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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第四章 〜新米領主編〜
492/1052

492.リアル怪獣大決戦っ! せっかく作ったのに…。





「あぁぁ……、頑張って工事したのに」

「嬢ちゃんや、この状況を見て、まず放つ言葉がそれか?」


 コッフェルさんはそうは言うけど、陛下の無茶振り命令の後、ポーニャとギモルとラキアを王妃様達の護衛として屋敷に残して、ルチアとジュリ、そしてアドルとセレナを陛下達の護衛として、崖上の要塞に空間移動の魔法で移動してきた私の目に写った光景を見れば、深い溜息ぐらい吐きたくなる。

 だって、止水鉄板がグシャグシャですよ。

 魔法で地面深く打ち込んであるから、抜けてはいないだろうけど、その分ひん曲がってしまい、そこから海水が中に入り込み、もはや止水鉄板の用を成していないため、排水ポンプの魔導具を設置しておいたにも関わらず、少しも水位が下がっていない光景に、私の数日間の作業を返せ、と心の中で泣いても少しもおかしくはないです。


「コッフェルよ、彼奴()は?」

「おそらく海皇大蛇(シーサーペント)と、皇帝蛸(ダゴン)かと」

「……潜んでいて見えませんが、あと大王烏賊(クラーケン)の幼体も三匹ほどいます。

 たぶん、幼体を餌に狙って追いかけて来たところを、取り合いになったのかと」


 離れたところで、二匹の巨大な魔物の様子を伺うように小さく纏まっている三匹。

 想像だけど、大王烏賊(クラーケン)の幼体が必死に逃げてきて、これ幸いにと止水鉄板の内側に逃げ込んだのは良いけど、海皇大蛇(シーサーペント)と、皇帝蛸(ダゴン)の巨体の前に、止水鉄板など紙に等しい訳ですから、あっさりと止水鉄板を押し潰しながら乗り越えて三匹を追い込んだのだろう。

 ただ、何方が先だったかは知らないけど、大王烏賊(クラーケン)の幼体は袋の鼠、後は捕食するだけのところで海皇大蛇(シーサーペント)と、皇帝蛸(ダゴン)で取り合いの一大決戦。

 もうね怪獣大戦争の様相ですよ。

 なにせ幼体とは言えども、そこは大王烏賊(クラーケン)、胴体部分だけで二十メートル以上は軽くあるのに、その大王烏賊(クラーケン)の幼体が小さく思える程に他の二匹の魔物が大きい。

 海皇大蛇(シーサーペント)なんて、海に潜っていて全長は分からないけど、水面に映る影や水の上に出ている頭部や尻尾の部分からして、おそらく三、四百メートルクラス。

 皇帝蛸(ダゴン)は、そんな奴とドックファイト出来るのだから、相対的に百メートルは軽く超えている思う。

 これ、カメラに写して前世で見せたら、受けるかな?

 でも、迫力を求めた映像じゃないから、逆にチープに映るかも。

 前世の映像技術だと、虚像は実像を上回る事は、ままあるからね。


「ルチア、ジュリ、陛下達を安全な地下要塞部に御案内して、たえず結界でお守りする事。

 危ないと判断した時は、例の物を躊躇なく使いなさい」


 でも、幾ら滅多にお目にかかれない光景だと言っても、何時迄も放っておいては、被害が広がるばかり。

 今なら、止水鉄板も五分の一ぐらいの被害で済む。

 地下要塞に移動する陛下達を他所目に、ジル様が心配げに聞いてくるけど、それも仕方がない。


「これを見ても、彼処へ行くのかね?」

「ええ、幸いな事に、何時かの様に深い海と言う訳でもないですから、なんとかなります。

 あの時と違って、守るべき船も乗客ありませんから、駄目そうなら逃げてきますが」


 相手は幼体が混ざってはいるとは言え、災害級の魔物が五匹もいる。

 魔物の図鑑によれば、皇帝蛸(ダゴン)は以前に必死にに討伐した大王烏賊(クラーケン)とほぼ同格の魔物だけど、体長的には此方の方が大物。

 海皇大蛇(シーサーペント)にしたって、その巨体さから見たら、同格かそれ以上の脅威があるのは誰の目にもあきらか。

 間違いなく、船旅の中で同じように彼等に出会えば、絶望的な状況だと言える。

 でも、ジル様に答えたように私は、あの時ほど悲観的ではない。

 山の様な巨大生物の存在に恐怖を感じてはいても、何時かの船旅の時とは状況が違うからね。

 小さな小舟以外の足場もなく、海のど真ん中で高い波に四方を囲まれ、ジュリを含む多くの命を背負っていた時とは比べ物にならない。

 あの時は、自然そのものが最大の敵だったと言えるもの。


「帰って来たら、今度は酒を酌み交わそう」


 ジル様、変なフラグを建てないでーーーーっ!

 それっ、死亡フラグだからっ!

 でもお酒は弱いけど好きなので、一杯だけはと心の中で付け足しながら、私は地面を蹴り一気に崖に向かう。

 ブロック魔法で滑り台を作り、二百メートルもある高低差を一気に滑り落ちてゆく先は、魔物がいる方向ではなく、海面から突き出た止水鉄板のある場所。


「本当、不幸中の幸いね」


 波の力で前後に揺れる止水鉄板の上に立って、そう小さく呟く。

 【死の大地】の生息する厄災級を見た後では、以前ほど脅威を感じないとは言え、災害級五匹を同時に相手にるすのは、間違いなく脅威と言える。

 でも、此処は水深はそれほど深くない浅い海。

 おまけに、彼等は止水鉄板に囲まれた中。

 形状変化の魔法が通りやすいように、魔法銀(ミスリル)が混ぜてある止水鉄板。

 鋼鉄と言う不純物が混ざってはいるとは言え、魔法銀(ミスリル)は魔力回路の延長として使えるこの世界独特の物質。

 そして、止水鉄板は一部哀れな状態になっているとは言え、海底の部分では繋がったまま。


「速さが勝負かな」


 敢えて言葉にする事でイメージをより明確にしながら、足元を通して止水鉄板に魔力を通してゆく。

 ミスリルを含んだ止水鉄板は、今や弱いながらも私の力場(フィールド)内で身体の延長のような物。

 魔力制御で方向性を持たせ、止水鉄板を魔法の発動体にし、その内側の海へと想像のままに魔法を創造する。

 脳裏に浮かべるのは海水の基本分子構造、そして原子と活発に動く電子。

 その電子の動きが止まる事を強く想像しながら、魔力を一層強めてゆく。

 この世界にある風と水の複合属性による氷の魔法ではない。

 前世における物質の構造知識を使った、私、オリジナルの温度魔法と呼んでいるもの。


 でも、その本質は電子や分子を直接操れる怖い魔法。

 強力が故に使い方と制御を誤れば、世界を滅ぼす危険な魔法へと変じてしまうけど、私は制御を誤る事なく、止水鉄板を凍らせずに海水のみを凍らせてゆく。

 軍港を覆うように止水鉄板で作られた、巨大な輪。

 それが徐々に外側から凍らされてゆく。

 何時かと違い、水深が浅く、それほど波が高くない内海だからこそ可能な技。


 キュイ、キュィッ!


 凍った海が波で擦られ、鳴き声をあげている様に聞こえるけど、それも次第に聞こえなくなる。

 波があろうとも、次第に分厚くなってゆく氷が海底まで達してしまえば、波の影響を受けなくなり、外海からの波をも堰き止める壁となってしまう。

 波と言う動きがなければ、更に海が凍る速度は増してゆく様子に、魔物達は漸く此方の存在に気が付いたのだろう。


「「ぴぎぃーーーーーっ!!」


 音に鳴らない二匹同時に放たれた【咆 哮】に、空気が大きく震える。

 格下の相手を威圧し怯ませ叩き伏せる、上位の魔物が持つ固有スキル。

 真面に受ければ、私と言えども行動不能になる怖い技。

 でも【咆 哮】に耐性のある【威 圧】を纏い、更には結界を張れば、間近で聞いても脅威にはならない。

 それに、幾ら【咆 哮】で威嚇しようとも全ては手遅れ、この止水鉄板の内側に入っている時点で、もう勝負はついていたと言って良い。

 止水鉄板と言う、捕獲カゴの中にね。

 そして、幾ら巨体に見合った力を持とうとも、海そのものを凍らされては、その巨大な身体を氷に封じられてしまえば、力を振るう事すら出来なくなる。


「絶対零度に近い冷気で凍らされた海では、流石に動けないようね」


 生きて踠いている時点で生物としては驚きではあるけど、そこは流石は魔物ね。

 だけど、ここまで冷気が周囲に満ちてしまえば、例え動いて氷が割れようとも、その瞬間にまた氷同士が再凍結を繰り返し、二匹の巨大生物の動きを押し留めている。

 おそらく放っておけば、少しずつ拘束を打ち破られる事になるんだろうけど、それを黙って見守る気はない。

 氷結した海に足を取られない様に、ブロック魔法で足元を築きながら、一気に皇帝蛸(ダゴン)に詰め寄り、何時かの大王烏賊(クラーケン)の時の様に零距離で攻撃を放つ。

 それが強力な結界で体表を覆う、高位の魔物に対する基本的な戦法。

 魔力の強さでは魔物には敵わないけど、魔力の制御力においては極一部を抜いて災害級よりも人間の方が上。

 魔力の一点集中で魔力の固有波長による浸食により、足下にほんの十センチほどの結界に綻びを生みだしてやる。

 その瞬間を待っていたかのように、子供の頃から使っている愛用の弓矢から放ったのは、氷雪クラゲの魔石を使った強化型の氷結の魔弾と群青半獅半鷲(ブルー・グリフォン)の爪を使った魔導矢。

 共に、同じ効果の魔法を三重に重ね掛けしたそれは、皇帝蛸(ダゴン)の目の間に当たった氷結の魔弾によって、体表の魔力の流れを阻害し、そこへ超振動の矢が深く突き刺さって、その姿を魔物の胎内奥深くへと消してゆく。

 更に、すかさず穿かれた穴に空いている左手を当て、放ったのはこの世界では伝説と言われた魔法。


 雷槍(ライトニングボルト)


 雷の原理や電気を知らないこの世界の人達では、再現できない自然現象でも、前世の知識を持つ私は扱う事ができる。

 ただ、世間に知られれば騒動になるし、人間向けの弱い魔法ならいざ知らず、魔物にも効く程の強力な攻撃魔法として使うには、一歩制御を間違えれば自爆すると言う扱いが難しい事から使ってこなかったけど、今の私ならそれなりに(・・・・・)使えれるようになった。

 魔力制御で雷に指向性を持たせ、穴から魔物の脳だけを焼いてやれば見られる事はない私の奥の手の一つ、……なんだけど。


治癒魔法(ヒール)


 この出力だと、まだまだ制御が甘いか。

 魔法による雷ではなく、魔法で生み出された物理現象によって発生した雷がプラズマ化し、そこから更に発生した雷が僅かに掌に触れ、感電はしなかったものの高熱により炭化した右手に走る激痛に、慌てて回復魔法を掛けて直ぐに移動を開始する。

 今は苦痛に泣き喚いていたり、制御の甘さを反省している暇はない。

 まだ五匹の内の一匹を倒しただけ。

 目の前で先程まで獲物の取り合いをしていた皇帝蛸(ダゴン)を倒した私に、海皇大蛇(シーサーペント)極大水流切断魔法(ウォーターカッター)を放ち、海底まで凍り付いた分厚い氷すら切断する。

 その威力に、ゾクッっと背中が冷たくなるの感じる。


 でも、それだけの事だとも言える。

 確かに威力は脅威だけど、溜めが長い上にブレスとして放つそれは、簡単にタイミングと軌道を読みやすい攻撃。

 ブロック魔法による足場と、操作型の身体強化によって三次元的な動きが出来る私にとって、躱す事はさほど難しいものではないし、そもそも相手は氷漬けで動きを封じられているのだから、必要以上に恐れる必要はない。

 なら、あとは皇帝蛸(ダゴン)と同様に、分厚く硬い氷によって動く事が出来ずに必死に踠いている海皇大蛇(シーサーペント)身体に取りついて仕留めるだけの事。

 流石に首の真後ろに取りつかれたら、どうしようもないみたい。

 皇帝蛸(ダゴン)の時と同様にして、脳をプラズマと化した雷の放つ高熱と高電圧で焼かれ、骸となった海皇大蛇(シーサーペント)を見下ろしながら、気を落ち着けるために、軽く息を吐き出す。


「ふぅ〜…、あと三匹」


 先に皇帝蛸(ダゴン)を仕留めたのは、氷の中の八本の手足を警戒しての事。

 もし、拘束している氷をぶち破って、下から攻撃して来たら厄介だからね。

 海皇大蛇(シーサーペント)の巨体と極大水流切断魔法(ウィーターカッター)は確かに脅威だけど、皇帝蛸(ダゴン)の八本の手足から放たれる三次元的な攻撃に比べたら単純な動きと言えるし、身体の大部分が氷の中では、巻き付き攻撃もできない上、弱点の頭部も分かりやすいと言う理由。


 そして、大王烏賊(クラーケン)の幼体はまだ子供で魔力が弱いのか、完全に氷漬け状態。

 それでもしっかりと生きている辺りは凄いけど、群青半獅半鷲(ブルー・グリフォン)の魔導矢をそのまま打ち込んで、その穴に爆裂火球魔法(エクスプロード)を放って終り。

 爆裂火球魔法(エクスプロード)を使ったのは、二度も雷槍(ライトニングボルト)の魔法の制御に失敗して手を炭化させてしまったので、流石にあの出力はまだ早いと懲りました。

 倒した魔物五匹を魔法で氷から掘り起こしてから、収納の魔法の中に収納したら今回の狩りは終了。

 ひしゃげた止水鉄板を直す事を思うと頭が痛くなるけど、今は陛下達の安全確認と報告が先かな。

 結界で守る様に言っておいたから、【咆 哮】を喰らっていると言う事はないと思うけど、陛下達の物見遊山気分は、本気で勘弁してほしい。






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[一言] 炭化って嫁に怒られそう
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