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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第四章 〜新米領主編〜
484/1056

484.人の営みには欠かせないものです。





「そろそろですか?」

「はい、時と共に満ちてきました」

「思ったよりも早く、来てしまいましたね」

「英断の時かと」


 ダルスの言葉に、私は覚悟を決めて力強く頷いてみせる。

 この世にどんなに栄光の歴史があろうとも、必ず闇は存在する。

 世界で一番綺麗な街であろうとも、目を逸らしたくなる汚いモノは存在する。

 どの様な美辞麗句を並べようとも、人は綺麗ではいられないもの。


 と言っても、それほど大袈裟なモノではなく、美味しい物を食べ、そして水や酒を飲めば、当然出るモノは出る訳です。

 一人、二人の量ならともかく、人が多ければ生み出される量も多いため、自然に返すにしろ適切な処理を行うべき。

 出来て二年ばかしではあるけど、集落の幾つかのブロックに分けて埋めてある汚物集積用の巨大な瓶が、そろそろ満たされて来ているのだとか。

 きちんとした浄化施設を作ればいいのだけど、最初の移住そのものが急遽なモノだったし、汚いモノだけに目を逸らして後回しにして来たツケとも言う。


「天候次第ですが、七日後に現行の設備を破棄。

 撤去後に、新設備への接続工事を行います。

 工事中は仮設の物を使う様に、それと手の空いている者は作業を手伝う様に、全住民に通達」


 いえ、一応は準備はしては来たんですよ。

 実験を繰り返して、実用に耐えれると分かってはいたけど、……排泄物の溜まった瓶を掘り起こす勇気がね。

 間違っても食べ物も入っている収納の魔法の中に入れたくはないし、かと言って時空の穴に捨てるのも気が咎めるんですよ。

 ほらっ。誰も住んでいない時空だからって不法投棄みたいでさ。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・




 そうして七日後、問題の大甕の近くから、浄化施設まで地面を掘って配管。

 幾つもの広場の大甕から一つの管に繋ぎゆっくりと坂を下りながら、数キロ離れた施設まで繋ぐ計画。

 施設側から集落の近くまではあらかじめ工事はしてあったので、そちら側はすぐに作業は終了。

 新たに掘った箇所を埋め戻すのは、領民に丸投げ。

 くれぐれも管を割らない様に。

 最も魔法を水分を抜きながら圧縮して作った多層の超圧縮コンクリート製なので、そう簡単に割れないし、劣化もしにくいように魔法で処理してある。


 浄化施設は二つあって、定期的に切り替える様になっていて、管と同じ超圧縮コンクリート製のプールで、中を下の方で壁で区切ってあり、幾つものブロックになっている。

 これを上から僅かな水を流しながら、表層的な匂いや汚れを除去して川に流す予定。

 前世の知識を持っているとは言っても、私も専門家ではなかったので、そこはこの世界ならではのやり方。

 まずは、砂漠クラゲの亜種である山クラゲ、……の亜種である森クラゲ。

 この世界のクラゲの生態はどうなっているのかと思うけど、これでもれっきとした【土】属性の魔物です。

 そして、森の掃除屋とも言える存在で、腐葉土から何から、栄養素のある物はなんでも食べます。

 当然、動物や虫の糞も。と言うか彼等に取っては葉っぱよりも御馳走らしい。

 集り方が違うからね。

 その森クラゲの中でも、森の湿地帯と言うか沼に住む事を好む奴がいて。


 沼クラゲ。


 私が勝手に名前を付けているだけだけど、此奴は汚れた土と水を餌とし、同時に浄化する変異種中の変異種みたい。

 要は、このプールは魔物の繁殖槽だったりする訳です。

 餌は、人が生み出した排泄物。

 沼クラゲから取れるのは、【水】と【土】の両方の属性を持つ貴重な魔石。

 だけど、これで作った水は、問題ないと分かってはいても、気分的には飲みたくはないわね。

 知らなければ関係ない話ではあるけど。

 それはともかくとして、今までこの変異種を一定数増やすのに時間が掛かって来たけど、繁殖のために必要な最低限のボーダーラインは余裕で越したから、後はプールに放っておけば勝手に増えてゆくはず。

 まぁ、ここまでは良いんですよね、ここまでは。


「総員、各家の戸締りを確認。

 その上で、マスクと頭巾の固定と手袋の着用を互いに確認するように」


 最悪の事態を想定して、悪臭と雑菌への対策。

 大甕は陶器製なので、割れていたりヒビが入っていないとは限らないからね。

 魔法で地中から持ち上げたは良いけど、周りに四散するなんて事態になったら最悪。

 間違い無く、悪臭が漂い、今夜の夕食は喉を通らない。


「撤去後の接続工事は任せます。

 汚れ仕事を押し付けて申し訳ないですが、今後の生活のためと我慢してください」


 各家から水を大量に流してもらったけど、どうしても切断した管には汚物が多少残っているし、こびり付いた匂いはどうしようもない。

 今日、作業に参加してくださっている皆んなが着ている上着などは、後で私が洗浄の魔法で徹底洗浄する予定。


 ボコッ。


 結界で包んだ大甕を、地中から周りの土ごと浮かび上がらせる。

 同時に、大甕上部にある菅の切断部から、匂いが周りに漂いだし、皆が不快な顔をするけど、こればかりは仕方がない。

 大甕本体は結界に包んでいるから、それに比べたら大甕との接続部に残った汚物の量は微量とは言え、頑張って処理をしてくださいとだけ。

 量が微量だけに、土に混ぜても問題はないだろうから、そちらは無視する方針。

 肝心なのは大甕の方で、流石に此れを収納の魔法の中に入れたくないので、ひっくり返さない様に移動。

 ひっくり返した時の惨事など、考えたくもない。


 持っていくのは浄化施設では無く、集落の離れ。

 大甕の中の底の方はヘドロ化しているだろうから、流石にこれを沼クラゲの餌にするには問題があるだろうし、一度に大量に同じ所に汚物を廃棄するのは拙い。

 沼クラゲもこの世界の生態系である以上、自然に近い環境にしてあげないといけないし、なにより流石に可哀想だもの。

 では、これはどうするかと言うと。


「まずは魔法で水分のみを還元」


 これをしっかりしないとこの後が大変な事になる。

 後は一気に魔法で結界内の温度を上昇。

 熱殺菌どころか、溶解させます。

 細菌たっぷりの臭い物は、徹底して焼却処分。

 もし、ここで水分がある程度残っていたら、水蒸気爆発で凄い事になってますからね。

 汚物が爆発四散ですよ。

 中身がオジサンでも、一応は貴族令嬢の私を含めて、周りの人も糞尿に塗れる事になるんです。

 悪臭騒動どころではなく、被害甚大の大事件です。

 そんなのは真平御免なので、否が応でも気合が入ります。

 大甕ごとドロドロに溶けたら、撹拌しながら冷却。

 冷えて固まったら破砕作業。

 結界内で風切断魔法を暴れさせミキサー状態、砂になるまで砕いたら、結界を解いて地面に落ろす。

 その砂を、小さなハンドスコップで取って匂いを嗅いでみるけど。


「うん、匂いは完全になくなっているわね」


 その姿に、周りが引き攣った顔でドン引きしている様な気がするけど、私だってやりたくてやっている訳じゃないんですよ。

 もう大丈夫だとは分かってはいても、元が汚物ですからね。

 でも責任者として、きちんと処理が出来ているか確認をしているだけです。

 毎回、これをすれば良いと言う意見もあるかもしれないけど、これは私の豊富な魔力許容量と魔力容量があるから出来る事。

 ルチアとポーニャとジュリが力を合わせれば出来るだろうけど、どちらにしろ個人の能力に頼り切るのは、何かあった時に手が打ち用がなくなってしまう。

 人の営みに関するものに関しては、誰にでも管理できるシステムの構築が理想。

 浄化施設は、沼クラゲを使った繁殖槽ではあるけど、魔導回路を用いた魔道具を利用した曝気や、不活性槽を設けてあるので、沼クラゲでなくても使える構造になっている。

 何方も数年に一度は沼クラゲを移動させ、水を完全に抜き、乾燥させて土と化した堆積物を除去しないといけないけどね。

 もちろん、その間は予備の浄化槽を使って、数年ごとに交代で使える設計。


「元が元だけに土としては栄養価が高いはずだから、様子を見ながら畑の土と混ぜてみて」


 元が排泄物から出来た土はリンと窒素を多く含んでおり、作物の生育に良いはず。

 そのあたりは、沼クラゲの排泄物でも同じ。

 まさに森や沼の掃除屋で、彼等が住む沼の水は何処も澄んでいるからね。


「さぁ、残りもちゃっちゃとやっちゃうわよ」


 お手洗い難民なんて言葉、元難民からしたら嫌だからね。

 ……其処等でするのは慣れているって、野郎はそれで良くても女は困るのっ!

 まったくっ! もうっ!





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