訳です。

 そして、【死の大地】にいるような捕食者の中には、巨大生物もいまして。


「以前に、黒竜が此方に目も向けずに、一心不乱に美味しそうに食べていましたから、新鮮な果実の味はまた違いますよ」

「「「……、あはは…は…」」」


 何故か乾いた笑いをされる、王妃様と王太子妃様とフィニシア様。

 此方も反応に困ったところに、サリュード王子が……。


「お前な。そんな事を言われて、どう反応しろと?」

「魔物もまっしぐらになる程に美味しい果実と思いません?」

「言いたい事が分かるが、黒竜なんて名前を出された時点で、美味しいとか不味いとかの話なんぞ吹き飛ぶわっ」


 何故か呆れた様に言ってくるんですよね。

 そうかなぁ〜?

 前世でよく宣伝で使われるフレーズなんだけどなぁ。

 猫も犬もまっしぐらって。

 猫や犬の代わりに、竜になったって良いと思うんだけど。

 それはともかく、今は美味しい果実を楽しみましょう。

 魔物の領域産の果樹は、年に何回か旬があるとは言え、旬の期間は短いですし、時期によって酸味や甘味が違うので、今の時期の味は今しか食べられません。

 と言っても、今日の参加者は女性陣が多いので、それほど食べれる訳もなく。

 ゆっくりとお喋りをしながら、色々な果実を少しずつ楽しむ訳ですけどね。


「あら、あちらの方は何を植えてられるんですか?

 それに、少し変わった感じですわね」


 王妃様が変わったと仰っているのは、桶の中に何か短い棒が突き刺さっているだけに見えるため。

 おまけに木を切って拓けてはいても、上に網をしているため、少し薄暗く感じる場所だからでしょうね。


「彼方は魔樹を種からではなく、切った枝を地面に挿して育てる挿木と言う方法で増やしているためです」

「え? その様な事で増えるのですか?」

「ええ、果実系の物はそれで増やせる物がありますので、試験も兼ねて行っています。

 普通の果樹においても、種子から育てた物と比べて根の張りが弱いのが欠点ですが、一年で実が生る様になるため、種から育てた物が実を付ける様になるまでの繋ぎになります」


 適度な水分と栄養があれば、それなりに根を張る事ができるので、底に穴を開けた桶の中には、挿木に適した土にしてある。

 他にも接木のやり方もあるけど、まだ出来たばかりのこの地では、接ぐための苗木もあまりないので、挿木の方を主流にしている。

 あそこは、そのための場所で、ある程度育ったら、別の場所に植え替えをする予定。


「その隣で育てているのは、つい最近に挿した物と、昨年から育てているファルラ・ロサと呼ばれる野薔薇の一種を種から栽培している物です。

 両方ともある程度大きくなったら移植する予定です」

「あら、野薔薇とは随分と変わったものを植えられるのね」

「ふふ、でも、確か可愛らしい花ですから、シンフェリア様にはよくお似合いかもしれませんわね」

「白に、桃色に、今の時期に花が終わってしまっているのが、少し寂しい限りですわね」


 まぁ確かに可愛らしい花を咲かすし、大輪の薔薇よりも、ああ言う素朴な花の方が好きだけど、そんな可愛らしい花が、中身がオッサンの私に似合うかと言われたら、首を傾げたくなる。

 ただ、野に咲く花なので、生き汚いと言う意味では私に似合った花かもしれないけど、別の観賞用として育てている訳ではなく。


「お褒め戴くのは嬉しいのですが、実が薬になるため育てております」

「あぁ…、そうなのですか」

「そう言えばシンフェリア様は、お薬にも詳しかったですわね」

「あの様な白水晶張り、薬草園をお持ちでしたから、てっきりその関係は其方でとばかり」

「いえ、彼処で育てているのは、外では育てられない物が中心となっておりまして」


 当たり前と言えば当たり前なんだけど、白水晶張りの薬草園では温泉水を使った温室と、地下の冷たい水を利用した冷温室と別れていて、栽培しているのは此処の環境では育てられないもの。

 普通に外で育てられる物を、態々手間暇の掛かる温室では育てない。

 ただ、まぁそ言う思い込みはあるよね。

 ファルラ・ロサの樹木も、去年から増やしている物で、この木から採れる実は、港が開港したら役に立つ物だから、今の内から育てておきたい訳です。

 そんな訳で、何の薬かは今は内緒です。

 大切な領の収入の一つになる予定ですからね。






【豆知識】 =========================

 

◇ファルラ・ロサ

 魔物の領域に見掛ける事の多い野薔薇の一種。

 夏から秋に掛けて、可愛らしく色鮮やかな花を咲かせ実を付ける。

 実は可食可能ではあるものの、酸味が強く可食部分も少ないため、野鳥などの小動物が食べるぐらい。

 成長には魔素を含んだ土と水が必要ではあるものの微量で良いため、魔物の領域が繁殖地になっていると見られる。

 花が咲き終わった後に付ける実にはビタミンが大量に含まれ、更に種には病気などに対して抵抗力を高める効果があるため、古代において実はビタミンの欠乏による病気に、種は身体の弱った者の病気予防に使われていたが、現在ではその効能は失伝し伝わっておらず、一部の書物に栽培方法なども含めて記載されて残っているのみ。

 だがその書物も古代文字で書かれ、しかもメジャーではない言語のため、読める者がどれだけいる事か。






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